artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

EASTERN《西八條邸彩丹》と《紋所の家》

[京都府]

京都にて、高松伸事務所出身のEASTERNの2作品を見学。スリットの家から続く、開口部のデザインを展開し、円窓やマスクとしてのファサードを試みる興味深い建築でした。

2008/12/30(火)(五十嵐太郎)

西沢大良《駿府教会》

[静岡県]

《駿府教会》は、静岡駅からほど近い線路沿いに建つ、西沢大良による建築。立方体と大きな三角屋根の二つのヴォリュームが並び、外観は簡素だ。窓のない教会は閉鎖的だが、内部に入ると天井から明るい光が降り注ぐ。この手法は、宇都宮のSUMIKAプロジェクトでも用いられている。教会はいわば光に満ちた閉じた箱で、二重の皮膜となっている。両者の間は木造のトラスが組まれることにより、10メートル角の無柱の空間が生まれている。内側の箱は、微妙に間隔が変化させられたパイン材がルーバー上に並び、残響や光の状態を演出する。刻一刻と変化する光の状態により、ルーバーを通じてもれる光の影が、十字の形をつくる瞬間もあると、牧師から聞いた。カトリックのゴシック大聖堂のように劇的に人を驚かせるのではなく、いつも通うことで初めて空間の魅力を体感できるプロテスタントの教会である。

2008/12/29(月)(五十嵐太郎)

安井建築設計事務所《大洋薬品工業新本社》

[愛知県]

安井建築設計事務所の《大洋薬品工業新本社》を訪問。審査員を担当した愛知まちなみ景観賞で紛糾した、擬木による熱帯植物がガラスのアトリウムのなかにあるので、せひ実物を見たいと思った物件。ところが、年末の休みで、ブラインドをおろしていて街並みに見せていない。環境の影響が関係ない、偽物なんだから、もっと見せればいいと思う。それでもガラスに近づくと、植物が偽とわかる。かなりヘンなことを無意識にやっている。真面目なランドスケープからは噴飯ものの手法だが、だからこそ、実は可能性があったはず。

2008/12/29(月)(五十嵐太郎)

井坂幸恵/bews《kamizono place》

[東京都]

井坂幸恵さんの《kamizono place》を見る。あいにく、オープンハウスの都合がつかず、翌日だったため、外観のみ。いかにも東京らしい混み入った狭小の敷地で、針の目に糸を通すように、鉄骨の軽やかな集合住宅を挿入している。構造は佐藤淳。

2008/12/28(日)(五十嵐太郎)

ジム・ランビー:アンノウン・プレジャーズ

会期:12月13日~3月29日

原美術館[東京都]

床にテープがストライプ状に張られているという手法は、2007年の東京オペラシティアートギャラリーでのMelting Point展や十和田市現代美術館のチケットカウンター部分の常設展示にも見られるジム・ランビーおなじみの手法。しかしここではカーブした廊下という原美術館の形態にあわせ、円弧型を組み合わせたパターンにテープを貼る。模様は展示室だけでなく、階段、踊り場なども覆い、特に階段では滝が流れているかのよう。展示室では、微妙に開いたフェイクの扉をインスタレーションし、そこにも立ち上がって円弧パターンが覆い尽くす。建築と美術がうまく絡んだ、サイト・スペシフィックな展示だといえる。

2008/12/27(土)(五十嵐太郎)