artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(ジェームズ・ガン監督)は、凸凹メンバーによるハチャメチャな宇宙活劇の21世紀版である。懐メロも楽しいし、最後の空中戦も迫力だった。動きはまだ記号的なものが残るが、アライグマや植物など、非人間のキャラをアニメ的に抽象化することなく、人間と並べて遜色ない存在感を持たせられることに感心させられた。こうした技術が進化していくと、今度は人間の番となり、俳優が不要となるのだろうか。
2014/09/25(木)(五十嵐太郎)
猿の惑星 新世紀
映画『猿の惑星 新世紀』(マット・リーヴス監督)を見る。異民族との共存か、過去の恨みを引きずる好戦派の陰謀による戦争か。理想的な指導者の敵が内部にいることも含めて、面白い物語だが、当然、猿の世界を描いているわけではなく、古典的な人間社会の寓意だ。したがって、アメリカの銃社会も意識しているだろうし、日本の現状と照らし合わせて考えることもできる。それにしてもリーダーに成長したシーザーが立派である。現代の世界の指導者たちもそうなって欲しい。
2014/09/24(水)(五十嵐太郎)
ヘルシンキ空港
[フィンランド、ヘルシンキ]
ヘルシンキで感心したのは、空港や公共施設など、どこでもWi-Fiフリーの環境が当たり前のように存在していたこと。日本のWi-Fi環境も、これに見習って、もっと良くなって欲しい。またフィンランドの空港の什器も何気にインテリアがカッコいいし、待ち合いの座席に間仕切りもない。一方、乗り換えで滞在したモスクワの空港は、ほぼすべての椅子に間仕切りをつけ、長時間を過ごす乗り換え客は辛いだろう。
2014/09/23(火)(五十嵐太郎)
フィンランディア・ホール
[フィンランド、ヘルシンキ]
市内に戻り、《フィンランディア・ホール》(アルヴァ・アアルト/1971)の室内を見学できるガイドツアーに参加した。ガイドは褒めるだけではなく、施工や実用の問題点にも言及するが、全体としてはアアルト、すなわち建築家へのリスペクトを感じる内容だった。日本だと、少しでもミスがあると、だから建築家はダメみたいな風潮になりがちだが、文化的な背景が違う。
続いて、ティモ&トゥオモ・スオマライネンによる《テンペリアウキオ教会》(1969)へ。1930年代からコンペを繰り返し、ようやく1969年に完成したものである。細かいデザインがどうのこのではなく、とにかく岩盤をくり抜き、中央に浅い大きなドームを架ける空間操作によって、他にはない圧倒的にユニークな建築が実現した。
アアルトがヘルシンキで初めて依頼された仕事、《サヴォイ・レストラン》のインテリアを見るべく、そこで夕食をとる。かなりいいお値段のメニューだが、なるほど味もそれに見合うレベルだった。このレストランはビルの最上階に位置しており、屋上のテラス席を眺めると、船内にいるような雰囲気もある。1937年の内装を現在に残していることに感心させられた。
2014/09/22(月)(五十嵐太郎)
アアルト大学(旧ヘルシンキ工科大学)
[フィンランド、ヘルシンキ]
途中、ノキア本社を横目で眺めながら、オタニミエの《旧ヘルシンキ工科大学》(アルヴァ・アアルト/1958)を訪れた。現在はアアルト大学と改名されており、彼の手がけた建築群がキャンパスに点在する。世界中から見学者が訪れ、自由に入れることができる図書館、オーディトリアムなど、隅々までデザインが行き届き、うらやましい大学の空間環境だ。また大学内のライリ&レイマ・ピエティラによるディポリセンターは、岩に囲まれる、また岩から立ち上がるだけでなく、インテリアにも岩が浸食する洞窟のような建築である。アアルトの不規則かつ有機的な造形を過剰にバロック化させたとでもいうべきか。アアルトの建築でも、外構では岩の存在が目立つが、岩はフィンランド的な要素なのだろう。キャンパスの奥には学生寮が続くが、さらに進むと、カイヤ&へイッキ・シレンによる《オタニエミ礼拝堂》(1957)がひっそりとたつ。1957年のモダン・デザインである。だが、シンプルな構造とミニマルな空間は、今見ても瑞々しい傑作だ。奥の大きなガラスの向こう、森の中に十字が見え、安藤忠雄の教会のデザインにも影響を与えていると思われる。
2014/09/22(月)(五十嵐太郎)