artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
暗殺教室
映画『暗殺教室』はあまり期待せずに鑑賞したら、十分に合格点の内容だった。漫画は最初の方しか読んでいないので、途中から原作との照合はできていないが、無理に完結させなかったのがいい。もともと漫画でも、絵的にリアリティのレベルが違う不条理な存在として、殺せんせーは登場していたので、よくできたCGの微妙な違和感がちょうどいい。また、二宮和也の声優ぶりもよかった。
2015/04/01(水)(五十嵐太郎)
ジュピター
ウォシャウスキー姉弟による『ジュピター』は、ある意味で、あまりにも残念すぎて、スゴイかもしれない。実は人類が支配されている、現世では平凡な主人公が世界を救う英雄だったなど、中二病的な陰謀史観は、彼らの傑作『マトリックス』と一部共通しているが、全体としては最新の技術で大昔のSFを見ているようだ。映画美術として中世風の建築は食傷気味だが、フランク・O・ゲーリーの建築群をコラージュした都市風景は笑える。
2015/04/01(水)(五十嵐太郎)
漂泊
会期:2015/03/20~2015/03/30
吉祥寺シアター[東京都]
吉祥寺シアターで『漂泊』を観劇する。幸せな家庭が揺らぐアガサ・クリスティの原作だが、蓬莱竜太が、日本の家を舞台に笑いの要素を加えており、その脚本が面白い。さらに、市毛良枝、小林勝也らのベテラン俳優陣が盛り上げる。そして豪雨の日の最後に訪れるクライマックスの演出には驚かされた。窓学的には、舞台美術としてつくられた住宅の内部において、窓まわりの半円アーチが母のお城としての家を象徴しているのも興味深い。
2015/03/27(金)(五十嵐太郎)
ルック・オブ・サイレンス
ドキュメンタリー映画『ルック・オブ・サイレンス』の試写会へ。インドネシアの大虐殺を、加害者による再演という驚くべき手法で撮影した『アクト・オブ・キリング』と同じ監督が、今度は被害者側の視点を入れて制作したもので、対として見るべき作品だった。こちらは狂気の笑いの要素は少なく、むしろ重い。同時に人々がイデオロギーやプロパガンダでいとも簡単に煽動され、罪悪感や後悔を感じないまま、「国家」のために、究極の排除=殺人に向かう姿を描くわけだが、前作よりも本作のほうが、日本と重ね合わせて見えてしまう。共産主義者を殺せは、非国民や外国人にもなりうるだろう。
2015/03/27(金)(五十嵐太郎)
《JR神田万世橋ビル》《マーチエキュート 神田万世橋》
[東京都]
JR神田万世橋ビルとその手前の mAAch マーチエキュートを散策する。後者はみかんぐみが手がけたもの。万世橋の古い高架下を活用し、飲食店などが入る。ヨーロッパにあるようなリノベーションが、日本でもようやく普通になった。上部には2つの線路に挟まれた細長く、透明なカフェがあり、両側を電車が通る不思議な体験を味わえる。
写真:《マーチエキュート 神田万世橋》
2015/03/26(木)(五十嵐太郎)