artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)

[広島県]

呉の大和ミュージアムへ。大勢の来場者で賑わい、改めて日本における大和の人気を痛感する。やはり、吹抜けに設置された1/10スケールの戦艦大和が最大の見世物であり、下や横、あるいは上からと、さまざまな視点から船体を楽しめる。展示は、近代の造船、大和の設計と最期、戦後のタンカー建設など、資料を通じて、呉の歴史をたどる(ただし、一ノ瀬俊也『戦艦大和講義』のように、「宇宙戦艦ヤマト」など、戦後のサブカルチャー受容は紹介しない)が、なぜ戦争が起きたかという社会背景の説明は薄い。

2015/07/27(月)(五十嵐太郎)

《世界平和記念聖堂》

[広島県]

竣工:1954年

久しぶりに村野藤吾の《世界平和記念聖堂》へ。戦後最初の話題のコンペをやったものの、結局、審査員長の村野藤吾が設計してしまったもので、その経緯は問題あるが、完成したものはいい。60年を過ぎて、さらに凄みを増す建築だ。世界各地で見学した近代以降の教会と比べても、決して遜色がない。あえて難を言えば、祭壇の壁画が微妙かもしれない。

2015/07/27(月)(五十嵐太郎)

コレクション展 2015-II「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」

会期:2015/07/25~2015/10/18

広島市現代美術館[広島県]

広島現美の常設コレクションでは、「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」展を開催していた。展示されたアルフレッド・ジャーの作品名からとったタイトルだが、さらにもとをたどれば、大江健三郎の書名に基づく。さまざまな角度から広島/核/原爆と、現代美術の関係を検証する。若林奮の巨大彫刻《DOME》がなかなかの迫力だ。またイヴ・クラインの人拓は、原爆による人影の痕跡の影響を受けたらしい。

2015/07/26(日)(五十嵐太郎)

《原爆─ひろしまの図》公開修復

会期:2015/07/18~2015/09/27

広島市現代美術館[広島県]

戦後70年ということで、広島現美のミュージアムスタジオでは、《原爆─ひろしまの図》公開修復を行ない、床置きされた大きな絵を台の上から眺める仕かけもあった。丸木位里・俊夫妻が描いたシリーズであり、剥落などの傷みが進んだことから、普段は可視化されない美術館の保存事業を見せる企画だった。

2015/07/26(日)(五十嵐太郎)

[被爆70周年:ヒロシマを見つめる三部作 第1部]ライフ=ワーク

会期:2015/07/18~2015/09/27

広島市現代美術館[広島県]

ヒロシマ賞の審査で、広島市現代美術館へ。終了後、三部作となる展覧会の第一部「ライフ=ワーク」を見る。被爆者たちが74年頃から描き始めた当時の記憶の絵から始まり(これらは平和記念資料館の所蔵で、ある意味アーティストの作品よりも強烈で生々しい)、作家たちのシベリア抑留や原爆をテーマにした重い作品群が続く。

2015/07/26(日)(五十嵐太郎)

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