artscapeレビュー
福住廉のレビュー/プレビュー
草月いけばな展[赤と黒]
会期:2009/06/04~2009/06/09
新宿橋高島屋11階[東京都]
草月流のいけばな展。会場は全体的に赤と黒で統一され、そのなかで家元である勅使河原茜をはじめ、数多くの作品が発表された。一般的な生け花の固定観念をいとも簡単に覆されるほど、いずれの作品も奇抜であり、ゴテゴテのバロックというべきか、キッチュのてんこ盛りというべきか、破天荒きわまるものばかりだった。そうしたなか、ひときわ際立っていたのが、黒い長靴にバンブーをいけた大久保春霞(後日訂正。長靴は、陶製の花器で、バンブーのように見えたのは砥草[とくさ]らしい)。周囲のように足し算ではなく、引き算の発想が潔い。
2009/06/8(月)(福住廉)
日本の美と出会う──琳派・若冲・数奇の心──
会期:2009/06/03~2009/06/15
日本橋高島屋8階ホール[東京都]
細見美術館が蒐集してきた日本美術の名品、およそ90点を一挙に公開する展覧会。琳派をはじめ、若冲、神坂雪佳、池大雅など人気作家の名品がずらりと並んでいた。
2009/06/8(月)(福住廉)
ヴィデオを待ちながら 映像、60年代から今日へ
会期:2009/03/31~2009/06/07
東京国立近代美術館[東京都]
ヴィデオ・アートの歴史を回顧する展覧会。ビル・ヴィオラ、ヴィト・アコンチ、ロバート・スミッソン、ブルース・ナウマン、野村仁、泉太郎、小林耕平など、国内外あわせて30人のアーティストによる作品51点が発表された。テレビモニターを使った作品の展示は単調になりがちだが、本展では空間をきちんと作りこむことによって、作品の特性を最大限に引き出していたし、空間のメリハリが効いていて、ストレスなく作品を鑑賞することができた。また、映像作品ばかり見ているとたいてい辟易させられるものだが、本展では展示された作品すべてがおもしろく、一つも外れがなかったといっていいほど、楽しめた。難点があるとすれば、出品作品が60年代の欧米と現在の日本に極端に偏重していたこと。「60年代から今日へ」というのであれば、双方のあいだをつなぐ媒介者の存在こそ、よりいっそうクローズアップするべきではなかったか。
2009/06/2(火)(福住廉)
村田真 展
会期:2009/06/16~2009/06/28
ZAIMギャラリー[神奈川県]
美術ジャーナリスト、村田真の個展。壁面の一面にところ狭しとキャンバスを埋め尽くした平面インスタレーションを発表した。ほとんどのモチーフは西洋美術史の名作を引用していたようだが、なかでも際立っていたのが本の絵。キャンバスの厚みと本のそれを一致させることで、本を立体的に再現していたが、描写しているのはキャンバスの表面、つまり本の表紙だけで、もちろん中を開いて読むこともできない。二次元の中にどれほど三次元のトリックを持ち込んでも、結局のところ平面に還元されざるを得ないというアイロニーが効いていたようだ。
2009/06/27(土)(福住廉)
市川孝典 VITAGE BROWN
会期:2009/06/17~2009/06/30
PLSMIS[東京都]
線香の炎で紙に穴を穿ち、その文様で絵を描くアーティスト。ロシア貴族の衣裳や城内のシャンデリアなど、作家がかつて見た記憶の風景を描き出している。炎の温度によって濃淡を描き分けるなど、描写の技術を独自に開発することで、下書きなしの一発勝負を見事に勝ち取っている。
2009/06/27(土)(福住廉)