artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

宮永亮「メイキング」

会期:2010/07/10~2010/08/14

児玉画廊[京都府]

自動車の屋根にカメラを設置し、夜の京都をクルージングしながら撮影した映像を、7つのスクリーンに投影。別の大画面ではすべての映像を重ねて上映していた。大画面の作品では夜景が徐々に変化し、遂には光の乱舞へと至るのが見事。本作は既に京都の京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAと東京の児玉画廊で発表済みだが、本展では吹き抜けの2フロアを生かした立体的展示と、撮影に用いた愛車ミニを映像とともに展示するインスタレーションで、作品のポテンシャルの更なる引き上げに成功した。

2010/07/27(火)(小吹隆文)

八木敬太郎 展

会期:2010/07/26~2010/07/31

番画廊[大阪府]

自作のフレームの上に薄い麻布を被せた半立体的な平面作品を展示していた。これまでの八木の作品は既成のフレームの骨組みを一部改造して上から絹布を張ったものだった。それゆえ作品の主眼は絵画の平面性や虚構性に対する批評にあるとばかり思っていたが、どうやらそれは間違いだったらしい。彼はフレーム自体も絵画の構成要素とすることで、より自由な空間表現を目指しているのであろう。フレームを自作することにより、制作意図が伝わりやすくなった。

2010/07/26(月)(小吹隆文)

三宅砂織 展

会期:2010/07/09~2010/08/06

FUKUGAN GALLERY[大阪府]

フォトグラム技法で浮遊感漂う世界を描き出す三宅砂織。今年はVOCA賞を受賞し、その注目度は今や全国区だ。絵画とも写真ともつかない独特の画面は何度見ても不思議。少女たちが戯れる絵柄も手伝って、甘美な夢想空間へとわれわれを誘ってくれる。本展ではそれら作品だけでなく、制作に使用したフィルムなどのパーツを一部展示していたので驚いた。彼女の個展を何度か見たが、このような展示は初めて。次なる展開の兆しと言ったら大げさかもしれないが、三宅は何か新しいことを考えているのかもしれない。

2010/07/23(金)(小吹隆文)

川端嘉人 展

会期:2010/07/17~2010/08/07

CAS[大阪府]

展示室のドアを開けたとたん、頭のなかに「?」が点灯する。何もないのだ。しかし、いつもとは雰囲気が違う。改めて凝視すると、コンクリートブロックの壁が画廊壁面に沿うように作られていることが分かった。壁だと思い込んでいたものが美術作品だと了解した途端、急にミニマリズム彫刻に見えてくる。われながら現金なものだ。ざらりとした素材の質感やブロックのグリッドの連続が美しい。でも、休廊と勘違いして帰ってしまった観客も数名いたのだとか。その気持ちも分からないではない。

2010/07/23(金)(小吹隆文)

SickeTel キュピキュピと石橋義正

会期:2010/07/18~2010/11/03

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館[香川県]

奇抜なパフォーマンスや映像作品で知られるキュピキュピが久々に再始動。その主宰者で、現在はテレビ番組『オー!マイキー』で知られる石橋義正とのダブル個展の形式で展覧会が開催された。会場は前半がキュピキュピ、後半が石橋に二分されている。キュピキュピの作品は、ステージ状の空間で繰り広げられる映像インスタレーションと、新キャラ「シッケモニカ」のための空間で構成されていた。かつてのような弾けたナンセンスな笑いは抑えられており、ブルーを基調としたムーディーな、しかしどこか虚無をたたえた世界観が新鮮だった。後半の石橋サイドは、《ブラック・リナ》と《ホワイト・スネーク》の映像作品2本立てだった。フェロモン全開で意地悪そうな美女が思いのまま振る舞う《ブラック・リナ》は、まさに石橋作品に登場する女性の典型。一方、《ホワイト・スネーク》は主演女優の身のこなしが素晴らしく、蛇女の存在にリアリティを与えていた。美術館がある丸亀市は「瀬戸内国際芸術祭」が開催されている高松市から電車で約20分の距離。芸術祭に出かけたなら、面倒がらずにこちらにも足を延ばすべきであろう。

2010/07/20(火)(小吹隆文)

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