artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
だれも知らない建築のはなし: Inside Architecture -A Challenge to Japanese Society-
ヴェネツィアビエンナーレ国際建築展2014を契機に制作された石山友美監督のドキュメント『だれも知らない建築のはなし』の試写会へ。その内容は、大阪万博後の1970年代、ポストモダンの興隆、熊本アートポリスのプロジェクト、バブル後と現在の構成となっている。日本の現代建築史を磯崎新、伊東豊雄、安藤忠雄、レム・コールハース、ピーター・アイゼンマン、チャールズ・ジェンクス、二川由夫らが語る。ポイントのひとつが、建築家と社会の関わりという意味では、金沢21世紀美術館の「3.11以後の建築」展へのイントロとしても鑑賞可能だろう。個人的には海外からの日本へのまなざしや異文化のディスコミュニケーション、そして1980年代バブルの日本がもっていた熱いエネルギーが面白かった。また磯崎が早い時期に、伊東、安藤の二名を高く評価していた目利きぶりにも改めて感心させられるし、ある程度、建築をすでに知っている人はかなり楽しめる。ドキュメント映画として、ハードルを下げる妥協をせず、初心者はわからない固有名詞が多いかもしれないが、多くの人がこれを見て、是非80年代に興味をもってほしい。
2015/03/26(木)(五十嵐太郎)
VOCA展2015 現代美術の展望─新しい平面の作家たち
会期:2015/03/14~2015/03/30
上野の森美術館[東京都]
上野の森美術館のVOCA展を見る。毎年気がつくと終わっていることが多いのだが、今年は奥村雄樹の提案が拒否された事件が起きたので、忘れずに足を運んだ。なるほど、現代の平面作品の年鑑化しつつあるVOCAに対して、現代美術としての一撃である。カタログで高階がこの件に多く触れている一方、他の選考委員がまったく触れないのも印象的だ。
2015/03/23(月)(五十嵐太郎)
相対性理論 presents「回折III」
会期:2015/03/22
東京ドームシティホール[東京都]
相対性理論のライブがどんな感じが見たくて行ってみた。音楽としては、ツーマンライブで企画され、先に演奏をしたジェフ・ミルズの方が圧倒的だった。相対性理論だが、本当に一言MCで、アンチ・クライマックスである。照明もやくしまるえつこにスポットという常識的なものでなく、むしろ邪魔するような特殊な演出だった。
2015/03/22(日)(五十嵐太郎)
鎌田友介「半径7kmのダイアグラム」
会期:2015/03/20~2015/03/22
エリスマン邸[神奈川県]
横浜のエリスマン邸にて、鎌田友介の展示「半径7kmのダイアグラム」を見る。神奈川県にある作家の家から半径7km圏内にある歴史的な事象を幾何学的な星座のようなダイアグラムにマッピングする。その結果、家系と関わる石油産業、エリスマン邸とその設計者アントニン・レーモンド、そして戦争と焼夷弾がつながっていく。石油採掘―焼夷弾のミニュチュアを使う墨壺も制作していた。
2015/03/22(日)(五十嵐太郎)
神々のたそがれ
再度、『神々のたそがれ』を見る。やはり、とんでもないクソ映画である。もちろん、映画がクソなのではなく、冒頭から糞の映画だ。透視図法的な統一がなく、画面の焦点を定めず、あらゆる細部が自律的にうごめく、過剰な映像は各パートの主従関係がない中世のポリフォニー音楽を想起させる。加えて、尖ったモノが画面を遮り、いつも上部から何かがぶら下がる。屋外であろうとも、上からの雨や下からの蒸気で空がはっきり見えず、異様に閉鎖的な画面だ。そして登場人物はカメラ目線を送り、ときに話しかける。その場にいるかのようなドキュメンタリーとしての中世SFだ。また宣伝で、嘴のようなものがついた嘆きの帽子をかぶせられた裸の女たちが処刑・拷問を待って並ぶ場面があるが、改めて見返してもない。確認すると、これと同一の映像はなく、やはり入場するところを後ろから撮った瞬間だけだという。黒衣の集団シーンといい、贅沢な映像のつくり方だ。
2015/03/21(土)(五十嵐太郎)