artscapeレビュー
ルック・オブ・サイレンス
2015年04月15日号
ドキュメンタリー映画『ルック・オブ・サイレンス』の試写会へ。インドネシアの大虐殺を、加害者による再演という驚くべき手法で撮影した『アクト・オブ・キリング』と同じ監督が、今度は被害者側の視点を入れて制作したもので、対として見るべき作品だった。こちらは狂気の笑いの要素は少なく、むしろ重い。同時に人々がイデオロギーやプロパガンダでいとも簡単に煽動され、罪悪感や後悔を感じないまま、「国家」のために、究極の排除=殺人に向かう姿を描くわけだが、前作よりも本作のほうが、日本と重ね合わせて見えてしまう。共産主義者を殺せは、非国民や外国人にもなりうるだろう。
2015/03/27(金)(五十嵐太郎)