artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話
会期:2015/02/26~2015/03/01
シアタートラム[東京都]
世田谷パブリックシアターにて、オノマリコ作、稲葉賀恵演出の『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』を観劇する。長いスパンで時代を行き来する雰囲気は『奇跡の年』と共通するが、建築という記憶の器を主題とし、オノマ自身が舞台となる東京女子大に在籍していたリアリティから、より楽しめた。物語は、異なる寓意的なキャラの女子学生たちのめまぐるしい4年間の生活と重ねあわせながら、体育館とその保存運動を描く。が、建物の具体的なイメージは一切見せず、それゆえ、記憶の物語としての普遍性をおびる。そして女優たちは「走る」ことで、乙女の身体を獲得していた。
2015/02/27(金)(五十嵐太郎)
つかこうへい Triple Impact『いつも心に太陽を』
会期:2015/02/12~2015/03/02
紀伊國屋ホール[東京都]
紀伊國屋ホールにて、つかこうへい原作、岡村俊一演出の『いつも心に太陽を』を観劇した。国体、水泳、オリンピックに男同士の恋愛や痴話ゲンカを絡めた物語である。30年以上前の初演の頃は、インパクトのある内容だったと想像されるが、いまはそれほどでもないだろう。とすれば、2015年に演じる現代性はなんだろうか。女性の観客が多かったが、やおい(?)的な物語としても読める。後につかこうへいが書いた『ロマンス』はほぼ同じ内容だが、『いつも心に太陽を』の方を面白く見た。
2015/02/26(木)(五十嵐太郎)
ポジティブショートフィルムプログラム 全5作品
会期:2015/01/16~2015/02/28
Brillia SHORTSHORTS THIEATER[神奈川県]
ブリリアショートショートのポジティブ・ショートフィルム・プログラムでは、Jasper Wessels監督の『傾いた男』が面白かった。身体がどんどん傾き、ほとんど横歩きになっていく。病気というよりも、彼だけ重力のかかり方がズレたと言うべきか。上下逆さの映画はあるが、斜めというのがユニークである。映像ならではの表現が効く物語だ。5番目の『人生に一度のひとめぼれ』は、これに類似したものがなくはない設定だが、奇跡の日を繰り返す、老人ホームならではのストーリーを13分弱でまとめている。
2015/02/26(木)(五十嵐太郎)
昭和館/遊就館
昭和館/靖国神社遊就館[東京都]
九段で《昭和館》(菊竹清訓、1999)と《遊就館》(同、1882)の展示を見る。前者は戦中と戦時の暮らしを紹介し、後者は戦争博物館+慰霊の施設だが、いずれも受動的に戦争になったというか、主体なき自然災害のようだ。誰がなぜ戦争を起こし、なぜ悪化しても止めずに継続したかの視点がない。昭和館は、菊竹清訓のデザインらしく、持ち上げたヴォリュームであり、最上階までエレベータで一気に上がるという動線だ。まず7階が戦中、そして階段を降りるところで玉音放送、6階が戦後の公団の頃まで、という展示構成だ。ただ、エレベータのドアが開いて、いきなりトリックアートによる廃墟の絵が出迎える新規コンテンツは、これでよいのか? とはいえ、当時の映像ニュースの資料が多く、さまざまな情報を読みとれる。遊就館の展示手法は、以前より洗練された感じがした。が、いきなりプロパガンダの映像である。反米はともかく、日本は悪くなかった、正しい戦争だったことを主張する。なるほど、靖国神社のイデオロギー的な機能を「正しく」補完する内容だ。これ以外にも日本近代史の充実した博物館があるとよいのだが。最後の残された母が亡くなった息子に送る花嫁人形が哀しい。
写真:上=昭和館(左)と九段会館(右) 中=遊就館 下=昭和館の展示
2015/02/25(水)(五十嵐太郎)
第9回シセイドウ アートエッグ 飯嶋桃代展〈彫刻〉
会期:2015/02/06~2015/03/01
資生堂ギャラリー[東京都]
資生堂ギャラリーの飯嶋桃代「カケラのイエ」展を見る。さまざまな古食器を閉じ込めた、パラフィンワックスによる家型を群島状に配置する。作家はイエ型を家族に見立てるが、不安定な社会において家族が漂流しているかのようだ。それぞれは不規則に切断されるが、食器ごとカットされた鮮やかな断面と、クリスタル状のヴォリュームがカッコいい。また個を示す、スタンドの上にのせた食器群のインスタレーションも同時に展開する。
2015/02/25(水)(五十嵐太郎)