artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

カルロス・フラド写真展 Waves of Silence

会期:2010/07/24~2010/08/22

TANTO TEMPO[兵庫県]

メキシコ出身で現在は日本で活動する写真家の個展。主に明け方の海岸を長時間露光で撮影した作品は、鏡面のように固まった海の表情もあって、完全な静寂が支配する超自然的世界を描き出す。本展では雪山の情景など今まで見たことがないモチーフにも挑戦しており、作風の更なる広がりが感じられた。

2010/08/07(土)(小吹隆文)

上原徹 展 INERT MODULES

会期:2010/07/30~2010/08/11

AD&Aギャラリー[大阪府]

高層ビルの一部分を撮影し、幾何学的な図柄をミニマルアートのように仕上げた写真作品。単体ではなく、アンサンブルでインスタレーションを構築していた。作品の魅力は徹底したクールさ。同種のモチーフを用いる作家は他にもいるが、展示の美しさという点では私が見た過去の例より一段突き抜けていた。まだ発表経験が少ない作家だが、今後の活躍に期待したい。

2010/08/02(月)(小吹隆文)

尾畑涼子「祈りのかたちに似ている」

会期:2010/07/31~2010/08/12

ミリバールギャラリー[大阪府]

作者の祖母の故郷である和歌山の古座川町で撮影した写真作品。プリントの中でゆっくりと進む時間を感じながら、少年時代の夏休みを思い出した。行ったことがない土地なのに、なぜか懐かしい気持ちになるから不思議だ。展示は川面を意識したのか、大小の作品を底辺揃えで一直線に並べていた。また、床にも小品を並べており、視線を上下に動かしながらぐるりと展示室を回るのが楽しかった。

2010/08/02(月)(小吹隆文)

藤井裕史 展─Black Fossil─

会期:2010/07/27~2010/08/01

ギャラリーマロニエ[京都府]

若手染色家の初個展。天地約2.6メートル×幅約4.5メートルの大作2点と小品4点が出品された。まるで惑星の地表を捉えた天体写真のように複雑なテクスチャーを見せるグレーの部分と、地部分の漆黒から白へと抜けていくグラデーションの対比が美しい。黒一色でこれだけ豊かな世界を描き出したのは見事だ。最近見た若手染色家の中では断トツの出来栄えだった。

2010/07/27(火)(小吹隆文)

有毒女子

会期:2010/07/17~2010/08/08

MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w[京都府]

岡山愛美、小谷真輔、後藤真依、坂本優子、唐仁原希、羽根田愛生、福永晶子、藤場美穂によるグループ展。いずれも刺激的な展覧会タイトルに負けない個性豊かな作品だったが、唯一の男性作家である小谷真輔の作品に目を奪われたのは、やはり私が男だからか? また本展では、崔正成監督の映画『スタンドアップ! シスターズ』の上映も行なわれた。画廊で映画上映と美術展示を同時に行なうとは、なんて素敵なアイデア。オルタナティブスペースとしての画廊の可能性が感じられる良い試みだった。

2010/07/27(火)(小吹隆文)