artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
「月映」展──田中恭吉・藤森静雄・恩地孝四郎 TSUKUHAE
会期:2015/04/17~2015/05/31
愛知県美術館[愛知県]
愛知県美術館の企画展は、田中恭吉、恩地孝四郎、藤森静雄が1914年に創刊した木版画の小さな雑誌『月映(つくはえ)』を紹介する。同時代の海外の影響も感じられるが、当時彼らはまだ20代半ばの青年だった。田中は1915年に病いで亡くなるのだが、彼らは死と隣合わせに制作を行ない、大正ロマンの想像力を羽ばたかせながら、文学者とも深く交流した。藤森の絵は暗く、恩地がもっともデザイン的な構図である。
2015/04/30(木)(五十嵐太郎)
済州島
[韓国]
済州島では、現地の大学、建築の金泰一先生の案内により、安藤忠雄や伊丹潤の建築を見学する。安藤に関しては、古美術もよく揃えた《ポンテ美術館》、フェニックスアイランドにおいて、魅力的なアプローチをつくって、地中に埋めた《ゲニウス・ロキ美術館》と、海の眺望を楽しめる透明なレストラン《グラスハウス》をまわった。伊丹は、いずれも素材や空間の感覚が説得力をもつ、箱船を意識した教会、ポド・ホテル、ゴルフ施設などの空間を堪能した。
写真:左上から、《空の教会》、《ポド・ホテル》、PINX GOLF CLUBのクラブハウス《ピンクス・クラブハウス》、《ポンテ博物館》。右上から、フェニックスアイランドリゾート内レストラン「ミント」内観、外観、《ゲニウス・ロキ》
2015/04/28(火)(五十嵐太郎)
福岡アイランドシティ/ネクサスワールド
[福岡県]
博多に寄港し、三度目の福岡アイランドシティへ。伊東豊雄の《ぐりんぐりん》や大西麻貴らの地層をイメージしたパヴィリオン《地層のフォリー》などがある公園のまわりは、いまも開発が進行している。そして久しぶりにネクサスワールドを訪問した。当時全盛のポストモダンではあるが、手入れが行き届いていることもあり、全体的に古びれた感じはなく、日本では希有な街並みが育まれている。特に低層のレム・コールハース棟やスティーブン・ホール棟が変わらずいい。十分にお金をかけて建築をつくることができたバブルの時代が残した重要な資産だ。
写真:左上から、ネクサスワールド《石山修武棟》、アイランドシティ中央公園 体験学習施設《ぐりんぐりん》、《太陽のフォリー》、《地層のフォリー》。右上から、ネクサスワールド《ポルザンパルク棟》、《レム・コールハース棟》、《スティーブン・ホール棟》
2015/04/27(月)(五十嵐太郎)
ボイジャー・オブ・ザ・シーズ
ボイジャー・オブ・ザ・シーズに乗船し、博多、済州島、名古屋をまわった。一週間なので、これまででもっとも長い船旅である。全長310m、全幅48m、全高63mのヴォリュームなので、高層ビルよりもデカい。巨大な客船=動く建築を体験したが、ホテル+街並みを模したショッピングモール+シアター+飲食店+テーマパークなどが合体したような複合施設である。数千人が暮らし、随時あちこちでさまざまなイベントが開催されており、もはや海に浮かぶ小さな街という方が正しいかもしれない。
2015/04/26(日)(五十嵐太郎)
石田尚志「渦まく光」
会期:2015/03/28~2015/05/31
横浜美術館[神奈川県]
彼のドローイング・アニメーションの作品を、あちこちで見てきたが、それらが集合しており、まとめて見ることができた。バッハなど、音楽を視覚に変換した作品(制作のための資料がすごい)、窓を効果的に使う作品など、興味深い映像が多い。部屋の壁に絵を描き続けて、それをアニメ化する現在のスタイルを確立した労作だが、見覚えある窓だと思ったら、なんと東大の駒場寮で制作したものだった。
2015/04/25(土)(五十嵐太郎)