artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

みやちとーる個展「永遠の夏休み」

会期:2010/08/24~2010/08/29

ギャラリーアビィ[大阪府]

トイカメラの祭典「ホルガ・ジャンボリー」の一部として個展形式で開催。みやちといえば「フジロックフェスティバル」を取材したモノクロ写真のシリーズを毎年発表しているが、今回の作品はもうひとつの系統である故郷(三重県尾鷲市近郊)をカラーで撮影したシリーズ。カメラは当然トイカメラのホルガを使用している。作品に収められているのは、海、川、山、学校、駅、畑、実家など、典型的な日本の田舎の情景。子ども時代の夏休みや帰省の記憶が鮮やかに思い出されるものばかりだ。展覧会タイトルの「永遠の夏休み」には、パラダイスへの願望と、物わかりのいい大人には絶対ならないぞという決意が重ね合わされている。これはフジロックのシリーズも同じであり、両方を見れば写真家・みやちの世界が理解できるはずだ。

2010/08/24(火)(小吹隆文)

プレビュー:六甲ミーツ・アート「芸術散歩 2010」

会期:2010/09/18~2010/11/23

六甲カンツリーハウス、六甲高山植物園、ホール・オブ・ホールズ六甲、六甲ガーデンテラス、自然体感展望台「六甲枝垂れ」、六甲ケーブル六甲山上駅周辺[兵庫県]

阪神間に位置し、神戸・阪神・北摂エリアの人にとってなじみ深い観光地でもある六甲山。今年7月に展望台が新設されたのを機に、付近の複数の施設を会場とする現代アート展が開催される。出品作家は21組の招待作家を含む約40組。ピクニック気分で山歩きしながらアートを楽しみ、同時に六甲山の自然や景観を五感で再認識するのが目的だ。大都会のすぐ近くにある豊かな自然を味わいながら、美術館とも街中とも違うアートとのお付き合いを考えてみたい。

2010/08/20(金)(小吹隆文)

プレビュー:BIWAKOビエンナーレ2010“玉手箱─Magical World”

会期:2010/09/18~2010/11/07

近江八幡市旧市街地15カ所[滋賀県]

琵琶湖畔の城下町として栄え、近江商人の拠点としても知られる近江八幡市。その旧市街地には築100年を超す建築が今なお数多く残り、街並みも往時の状態が良好に保たれている。今年で4回目を迎える「BIWAKOビエンナーレ」では、そうした古い建築や聖徳太子が開いた願成就寺、広さ約1000�Fの元瓦工場などを舞台に国内外約50組のアーティストが作品を展示。町の象徴ともいえる八幡掘にはアーティストと地元の子どもたちが制作したアート船が就航するなど、地区全体が現代アートに包まれる。「瀬戸内国際芸術祭」や「あいちトリエンナーレ」のように大規模ではないが、コンパクトであるがゆえに親近感が持てるイベントだ。

2010/08/20(金)(小吹隆文)

あいちトリエンナーレ2010 都市の祝祭

会期:2010/08/20~2010/10/31

愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、長者町会場、納屋橋会場、七ツ寺共同スタジオ、他[愛知県]

「瀬戸内国際芸術祭」と並ぶ今年最も話題のアートイベントにさっそく出かけてきた。都市型イベントである「あいちトリエンナーレ」では、地下鉄で1~2駅の距離に会場が集中しているのが特徴。交通事情を気にせず自由に移動できるのがありがたい。展示は2つの美術館と街中が半々といった感じで、異なる環境での展示を同時に味わうことでアートの多様なポテンシャルを引き出そうとしているように感じた。筆者のおすすめは、愛知芸術文化センターの松井紫朗、蔡國強、三沢厚彦+豊嶋秀樹、宮永愛子、名古屋市美術館のオー・インファン、ツァイ・ミンリャン、塩田千春、長者町エリアの渡辺英司、山本高之、ナウィン・ラワンチャイクン、二葉ビルの梅田哲也、中央広小路ビルのピップ&ポップだ。納屋橋会場と七ツ寺共同スタジオには残念ながら行けなかった。また、美術展を優先したため、パフォーマンスや演劇系の公演を見てないのも悔いが残る。食事や観光など街を楽しむことができなかったのも同様だ。テーマに「都市の祝祭」を掲げるイベントだけに、美術展とパフォーマンスを観覧するだけでなく、食事や観光など名古屋の街の魅力も味わい尽くして初めてその真価がわかるはず。次に出かける時はしっかり予習して、アートと街遊びの両方を満喫したい。

2010/08/20(金)(小吹隆文)

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間芝勇輔 展「交!(まじめ)」

会期:2010/08/04~2010/08/29

京都造形芸術大学 ギャラリーRAKU[京都府]

子どもの落書きのような純真さと、洗練されたデザインセンス、そして驚くべき直感の冴えを併せ持つ間芝の世界。大量のドローイングと2点の映像からなる本展は、過去最大の規模を取ることで彼の魅力を伝えることに成功していた。京都出身ながら大阪でのみ発表していた彼にとって、本展は地元初個展。それゆえ普段以上に奮発したのかもしれない。間芝は今秋から東京に移住するらしい。関西で彼の作品を見る機会が減るのは残念だが、最後に大きなプレゼントを残してくれたことには感謝したい。

2010/08/10(火)(小吹隆文)