artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

戦後日本住宅伝説──挑発する家・内省する家

会期:2014/10/04~2014/12/07

広島市現代美術館[広島県]

広島市現代美術館に「戦後日本住宅伝説」展が巡回されるので、設営現場に向かう。同じ黒川紀章の建築だが、埼玉県立近代美術館に比べて、広い空間なので、没入感のある巨大写真タピスリーのインスタレーション、塔の家の1/1スケール図面などがパワーアップした。ほかに新規で追加した資料の展示物も増え、さらに充実した内容となった。






会場風景

2014/10/03(金)(五十嵐太郎)

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建築文化週間2014 建築夜楽校「東京オリンピック2020から東京を考える」第1夜「新国立競技場の議論から東京を考える」

会期:2014/10/01

建築会館ホール[東京都]

日本建築学会、建築夜楽校のシンポジウム「新国立競技場の議論から東京を考える」にコメンテーターとして出席する。司会の松田達は、まずこの錯綜している問題に関する、さまざまな論点を整理し、続いて青井哲人は議論すべきことを指摘した。また浅子佳英は、311以降の文脈から大胆な穴掘りによるスタジアム案をオルタナティブとして提示する。そして一連の議論のきっかけをつくった槇文彦は、ザハ案の阻止を訴え、コンペの審査員をつとめた内藤廣はすぐれたものをつくるべきという。多くの聴衆の関心を集めたように、この問題に関して、槇と内藤が初めて同じ場において議論したことが最大の成果である。とはいえ、結論が出たわけではない。ザハ案の反対派が強固なことが再確認された。またシンポジウムにあわせて、関連企画展「東京オリンピック2020から東京を考える」展が開催された。

左:森山高至によるキャラ建築
右:浅子佳英によるショッピングモールのモデルなどを応用した選手村案

2014/10/01(水)(五十嵐太郎)

被災地めぐり

会期:2014/09/28

[宮城県]

久しぶりに仙台を起点に、雄勝、女川、石巻エリアをまわる。雄勝の中心部は被災建物を除去したため、街の痕跡が完全に消えていた。一方、ゆっくりと各浜の復興が動く。以前の津波災害後につくられた復興住宅も、とり壊されるらしいのだが、これは歴史の証言者として残していいのではかと思う。


左:雄勝の復興住宅
右:雄勝風景

女川では、女川サプリメントの建物がすでに解体され、江島共済会館も壊される見込みである。結局、震災遺構としては交番だけが残る予定だ。震災20日後にここに訪れたときは、横倒しになった江島共済会館を探すのに、30分以上かかるほど、街が破壊され尽くされており、カオスの状態だった。しかし、今やこれくらいしか破壊の記憶を伝える目立つものが残っていないのは皮肉である。女川のかさ上げは相当な高さだった。一方、ここは海沿いに新しい水産関係の施設がどんどん作られ、運動公園にも復興住宅群が完成していた。また坂茂の設計による新しい駅舎もだいぶできており、他の被災地に比べてスピードが早い。そして石巻では、被災した自由の女神や木造教会(移築予定)がなくなっていた。


女川 江島共済会館

記事左上:坂茂設計の女川駅駅舎模型

2014/09/28(日)(五十嵐太郎)

鎌田友介「ヴェネチアビエンナーレ2014のいくつかの飛躍と帰結」

会期:2014/09/27

blanClass[神奈川県]

blanClassにて、鎌田友介の展覧会/イベント「ヴェネツィア・ビエンナーレ2014のいくつかの飛躍と帰結」を見る。本人が以前から継続する戦争と建築のリサーチ・プロジェクトを、今回はヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展2014の内容(1914年という起点やエレメンツなど)に絡める。とりわけ、今回はアントニン・レーモンドが関わった米軍の焼夷弾実験のためにつくられた家屋を題材に、その模型の破壊と記録のズレをライブ的に行う。


展示風景

2014/09/27(土)(五十嵐太郎)

日本建築学会建築文化週間2014カルチベートトーク

会期:2014/09/26

建築書店[東京都]

建築会館の書店にて、濃厚な資料集でもある『日本の名建築167日本建築学会賞受賞建築作品集1950-2013』本について、監修した古谷誠章、寄稿した倉方俊輔と五十嵐、編集の大森晃彦が、トークイベント「学会賞とはなにか─日本建築学会賞受賞建築作品集1950-2013の刊行記念」を行う。日本建築学会賞(作品)は戦後すぐに創設され、これまでに多くの作品が受賞し、その審査経緯、選評、受賞の言葉などが60年以上にわたって蓄積されているが、それらを総覧できる初の書籍である。各執筆者は時代の変遷やテーマ別の切り口から、学会賞を読みとくが、アーカイブゆえに、ここから議論できる内容は将来さらに発掘可能だろう。建築会館の書店は親密なスケール感で、よい雰囲気だった。やはり学会賞(作品)の審査を通じた膨大かつ多角的な議論が、非公開なのはもったいない。公開審査がすぐに無理だとしても、数十年後に全内容が公開されるなどの措置はできないものか。後世の歴史家に委ねて。

2014/09/26(金)(五十嵐太郎)