artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
五十嵐太郎×津田大介×東浩紀「慰霊から建築を考える──宗教・忘却・オリンピック」
会期:2015/10/28
ゲンロンカフェ[東京都]
ヴェネチア・ビエンナーレ建築展2016の日本館のコンペにおいて、元寇、安政の大地震、沖縄戦、東日本大震災など、日本の歴史における死者をテーマにした企画案「怨霊の国を可視化する」を東が提示したことを軸に討議が行なわれた。終了後のトークも含め、彼が抱いている日本文化論にかかわる慰霊や屍体のテーマが具体的にわかって興味深い。今後、紙媒体でまとまったものが出るらしいが、コンペで選ばれなかった展示企画もどこか他の場所で実現したらよいのではないかと思う。
2015/10/27(火)(五十嵐太郎)
BankARTスクール2015年度9月-10月期「横浜建築家列伝vol.2」五十嵐太郎+磯達雄(ゲスト:小泉雅生)
会期:2015/10/26
BankART Studio NYK[神奈川県]
小泉雅生を招き、横浜の活動と作品に限定して、レクチャーが行なわれた。2005年の北仲ブリック&ホワイトの始動を契機に拠点を横浜に移し、それ以来、横浜エリアで住宅、公共施設、展示などを展開する。コンペで勝った象の鼻パークは複雑な与件を解いたプロジェクトだが、特に思い入れがあるという。現在は寿町で将来の日本における公共性を考える契機となるような計画を進めている。
2015/10/26(月)(五十嵐太郎)
ここに棲む──地域社会へのまなざし
会期:2015/10/09~2016/01/12
アーツ前橋[群馬県]
アーツ前橋の「ここに棲む」展へ。地域をみつめるというテーマで、建築家とアーティストが混じった構成だが、自作を並べるのではなく、その態度に焦点を当てており、意外と、あまり見たことがないやり方だった。建築家のプロジェクトを列挙すると、アーツ前橋を設計した水谷俊博のスタディに始まり、藤野高志の模型キメラ、EUREKAのフィールドワーク、藤本壮介による森/建築モデルが続く。そして後半は、乾久美子による空間や家具の使われ方の観察、アトリエ・ワンと福祉のコラボレーション、ツバメアーキテクツが提唱する新しい住まいモデルである。「3.11以後の建築」展と同様、地域に寄りそう建築の新しい動向をうかがえる。また展覧会に併せて『ぐんま建築ガイド』の書籍も制作された。このような美術館を核に地元の建築を見直す動きが、日本各地で起きるとよいと思う。
写真:左上=藤野高志、左下=藤本壮介、右上=展示会場、右中=屋外企画、右下=ツバメアーキテクツ
2015/10/26(月)(五十嵐太郎)
カンパニー マリー・シュイナール「春の祭典」「アンリ・ミショーのムーヴマン」
会期:2015/10/24~2015/10/25
KAAT神奈川芸術劇場[神奈川県]
「春の祭典」は、ニジンスキーにさかのぼり、その多重化のようなエネルギッシュな舞台だった。それにしても、これはさまざまなカンパニーがしばしば使うように、ダンサーに愛される曲だ。後半の「アンリ・ミショーのムーヴマン」は、スクリーンに次々と投影される原初的な人のようなイメージを、瞬間的に身体で三次元化しながら表現する。息もつかせないスリリングな展開だった。
2015/10/25(日)(五十嵐太郎)
黄金町バザール2015──まちとともにあるアート
会期:2015/10/01~2015/11/03
京急線「日ノ出町駅」から「黄金町駅」間の高架下スタジオ、周辺のスタジオ、既存の店舗、屋外、他[神奈川県]
黄金町バザール2015へ。アジア各国からの作家を招待し、街の随所に作品を展示する。新機軸を狙うとか、派手な規模ではないが、いかに持続させるかを大事にしている展開だろう。アートだけではなく、川嶋貫介による家の中の家、アイボリィアーキテクチュアによる縦長の吹抜け、中村建築のバスタブ仕上げのインテリアなど、建築家のリノベーション的な介入も設けられているので楽しめる。
写真:左上=黄金町バザール、左下=川嶋貫介、右上=アイボリィアーキテクチャ、右下=中村建築
2015/10/25(日)(五十嵐太郎)