artscapeレビュー

西沢大良《駿府教会》

2009年01月15日号

[静岡県]

《駿府教会》は、静岡駅からほど近い線路沿いに建つ、西沢大良による建築。立方体と大きな三角屋根の二つのヴォリュームが並び、外観は簡素だ。窓のない教会は閉鎖的だが、内部に入ると天井から明るい光が降り注ぐ。この手法は、宇都宮のSUMIKAプロジェクトでも用いられている。教会はいわば光に満ちた閉じた箱で、二重の皮膜となっている。両者の間は木造のトラスが組まれることにより、10メートル角の無柱の空間が生まれている。内側の箱は、微妙に間隔が変化させられたパイン材がルーバー上に並び、残響や光の状態を演出する。刻一刻と変化する光の状態により、ルーバーを通じてもれる光の影が、十字の形をつくる瞬間もあると、牧師から聞いた。カトリックのゴシック大聖堂のように劇的に人を驚かせるのではなく、いつも通うことで初めて空間の魅力を体感できるプロテスタントの教会である。

2008/12/29(月)(五十嵐太郎)

2009年01月15日号の
artscapeレビュー