artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

近代童話劇シリーズvol.1 Noism1「箱入り娘」

会期:2015/06/22~2015/06/28

KATT神奈川芸術劇場[神奈川県]

バルトークのバレエ音楽「かかし王子」を現代的な題材に変え、ネットの時代やひきこもりなどのテーマを交錯させている。ダンスだが、演劇的な内容であり、着ぐるみも一緒に踊り、原始的な「ASU」とはかなり違う雰囲気の作品だった。特に映像のライブ中継、入れ子、隠し部屋、虚実などの空間効果が興味深い。ただ、事前に原作のあらすじを読んでから鑑賞しておけばよかった。

2015/06/27(土)(五十嵐太郎)

大阪国際平和センター(ピースおおさか)リニューアル「大阪空襲を語り継ぐ平和ミュージアム」

大阪国際平和センター(ピースおおさか)[大阪府]

ピースおおさかを訪れた。以前は建築が目的で来たので、リニューアルされて、加害展示が消えた実感はあまり持てないのだが、いまはテーマを大阪空襲に絞り、垢抜けた展示になっている。が、はたしてアート的なインスタレーションでいいのか? それよりも気になったのは、なぜ戦争が起き、空襲になるまでの事態を招いたかの説明がほぼない。まるで自然災害のように、悲惨な目にあいました。これでは博物館なのに、『永遠の0』みたいな構えである。

2015/06/25(木)(五十嵐太郎)

「中村順平と建築芸術教育」展

会期:2015/06/03~2015/08/03

大阪歴史博物館 8階特集展示室[大阪府]

大阪歴史博物館にて、学芸員の酒井一光が企画した「中村順平と建築芸術教育」展を見る。同館は資料を譲り受けたことから、過去にも中村展を開催していたが、ボザール留学中の課題図面、弟子による日本建築の図面、帰国後教鞭を執った横浜高等工業学校(現・横浜国立大学理工学部建築都市・環境系学科)の学校祭に関する図面など、未見のものもいくつか紹介されていた。師匠、弟子ともに、時流とは少し違うデザインの傾向がうかがえる。それにしても、1930年代の学生の図面が美しいこと! 逆にCGでは、つくりにくいような精度である。いまの横浜国大の人は、この展示に来るのだろうか?

2015/06/25(木)(五十嵐太郎)

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マッドマックス──怒りのデス・ロード

『マッドマックス』の新作を見る。いやはや、ほとんどノンストップで、最初からすべて見所の、ただ行って帰るだけの、これ以上なくシンプルな物語ながら、各キャラの背景も想像させて、呆れるほどにすごい。3Dで見たが、その必要はないだろう。脳内で完全に3D化される。監督が老いてますます若返ったような映画だ。この作品は間違いなく、映画というメディアに固有な面白さを抱えており、近年のCGを過剰に使う流行が馬鹿らしくなる。

2015/06/24(水)(五十嵐太郎)

HIROSHI HARA: WALLPAPERS「建築家・原広司による、2500年間の空想的思考をたどる写経」

会期:2015/06/13~2015/07/26

梅田スカイビルタワーイースト5F特設会場[大阪府]

どうしても千葉の湖畔美術館での展覧会は都合がつかず、ようやく大阪は梅田スカイビルの巡回展にて、原広司「WALLPAPERS」を見ることができた。大きな白いキューブ群を会場に並べて、それらの表面に作品写真のほか、彼が重視するテキストの写経ドローイングを貼る。鴨長明、ポアンカレ、荘子、『千夜一夜物語』など、膨大な量の原文を自ら書き写す、驚くべき企画だ。

2015/06/24(水)(五十嵐太郎)