artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
パラモデルの 世界はプラモデル
会期:2010/06/26~2010/08/01
西宮市大谷記念美術館[兵庫県]
パラモデルといえば玩具のプラレールを用いた無限増殖的なインスタレーションが思い浮かぶ。しかし、彼らは絵画、写真、映像、立体の小品など、さまざまなジャンルの作品を発表している。本展はそんな彼らのバリエーションを網羅的に示した点に意義がある。もちろんインスタレーションも実施されており、プラレールのほかパイプを用いた大作も見られた。ただ、彼ら自身が直接作業をする中小企業的な制作スタイルは、規模的にそろそろ限界ではないか。これ以上になるとゼネコンよろしく下請けを使いこなす方向に移行せざるをえないかもしれない。その意味でも、本展はパラモデルの重要な折り返し点と位置付けられる可能性がある。
2010/07/01(木)(小吹隆文)
松本央 個展 vol.1『無常の空間─108人の自画像─』
会期:2010/06/22~2010/07/15
BAMI gallery[京都府]
松本は自画像をテーマにしている若手画家だ。本展の出品作は大学の卒業制作展に出品した大作。108人の自分が京都・三十三間堂の千体千手観音立像と同じ並び方でずらりと描かれている。制作は1人ずつ順に完成させる方法がとられた。1日に1人ずつ完成させるとしても108日かかる計算だ。そのせいか、途中でやけに痩せた自画像があったりする。実際にその時期は痩せていたのか、延々と続く作業に根負けしたのかは定かではないが、そのブレがかえって人間臭さを醸し出しており、好感を持った。
2010/06/30(水)(小吹隆文)
Art Court Frontier 2010 ♯8
会期:2010/06/25~2010/07/24
ARTCOURT Gallery[大阪府]
アーティストやキュレーター、ジャーナリスト、コレクターらが推薦する若手作家たちを紹介するグループ展。回を重ねるごとに作品が多彩になっているが、今回はその傾向が一層顕著だった。養蜂業とアート制作を融合させた埋橋幸弘(今村源推薦)や、マンハッタンにあるロバート・インディアナの彫刻作品『LOVE』の隣でゲリラ的に「愛」一文字のバルーンを膨らませた佐川好弘(江上ゆか推薦)、日常のさまざまな断片を空間にコラージュしてプライベートと創作が融合した世界を作り上げる宮本博史(手塚さや香推薦)はその典型。もちろん、絵画や写真、立体作品などもあり、いずれもハイクオリティな作品だった。また、コミュニケーションを重視した作品が目立ったのも今回の特徴だ。
2010/06/25(金)(小吹隆文)
プレビュー:森村泰昌モリエンナーレ/まねぶ美術史
会期:2010/07/17~2010/09/05
高松市美術館[香川県]
20世紀の人物をテーマにした個展「なにものかへのレクイエム」が全国を巡回中の森村泰昌が、「瀬戸内国際芸術祭」で盛り上がっている(はずの)香川・高松で新たな個展を開催する。彼がデビューする以前に描いた秘蔵作品を紹介するもので、タイトルの一節「まねぶ」からもうかがえる通り、美術史上の巨匠を真似た作品が開陳されるのだ。作品は、高校生の頃に描いたカンディンスキー風の作品や、70年代のデューラー風、岡本太郎風の作品などレアものが中心。いわば一美術家の等身大の美術史であり、大々的に開催される国際美術展に対するささやかな抵抗と見ることもできるだろう。また、高松市美が所蔵する田中敦子作《電気服》にオマージュをささげた新作が披露されるのも見どころだ。
画像:《電気と熱を描く人(田中敦子と金山明のために)》2010年
2010/06/20(日)(小吹隆文)
プレビュー:北城貴子 展──Circulation of the light
会期:2010/07/10~2010/08/07
ギャラリーノマル[大阪府]
森の木立や水辺の情景などを移ろいゆく光の情景として捉えた北城貴子の作品。デビュー時には抽象度が高かった画風は徐々に具象へとシフトしているが、ギャラリーノマルでは約3年ぶりとなる今回の個展では光との一体感を強調した新たな画風が見られそう。写真のソラリゼーションを思わせる白く飛んだ部分が印象的な新作に注目してほしい。
2010/06/20(日)(小吹隆文)