artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
TIMESCAPE展
会期:2015/06/28~2015/07/25
プリズミックギャラリー[東京都]
TIMESCAPE展のトークイベントに顔を出す。昨年のU-35で知り合った4組の若手建築家が企画した展覧会である。想像していた以上に、展覧会のタイトルに引きつけながら、作品が選ばれていた。高栄智史は、経年変化する模型や森林の間伐によるボロノイ建築。伊藤友紀は、赤レンガの記憶を継承した家やライフログ的な空間。岩田知洋+山上弘は、春日井の住宅地に600平方メートルの家で変わらない風景をつくる試みと湖の休憩所。植村遙は、スリナムのアルツハイマー病院プロジェクトやオランダの人工島を自然に還す計画で、人々の記憶を残す提案である。ちなみに、若手の建築家を紹介してきたプリズミックギャラリーも、今年で10年を迎える。
2015/07/11(土)(五十嵐太郎)
勅使川原三郎連続公演「ハリー」
会期:2015/07/10~2015/07/11
東京両国シアターX[東京都]
両国シアターXにて、勅使川原三郎演出/佐東利穂子の「ハリー」を見る。スタニスワフ・レムの小説『ソラリス』を題材とし、過去に自殺した妻のコピーが出現するものの、現実への失望から、亡霊であるがゆえに、幾度も自殺を試みるが死ぬことができない。絶望の再生を驚異的な身体能力で表現する。舞台にモノは何もなく、闇と照明だけで空間をつくる演出も印象的だった。最後の音声によるモノローグが、やはりクローン人間である綾波レイをほうふつさせる。
2015/07/11(土)(五十嵐太郎)
大林宣彦『この空の花 長岡花火物語』
3年前に劇場で見て以来、DVDで大林宣彦監督の映画『この空の花』を再度鑑賞する。やはり何にも似ていない、圧倒的にユニークな作品だ。結局、あれから4年が過ぎたが、これを超える3.11映画は出てないのではないか。長岡の花火が時空を超えて、さまざまな歴史と記憶にめくるめく接続する。そして日本の状況が大きく変わり、幾度も繰り返される「まだ戦争には間に合う」の言葉は、むしろ最初の上映時より現在のほうが切実になった。
2015/07/05(日)(五十嵐太郎)
戦後日本住宅伝説──挑発する家・内省する家
会期:2015/06/14~2015/07/20
八王子市夢美術館[東京都]
八王子市夢美術館で「戦後日本住宅伝説」展のギャラリートークを行なう。埼玉、広島、松本と巡回してきた展覧会も、これで最終の会場となる。四カ所を比較すると、同じ展示内容でも、美術館が異なると、だいぶ違って見えるのが興味深い。八王子は、学芸員がこの手法を提案し、以前坂本一成展でも試みただけあって、空間の没入感を与える大きな建築写真のタピストリーが最も効果的である。またほかに比べると、会場の面積が小さいため、各プロジェクトが独立したエリアを確保するのが難しいために、別の住宅の模型が近接し、かえって異なる住宅のスケールを比較しやすい。例えば、《原広司自邸》と《反住器》の模型が背中合わせである。
2015/07/04(土)(五十嵐太郎)
杉戸洋 展「天上の下地」
会期:2015/05/02~2015/07/26
宮城県美術館[宮城県]
絵画作品は、静岡のビュフェ美術館と同様、家型のモチーフが多い。また1990年代に、9.11を予感するような絵を描いていたことも発見だった。今回の展示は、空間に大きく介入し、あいちトリエンナーレ2013で青木淳と共同で美術館をリノベーションしたプロジェクトの展開形と言えるだろう。おそらく普段の展示室を知っているほど、その空間の変化を強く感じるはずだ。自転車置き場や柱など、前川國男の宮城県美の再解釈もいろいろとあり、それを見つけるのも楽しい。
2015/06/30(火)(五十嵐太郎)