artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
大野裕之『チャップリンとヒトラー──メディアとイメージの世界大戦』
大野裕之の『チャップリンとヒトラー』を読んでいるが、二人は4日違いで生まれた。世界を恐怖に巻き込むか、笑いを届けるか。二人のメディア戦は激しく、ナチスはチャップリンがユダヤ人だとデマを流し、ちょび髭の物真似風刺を禁じ、映画『独裁者』に圧力をかけ続けた。これはいまの日本と重なる話だと思ったら、ちょうど東京都現代美術館において政治的な問題を扱う会田誠の作品介入をめぐる事件が起きた。
2015/07/25(土)(五十嵐太郎)
読売日本交響楽団 第81回みなとみらいホリデー名曲シリーズ
横浜みなとみらいホール[神奈川県]
ブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」は二楽器の独奏がある面白い曲だが、ヴァイオリンはあまり迫力なかった。先月の「シェラザード」、あるいはベタな楽曲が多かったものの、フィリアホールで聴いた同楽団の日下紗矢子の演奏が印象的だっただけに、気になる。もうひとつが、ホルストの組曲「惑星」作品32。ど派手に始まり、惑星ごとに雰囲気が変わっていくカラフルな曲だが、初めて生の大音響で聴く。いまや「ジュピター」はヒット曲になったが、筆者にとって「惑星」はむしろレインボーの「DOWN TO EARTH」で「火星」と出会った曲である。
2015/07/25(土)(五十嵐太郎)
「アートと都市を巡る横浜と台北」展
会期:2015/07/24~2015/09/13
BankART Studio NYK[神奈川県]
BankART1929で打ち合せの後、「アートと都市を巡る横浜と台北」展を見る。同施設の台湾との交流レジデンス・プログラムの集大成であり、日本と台湾の作家が参加している。2003年のキリンアートアワードで選んだ東野哲史の毎日ビールを飲む記録、アーツチャレンジで選んだ伊佐治雄悟も幾何学的な作品を出している。
写真:上=伊佐治雄悟の作品、下=東野哲史の作品
2015/07/25(土)(五十嵐太郎)
国際交流基金巡回展「3.11──東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」展
2012年3月から3年間、世界各地を巡回した「3.11──東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」展のセットの一部が、東北大学に到着した。報告書によれば、全部で20カ国、37都市で展覧会を開催しているが、模型やパネルなど、思っていたよりも傷みが少ない。なお、片平の仮設校舎で最初の展示がスタートし、青葉山の新校舎に戻ってきたわけで感慨深い。しかも、東北大学の復興プロセスも展示に組み込まれている。
2015/07/24(金)(五十嵐太郎)
2015年第56回BCS賞
審査に関わった第56回BCS賞の結果が発表された。この建築賞は、設計以外にも、施工や事業者、発注主の企画、運営、管理を総合的に評価することが大きな特長である。ちょうど今年は新国立競技場の問題が起き、その意義が大きく注目された年と言える。表面的なデザインだけではなく、そもそも仕事の枠組を決めるよい施主とはどうあるべきか、また建築家と事業者の創造的な関係も問われているからだ。
2015/07/23(木)(五十嵐太郎)