artscapeレビュー

神々のたそがれ

2015年04月15日号

再度、『神々のたそがれ』を見る。やはり、とんでもないクソ映画である。もちろん、映画がクソなのではなく、冒頭から糞の映画だ。透視図法的な統一がなく、画面の焦点を定めず、あらゆる細部が自律的にうごめく、過剰な映像は各パートの主従関係がない中世のポリフォニー音楽を想起させる。加えて、尖ったモノが画面を遮り、いつも上部から何かがぶら下がる。屋外であろうとも、上からの雨や下からの蒸気で空がはっきり見えず、異様に閉鎖的な画面だ。そして登場人物はカメラ目線を送り、ときに話しかける。その場にいるかのようなドキュメンタリーとしての中世SFだ。また宣伝で、嘴のようなものがついた嘆きの帽子をかぶせられた裸の女たちが処刑・拷問を待って並ぶ場面があるが、改めて見返してもない。確認すると、これと同一の映像はなく、やはり入場するところを後ろから撮った瞬間だけだという。黒衣の集団シーンといい、贅沢な映像のつくり方だ。

2015/03/21(土)(五十嵐太郎)

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