artscapeレビュー
artscape編集部のレビュー/プレビュー
カタログ&ブックス│2016年10月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
小さなリズム:人類学者による「隈研吾」論
隈研吾の建築が生み出されるプロセスに、独創的・挑戦的な思想を感じ取ったフランス人の人類学者と日本人の写真家が、隈事務所の日常をつぶさに観察することによって描き出した型破りな「隈研吾」論。
夢みる人のクロスロード 芸術と記憶の場所
「あいちトリエンナーレ2016」公式コンセプトブック。いま・ここでアートを考える新しい視角を提示する。池澤夏樹、岡谷公二、関口涼子、今福龍太、ジョルジョ・アガンベン、ジョルジュ・ディディ=ユベルマンなど総勢18名の豪華執筆陣による越境の夢。
建築学生ワークショップ明日香村 2016
全国の大学生を中心とした、地域滞在型建築ワークショップの全記録。2016年度の開催地は、奈良県明日香村・キトラ古墳周辺地区。全国から集まった約50名の大学生が、国内外で活躍中の講師の指導のもと、ちいさな建築作品を具現化させる。各作品のコンセプトから総評までを、豊富な図版とともに収録。
村上隆のスーパーフラット・コレクション
横浜美術館にて開催された「村上隆のスーパーフラット・コレクション」展(2016)のカタログ。現代美術から陶芸、骨董に至るまで、展示された約1300点の村上隆氏のコレクション全作品、全作家の紹介のほか、デイヴィッド・ウォルシュ氏や広瀬一郎氏との対談を掲載。各分野の用語解説や詳細な年譜も収録。
2016/10/03(月)(artscape編集部)
カタログ&ブックス│2016年9月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
ポンピドゥー・センター傑作展─ピカソ、マティス、デュシャンからクリストまで─
東京都美術館での展覧会「ポンピドゥー・センター傑作展」の公式カタログ。パリのポンピドゥー・センターの作品のなかから、展覧会と同様に1906〜1977年の1年ごとに、ひとりの作家のひとつの作品を掲載。合計71作品でフランスの20世紀美術をタイムラインでたどりることができます。作家のポートレートと作家自身の言葉を見開きページで紹介し、個性豊かな巨匠たちの創造性が堪能できる構成となっています。
WASHI 紙のみぞ知る用と美
お椀も箪笥も着物も、みんな和紙でできていた!? 明治に入るまで和紙は、農閑期に庶民が漉く手軽な素材であり、様々に代用可能な優れた生活用材だった。漉き方や産地によって特長のある和紙に、揉む・張る・撚る・編むなどの多様な加工を加え、工芸品のような暮らしを彩る道具が作られてきた。
本書では、木、布、皮などに擬態した変幻自在な紙製品、約70点を「衣」「食」「住」「遊」の生活場面からカラー図版で紹介。和紙文化が栄えた江戸時代から昭和初期にかけ丹精を込めて生み出された逸品を披露する。巻頭では繊維の不思議を解き明かし、巻末で未来に繋がる和紙の素材力と魅力を語る。さまざまな造形を生んだ和紙の可能性をみつめた一冊。
どうぶつのことば──根源的暴力をこえて
昨年から今年にかけて神奈川県民ホールギャラリー、群馬県立美術館で個展「根源的暴力」を開催したアーティスト、鴻池朋子による、対話と書き下ろしを収録した書籍。2014年に日比谷で行われたシンポジウムの模様、鴻池と様々な分野の専門家との対話、鴻池自身による自然と人間の境界をめぐるエッセイから成る3章で構成され、個展に際して出版された作品集『根源的暴力』とは別の角度からアーティストを見つめることのできる一冊です。
建築家・坂本一成の世界
建築家・坂本一成の50年におよぶ仕事を網羅した作品集の決定版。
この作品集では、写真や図面などの豊富なヴィジュアル要素に加え、個々の建築に寄り添う細密な解説、そして様々な時代における坂本自身の言葉や他者の批評を断片として散りばめることで、坂本の建築の実像を浮かび上がらせようとしています。
坂本の建築は一つの視点の写真だけで表せるものではありません。
その建築のあらゆる部分は、他の部分、あるいは全体、さらには敷地を超えた世界と響きあうなかで成り立っています。
様々に異なる要素が多様な関係を持ちながら共存する、それこそが坂本一成の建築的世界だと言えるでしょう。
本書の構成は、そんな坂本の建築の在り方と呼応しています。
巻頭・巻末には、名作《House SA》《宇土市立網津小学校》の今の日常の姿をみずみずしく撮り下ろした写真を掲載。未完の作品も含む全作品歴、メディア掲載歴も完備した、坂本一成の建築を知るには必携の一冊です。
金子國義スタイルブック
2015年3月、画家・金子國義が逝去しました。この稀有な画家が残した名作の数々は、これからも時代を超えて愛され続けていくことでしょう。歌舞伎の舞台美術家のもとで修行し、日本の伝統芸能やその美意識を徹底的に学びながら、同時にヨーロッパの文化にも精通していた金子國義の作風は、唯一無二の魅力に溢れており、今後ますますグローバルな注目を集めるに違いありません。
金子作品の最大の魅力は、画家の存在そのものが作品世界に強く投影されていることです。「人生を謳歌しよう」「美しく生きよう」という姿勢に貫かれた哲学、いわば金子スクールの教えは、そのお弟子さんや私淑していたアーティストのなかで確実に引き継がれているのです。
本書では、金子國義がそうした人々に向けて実際に発した言葉やメッセージを、スタジオ・カネコ協力のもと、関係者への取材を通して集め、代表作とともに掲載します。その内容は、芸術に限ったものではありません。かつて日本の家庭でごく自然に教えられ、私たちが身につけていった「所作」「おもてなしの心」、そして「美しく生きるためのヒント」などが、金子國義ならではのセンスやユーモアに彩られた言葉として現れます。
國府理作品集 KOKUFUBOOK
國府理(こくふ・おさむ 1970-2014)は、乗り物の形態をモチーフに、実際に稼働させる動力と機能を備えた大型の立体作品を制作、発表。移動手段の実用枠を超えたユニークな乗り物を独自の設計思想と自らの手でつくり出し、機械・自然・人とが融合・対立・循環するメカニズムを考察し、それらを「もう一つの世界」として現実世界と相対させながら、人間と自然が共生していく「未来」を模索し続けた。本書は代表作約100点に、彼自身による「言葉」を添え、國府理の世界を一望する決定版作品集である。
2016/09/02(金)(artscape編集部)
カタログ&ブックス|2016年08月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
TOKYOインテリアツアー
東京のインテリアデザインと都市との関係をあきらかにする考現学的ガイドブック。
銀座、丸の内、原宿、中目黒など9つのエリアを対象に97のインテリアをイラストとテキストで紹介します。
本書に掲載されたショップやカフェ、ギャラリースペースなど、誰もが体感できるインテリアを眺めてみると、めまぐるしく変わるインテリアの集積として立ち上がる東京の姿が浮かび上がってくるでしょう。
これまで詳細なリサーチのなかったインテリアデザインを鑑賞・分析の対象として見せ、都市遊歩の魅力を刷新する1冊です。
トーキョーワンダーサイト アニュアル 2015
東京を拠点に、公募展、レジデンス事業、若手クリエーターの発掘事業などを手がけるトーキョーワンダーサイト。本書はその2015年度の活動記録集として出版された。1年間に行なわれた全事業の詳細や参加アーティストのプロフィール、公募展の審査員レビューのほか、ディン・Q・リーら6名のアーティストへのインタビューを収録。
インドネシア ファッション─海のシルクロードで花開いた民族服飾の世界─
2016年7月から翌月にかけて、日本・インドネシア共和国国交樹立60周年を記念し町田市立博物館で開催された「インドネシア ファッション─海のシルクロードで花開いた民族服飾の世界─」展の公式図録。インドネシア地域の研究者である戸津正勝氏が監修を行ない、氏が40年にわたって蒐集した服飾資料が展示された。本書には、出展された資料図版のほか、戸津氏による論考・解説が収録されている。
森村泰昌:自画像の美術史─「私」と「わたし」が出会うとき
2016年4月から6月にかけて、大阪・国立国際美術館で開催された「森村泰昌:自画像の美術史─「私」と「わたし」が出会うとき」展の公式図録。国際的に活躍する森村の地元である大阪の美術館では、初の大規模個展となった。森村の代表作である、自身が歴史上の有名人に扮するセルフ・ポートレイト作品、約100点にも及ぶカラー図版のほか、森村とドミニク・ゴンザレス=フォルステルと往復書簡を収録。
あゝ新宿─スペクタクルとしての都市
1960年代、新宿は明らかに若者文化の中心だった。紀伊國屋書店、アートシアター新宿文化、蝎座、新宿ピットイン、DIG、風月堂、花園神社、西口広場……。そこには土方巽、三島由紀夫、大島渚、唐十郎、寺山修司、横尾忠則、山下洋輔らさまざまな芸術文化の担い手たちや若者たちが集結し、猥雑でカオス的なエネルギーが渦を巻いていた。新宿という街自体がハプニングを呼び込む一つの劇場、一つのスペクタクル、あるいは一つの祝祭広場を志向していたのだ。では、現在の新宿はどうか。かつてのようなエネルギーに満ち溢れた新宿独自の文化は失われてしまったのだろうか。
写真やポスター、チラシなどの資料と当事者の証言で新宿の文化史を辿り直し、複数の論考によって新宿という街を検証する。そして磯崎新による幻の新都庁案で提示されていた祝祭広場の思想を手がかりに、祝祭都市新宿の未来像を構想したい。
30年30話 クリエイター30組の対話によるデザインの過去・現在・未来
日本で初めてのグラフィック・デザイン専門ギャラリーとして設立された「クリエイションギャラリーG8」。その創立30周年を記念して、2016年2月から翌月にかけて開催された「30年30話」展の公式図録。服部一成+菊地敦己、田中良治+千房けん輔(exonemo)など、ギャラリーと関係の深い30組のクリエイターたちクリエイターたちによるトークイベントが会期中に行なわれ、本書はその30組すべての模様が掲載。
2016/08/14(artscape編集部)
カタログ&ブックス|2016年07月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
循環する世界──山城知佳子の芸術
2014年11月1日に札幌で行なわれた山城知佳子の上映会、トークイヴェントの記録を目的として出版された。地元沖縄を拠点に映像作品を制作する山城の10年間にわたる活動を振り返り、トークイヴェントで語られた作家自身の作品解説のほか、浅沼敬子、髙橋瑞木、鈴木勝雄によるエッセイを収録。
U-35 展覧会 オペレーションブック:展覧会開催記念限定本
2016年10月に大阪・うめきたシップホールで開催される「Under 35 Architects exhibition 35歳以下の若手建築家7組による建築の展覧会2016」のカタログ。展覧会のメインとなる、公募によって選ばれた7組の若手建築家の出展情報・インタビューのほか、伊東豊雄・藤本荘介両氏の特別インタビューを収録。
ムンタダス展:アジアン・プロトコル
2016年3月から翌月にかけてアーツ千代田 3331で開催された「ムンタダス展 アジアン・プロトコル〜日本・中国・韓国の類似点、相違点、そして緊張〜」のカタログ。メディア・アートのパイオニアのひとりとして国際的に活躍するアントニ・ムンタダス、その彼の日本での20年ぶりの個展となった展覧会のインスタレーション・ビューをはじめ、1997年に行なわれたアーティストへのインタビューや、四方幸子、吉見俊哉、ジャック・スリユらのテキストを収録。
人工地獄──現代アートと観客の政治学
今日のアートにおいては、「参加」──すなわち社会的関与を重視したプラクティスが、非常に重要な位置を占めている。国内では芸術祭やアートプロジェクトが百花繚乱の様相を呈しているが、国際的にも社会的、政治的な側面を重視したプロジェクト型のアートがあらたな文脈を築きつつあり、その規模と影響力は、もはや現代アートのメインストリームを占めているといってよいだろう。特定の集団や地域と相互に歩み寄りながら行なわれるプロジェクトがある一方で、倫理を逸脱した(とみなされる)アートは、ときに衝突と論争を巻き起こしている。(…)
ビショップは、アートには社会から独立した役割があると確信するが、それはとりもなおさず芸術が倫理を重んじなくともよいという意味ではない。むしろ彼女は作者性と観客性、能動と受動、加害と被害──これらが本質として対立的にはとらえがたいものであることを強調し、複雑に転じていく位相をひもとくことで、より慎重かつ正確な理解を求めようとする。
「敵対」と「否定」に価値を見出しつつ、それらを多層的にとらえ直すビショップの鋭く豊かな思考は、「関係性の美学」以後のアートの構造を理解するうえで必ず踏まえるべきものといえるだろう。
現代建築家コンセプト・シリーズ22 島田陽|日常の設計の日常
72年生まれ、神戸を拠点にタトアーキテクツを主宰する島田陽が手掛けてきた住宅は、住む人やその周囲の人の認識を刺激し、新鮮な発見を促す多義性に満ちています。
シンプルな多様性、動的な抽象性、他律的な自律性、大きなディテール、新築の廃墟、家具の階段……。あれとこれがここで出会うと、豊かな変化をもった住居ができ、能動的で発見的な暮らしが営まれる契機となる。
本書は、島田の日記につづられたテキストや、海外クライアントからの声援もおりこみながら、ひとつの気づきが、別の場所にある小さな気づきと出会い、やがて住居設計のコンセプトが形をあらわす、島田の設計手法にせまります。バイリンガル。
2016/07/14(木)(artscape編集部)
カタログ&ブックス|2016年06月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
日本おとぼけ絵画史──たのしい日本美術
平等院鳳凰堂の阿弥陀如来坐像、運慶の仏像、尾形光琳の屏風──これら「見事な」造形作品とは対極に位置する「へそまがりな感性」に注目しながら日本美術を眺める。きれいなもの、立派なものだけではない、へんてこでややこしい感性から生み出されたもうひとつの日本の美術の数々を、「苦い」「素朴」「ヘタウマ」などのキーワードとともに紹介。いわゆる「日本らしい美術」のステレオタイプな見方をゆるくときほぐす。
エクソダス──アートとデザインをめぐる批評
現代アート/デザイン批評の分野で注目されてきた著者が、新聞・雑誌・展覧会カタログなどに寄せた文章を集成する批評集。現代美術、展覧会、デザインを論じるほか、マンガやアニメの批評も収録。
ルノワールの犬と猫 印象派の動物たち
ルノワールを中心に、同時代を生きた画家たちの作品を、そこに描かれる犬や猫などの動物に焦点をあてて紹介。19世紀フランスの多幸感に満ちたぬくもりを、小振りな1冊に凝縮。
「高齢社会における、人生のつくり方。」の本
LIFE IS CREATIVE展ドキュメントブック
2015年10月にデザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)で行なわれた「LIFE IS CREATIVE展」のドキュメントブック。高齢社会に対するクリエイティブなアプローチを探り、実践していく取り組みを報告。「身近な人が認知症になったらどうしますか?」「定年って必要ですか?」「シニアが恋しちゃだめですか?」など、18の問いかけから議論の手がかりを紐解いていく。また、「年をとったら、本を読もう。」をキャッチコピーにした「65歳からのブックリスト」35冊を選書コメント(一部)とともに紹介。
水屋・水塚─水防の知恵と住まい─
平野に聳え立つ孤高の雄姿。人の背を越す高さの盛り土や石垣を「水塚」、その上に建てられた蔵を「水屋」という。かつて頻繁に洪水に見舞われた地域には、そこに住む人々の知恵から生まれた水防建築がある。人、食物、大切な家財道具などを避難させ守ってきた。
日本大学理工学部畔柳研究室での約15年にも及ぶ調査研究を土台に、本書では、中部の木曽三川、関東の利根川や荒川、また四国の吉野川流域などの洪水多発地域に見られる身を守るための10種類の建築構造物類を、撮下し図版と代々受け継ぐ持ち主の声を織り込んだ文章で紹介する。人間サイズを超える堤防が造築される昨今、個人や小さな共同体でつくられた水防建築類の今日的意味合いを巻末の論考で語る。川とともにある暮らしにはその動きを柔軟に受け入れる文化があり、その姿は地域のプロフィールとなって美しく印象づける。
触発するミュージアム──文化的公共空間の新たな可能性を求めて
書名の「触発」とは、「外界の事物に接することで、驚きやワクワク感などの感情が喚起され、モチベーションが高まり、新しいアイデアやイメージが生成されるプロセス」のことである。では、ミュージアムにおける触発とは何か、触発するミュージアムにはどのような条件が関わっているのか、そしてどうやってそれを研究していけばよいのか──。本書はこうしたリサーチクエスチョンを設け、認知科学やデザイン学の視点からの理論的考察や、国内外のミュージアムの現状分析、ミュージアムでの教育普及活動での実践研究など通して「ミュージアムにおける触発」にアプローチする。
共にいることの可能性、その試み、その記録
──田中功起による、水戸芸術館での、ケーススタディとして
2016年2月から5月に水戸芸術館現代美術ギャラリーで行なわれた「田中功起 共にいることの可能性、その試み」展のカタログ。ワークショップから展示に至る、「共にいることの可能性、その試み」の軌跡のほか、ふたつの対談(田中功起×毛利喜孝、甲斐賢治×藤井光)および、キュレーターによるテキストを収録。
2016/06/14(火)(artscape編集部)