artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
英ゆう 個展「外を入れる。」/「森」
- 外を入れる。
- 会期:2010/05/25~2010/06/13
京都芸術センター大広間[京都府] - 森
- 会期:2010/06/02/~2010/06/26
イムラアートギャラリー[京都府]
2007年秋から2009年末までタイのシラパコーン大学でレジデンスを行なっていた英ゆうが、その成果を2会場で披露した。京都芸術センターは油彩画が中心で、タイの市街地で頻繁に見かける供花を描いた大作が多い。一方、イムラアートギャラリーは銅版画に比重が置かれており、植物や動物などをモチーフにした色鮮やかな作品が目を引いた。銅版画はこの度のレジデンスで習得したばかりなので、まとまった形でわれわれの眼に触れるのは今回が初めてだ。新たなアウトプットを手に入れた英が今後作風をどのように深化させていくのか、興味が募る。
2010/06/09(水)(小吹隆文)
町谷武士『庭の眺め・ともだち』展
会期:2010/06/08~2010/07/02
ギャラリーエフェメール[大阪府]
板にレリーフ状の彫りを入れて彩色した平面作品をつくっている町谷だが、今回はガラリと変わって人形を数十体も出品。平面作品の制作などで発生する木片を用いたもので、発表の予定もなくコツコツと制作してきたものだ。メキシコのカチーナ人形を思わせる異形がブサ可愛くて、一般受けはよさそう。雑貨屋に並べれば人気者になるかもしれない。アーティストのもうひとつの側面が見られてラッキーだった。
2010/06/08(火)(小吹隆文)
中居真理 展“Patterns”
会期:2010/06/05~2010/06/16
AD&A gallery[大阪府]
部屋の隅を撮った写真を組み合わせた作品と、横断歩道の縞模様を組み合わせた作品を出品。前者は1辺5センチほどのタイルに焼き付けられ、16ピース1組で構成されたものを、縦10段×横9列に並べるなどして展示された。後者は1辺約12、3センチのピースを1,000点以上用いて、帯状に画廊壁面を取り巻くよう展示された。幾何学的模様が抑揚なく繰り返される様子はミニマル音楽を連想させ、同時にオプアート的な錯視効果も取り入れられていて刺激的。各ピースが磁石で固定されているため、場の特性に応じて自由に姿を変えられるのも面白い。
2010/06/07(月)(小吹隆文)
白岡順 写真展 梅雨と白雨
会期:2010/06/01~2010/06/27
ブルームギャラリー[大阪府]
白岡といえば、暗いトーンで窓越しに外の風景を撮ったモノクロ写真が連想される。本展でもそうした作品が、一部に真反対の白いトーンの作品も含めながらずらりと30点も並んでいた。何よりも驚かされたのは出品作品の制作期間。1960年代後半から2000年代まで約40年間にわたっているではないか。それだけの長期間、作風にまったくブレがないとは驚くべきことだ。白岡の禁欲的な制作態度に改めて感じ入った。なお、本展の作品はすべてニュープリントである。それゆえ均質性が一層強調されたのかもしれないことを最後に付け加えておく。
2010/06/02(水)(小吹隆文)
黒河兼吉 陶磁器デザイン展
会期:2010/06/01~2010/06/13
アートライフみつはし[京都府]
シャープで洗練された造形性が際立つ陶芸展だった。作品は、花瓶、一輪挿し、ランプシェードなど。すべて型により制作されており、工芸品というよりはプロダクト・デザインと呼ぶべきエッジの効いた仕上がりだった。筆者が見る限り、陶芸家には手びねりの不規則な歪みや風合いを重視する人が多いようだ。そんななか、一貫して硬質な楷書の美を追求し続ける黒河の存在は貴重だと思う。
2010/06/01(火)(小吹隆文)