artscapeレビュー
artscape編集部のレビュー/プレビュー
カタログ&ブックス│2016年5月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
発酵の技法──世界の発酵食品と発酵文化の探求
本書は、ザワークラウト、ヨーグルト、ケフィア、ビール、納豆など、世界中で伝えられてきた発酵食品の製法を食材別に解説。大量生産された食品を食べるだけの消費者として飼いならされた私たちが、再び生産者になるためのガイドブック。
もとより人類はより大きな生命の網の中で共進化してきた存在だが、次第に自然界から遠ざかり、動物や植物、菌類、そして体内のバクテリアの認識を失い、それらと意識的に対話することがなくなってしまった──本書は目に見えるかたちでこれを意識すること(生命愛、biophilia)や、関係を涵養するための方法として「発酵」を位置付ける。私たちはバクテリアを自身の細胞の起源や、相利共生のパートナーとして認識するだけでなく、私たちの廃棄物を処理してくれる唯一の存在として、生物学的な将来の進路とみなさなくてはならないと著者は主張する。
明日に架ける橋──ggg展覧会ポスター1986-2016
2016年4月15日から5月28日までギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催された企画展「ggg30周年記念展 明日に架ける橋 gggポスター1986-2016の公式図録。同展で展示された1986年3月の第1回企画展「大橋正展」から、日比谷図書文化館で開催された特別展「祖父江慎+コズフィッシュ展」まで、360枚におよぶポスターを通して、ggg展覧会の軌跡を一望する。
YCAM GUIDBOOK 2016-2017
山口情報芸術センター[YCAM]の2016年度の事業をまとめたガイドブック。
YCAMの活動の特徴であるアーティストとのクリエイション、教育プログラム、地域開発の事業を紹介するほか、山口の観光地や宿泊、飲食店の情報を掲載。特集では俳優・染谷将太とメディアアーティスト・真鍋大度によるYCAMでの制作活動に関する対談や、2013年に『d design travel 山口』を上梓したD&DEPERTMANTのナガオカケンメイのインタビューを収録。
日産アートアワード2015:ファイナリスト7名による新作展
日産アートアワード2015の公式カタログ。国際審査員による総評のほか、候補者推薦委員の飯田志保子、原久子、ロジャー・マクドナルド、服部浩之、崔敬華、近藤健一による作品講評を収録。
芸術公社アニュアル 2015-2016
2015年1月に開催された設立シンポジウム以降、日本やアジア各地で、公演やシンポジウム、ワークショップ、レジデンス、ウェブ・プラットフォーム、リサーチなどを行なってきた芸術公社の公式アニュアル。本書は「芸術公社の個々のプロジェクトを横断的に記述し、芸術公社というコレクティブの総体を可視化する」ために編集されている。また、相馬千秋(芸術公社代表理事)とゴン・ジュジョン(台南芸術公社理事)が、東京と台湾の二つの芸術公社の発足から1年を振り返る対談や、ディレクター13名によるエッセイを収録。
2016/05/13(金)(artscape編集部)
カタログ&ブックス│2016年4月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
きのこ漫画名作選
「すべての"きのこ中毒者"へ」──飯沢耕太郎が編集する「きのこ漫画」アンソロジー。白土三平、つげ義春、松本零士、白川まり奈ら漫画家が描く「きのこモチーフ」作品を多数収録している。カバー前面に金箔を施した、初版限定3000部の特殊装幀本。
祖父江慎+コズフィッシュ
ブックデザイナー・祖父江慎の主立った仕事を「コミックス」「読み物」「ビジュアル」「コズフィッシュ以前」の4カテゴリーに分けて祖父江自らによる解説とともに一挙掲載。加えて本文フォーマットや造本の設定書なども多数収録、巻末にはコズフィッシュ以前から2016年現在までの全仕事を網羅したブックリストも併録。祖父江慎+コズフィッシュのすべてがわかる408ページです![出版社サイトより]
ながいながいみち
海の近くの黄色く輝く長い長い道に沿って、街を横切り、郊外を抜けて自転車が走る──。付属の切り取り式カードで道をたどって遊べる、爽快感が味わえる絵本。収納ポケット付き。[書籍紹介より]
観察する男──映画を一本撮るときに、監督が考えること
岡山県牛窓を舞台にした観察映画『牡蠣工場』(2016年2月公開)をつくる想田和弘監督の取材記録。映画の撮影後記ではなく、撮影・編集中のインタビューによって、「観察する男『想田和弘』」自身を観察する構成。インタビューのなかに記されている撮影中の逡巡や構想中のアイディアは、完成した映画を補完するものではなく、新たな観察映画を鑑賞するかのように想起される。
日常と不在を見つめて──ドキュメンタリー映画作家・佐藤真の哲学
90〜00年代、《日常》と《不在》にこだわり、潜む闇をじっくりとあぶり出したドキュメンタリー映画作家、佐藤真。公害問題と日常、障害とは、アートとは何か、グローバリゼーションに抗うこと、そして映像のもつ根源的な力とは──。(…)
佐藤が世を去って9年。その仕事に着目した一冊の書籍が誕生します。影響を受けた人からともに歩んできた人まで、佐藤真に惹きつけられた32人の書き下ろし原稿とインタビュー、そして佐藤真の単行本未収録原稿を含む傑作選を収録。映像作家であり、90年代後半の類稀な思想家とも言うべき佐藤真の哲学を掘り下げ、今を「批判的に」見つめ、私たちの確かな未来への足場を探ります。[出版社サイトより]
OS10──アートとメディア・テクノロジーの展望 ICCオープンスペース10年の記録2006-2015
NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]が、2015年度で10回目を迎えた「ICCオープン・スペース」を記念して制作した 記録集。メディア・アート作品や現代のメディア環境における多様な表現を取り上げて紹介する「ICCオープン・スペース」の10年間の記録と動向のドキュメント。巻末には藤幡正樹と久保田晃弘による対談とエルキ・フータモによる「オープン・スペース」評を収録。
AC217号
青森公立大学国際芸術センター青森(ACAC)が発行する定期刊行誌の17号(通巻18号)。主任技術員の椎啓による特集「AAICの展示の工夫」では、アーティスト・イン・レジデンスで滞在制作するアーティストの技術的サポートの事例を紹介する。それぞれの作品に合わせて考案・作製される器具や装置のほか、雪国ならではの運搬方法などを解説する。
2016/04/01(金)(artscape編集部)
カタログ&ブックス|2016年03月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
地域アート──美学/制度/日本
現在、日本のあちこちで「地域アート」が盛んです。
現代アートの最先端は、「地域アート」にあると断言することも可能です。
この本は、そこで作られている作品や起こっている現象について、真剣に考察することを目指した本です。第一線で活躍するアーティストや、学者、批評家の方々に参加していただき、現在の日本で隆盛している「地域アート」について、真剣に考察し、討議し、提案しようとするものです。[出版社サイトより]
米軍が見た東京1945 秋──終わりの風景、はじまりの風景
著者が冒頭で大島渚の言葉──「敗者は映像を持たない」──を引用するように、終戦前後の日本は日本人自身による写真記録が空白となる時代である。「都市の記憶における空白を埋める」ために編まれた本書は、米軍が1945年に撮影した170点以上の写真によって構成されている。巻末には本書に掲載されている米国立公文書館の所蔵写真ナンバーを収録。
これからの建築士──職能を拡げる17の取り組み
建築への信頼が問われる今、必要なのは100万人の「建築士」のバージョンアップだ。専門性を活かしながら、新たな領域と関係性をつくり出して活動する17者の取り組みを、本人たちが書き下ろした方法論と、核心を引き出すインタビューによって紹介。日本全国の建築士が今できる取り組みを見つけ、仕事の幅を拡げられる1冊。 [出版社サイトより]
LIXIL BOOKLET 文字の博覧会─旅して集めた“みんぱく”中西コレクション─展
2016年3月17日〜5月27日のあいだLIXILギャラリーで開催している「文字の博覧会─旅して集めた“みんぱく”中西コレクション─展」のブックレット。国立民族学博物館(通称“みんぱく”)に収められたた中西亮氏によるコレクションを中心に、世界のさまざまな文字の魅力を豊富な図版とともに紹介する。言語学者の西尾哲夫氏やアートディレクターの浅葉克己氏、グラフィックデザイナーの永原康史氏らのテキストを収録。
藤幡正樹 Anarchive No.6
アンヌ=マリー・デュゲ氏の企画出版シリーズ「Anarchive」による、メディア・アーティスト藤幡正樹氏の作品集。1970年代のアニメーション作品や、CG作品、コンピューターによる彫刻、1990年代以降のインタラクティブ作品、GPSを用いた大型プロジェクトなど、ほぼすべてを網羅。作品に関する論考や資料、作家自身による作品解説などを収録。本書は作家のレトロスペクティブであると当時にメディア・アート史のアーカイヴでもある。さらに、専用アプリ(iOSのみ)を用いて、過去のインスタレーションの3Dモデルを、AR(拡張現実)技術によって体験することができ、テクノロジーとアーカイヴをめぐるこうした試みは藤幡氏の最新作でもある。
リアス・アーク美術館常設展示図録──東日本大震災の記録と津波の災害史
リアス・アーク美術館は、震災発生直後から約2年のあいだ行なった震災被害記録、調査活動によって約30,000点の写真、被災物約250点を収集。これらの資料は、「東日本大震災をいかに表現するか、地域の未来の為にどう活かしていくか」をテーマとして編集され、2013年4月に常設展示として資料の一部が公開された。本書は被災現場写真108点、被災物61点、その他歴史資料等約30点の写真を掲載し、写真解説、キーワード等のテキストをすべて収録している。 また、同常設展を東京地区で初めて大規模に紹介する展示として、目黒区美術館で「気仙沼と、東日本大震災の記憶」展が3月21日まで開催している。
2016/03/14(月)(artscape編集部)
カタログ&ブックス|2016年02月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
シンギュラリティ──人工知能から超知能へ
イギリスの人工知能(AI)研究の第一人者によるAI入門書。本書では、「全脳エミュレーション」などの最先端のAI研究を手際よく解説し、さらにAIの政治・経済的インパクト、AIと意識の問題、そしてシンギュラリティ問題までを、さまざまな思考実験を通して考察する。はたしてシンギュラリティはやって来るのだろうか?
※ シンギュラリティ:人工知能が人間の知能を超える「特異点」のこと。[出版社サイトより]
ゴダール原論―映画・世界・ソニマージュ―
ゴダール渾身の3D長編『さらば、愛の言葉よ』に刺激され、再起動した批評時空間。その思考は過去の作品群へ飛び、芸術一般に拡張され、遂には世界認識をも揺さぶる。長編批評「ジャン=リュック・ゴダール、3、2、1、」のほか、監督独自の音響と映像の関係を論じた「彼のソニマージュ」、最後の言葉を探る「ONEn+」を収録。[出版社サイトより]
インフォグラフィックスの潮流 情報と図解の近代史
膨大なデータが行き交う現代において情報を視覚化して理解を促すインフォグラフィックはその重要性を増しつつあります。 本書はインフォグラフィックの歴史をマップ、統計、図解、関係、コードといった観点から探求し、インフォグラフィックを本質的に理解する視点を提示するとともに、今後の視覚情報のあり方を考える機会を提供します。図版資料も満載。[出版社サイトより]
ここに棲む──地域社会へのまなざし
2015年10月〜2016年1月、アーツ前橋で開催の企画展「ここに棲む──地域社会へのまなざし」のカタログ。家族や地域のあり方が大きな変換を迎えているいま、人々は物質的・経済的豊かさとは異なる価値観に目を向け始めている。14組の建築家とアーティストがこうした社会の変化を見つめ直し、作品を通して地域と私たちの結びつきについて考える。[出版社サイトより]
平成27年度[第19回]文化庁メディア芸術祭カタログ
文化庁メディア芸術祭公式カタログでは、87の国と地域から総数4,417作品の応募のうち、32の受賞作品と審査委員会推薦作品を掲載。また、4名の功労賞受賞者の紹介や、審査員による講評と鼎談などを収録。
2016/02/15(月)(artscape編集部)
カタログ&ブックス│2016年1月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
デザインの種
眼と手の感覚、紙が連れてくる風景、かたちへの意識、色に潜む政治性などめぐって浮かび上がる、デザインの過去・現在・未来。たがいの批評精神が触発しあい、15年にわたって持続した対話の集成。[出版社サイトより]
現代建築家コンセプト・シリーズ21 小嶋一浩+赤松佳珠子/CAt | 背後にあるもの 先にあるもの
小嶋一浩と赤松佳珠子(CAt)がこの10年の間に手がけてきた建築作品の考え方を12のキーワードに分解し、その「背後にあるもの 先にあるもの」を浮かび上がらせていきます。バイリンガル。[出版社サイトより]
世界のかわいいきのこデザイン
印刷物にみるキュートなきのこワールド! レトロな松茸狩り案内書から椎茸弁当の包み紙、切手、レターセットやポストカード、紙ナプキン…… きのこの見方がちょっと変わる!? 世界中で愛されている、ペーパー・マッシュルーム コレクション![出版社サイトより]
現代アートの本当の楽しみ方 表現の可能性を見つけにいこう
現代アートに関わる人々が、これから現代アートを学びたいと考えている方にもわかるようにやさしく、丁寧に答えていきます。しりあがり寿×日比野克彦、遠藤水城×五野井郁夫の対談を収録![出版社サイトより]
物を作って生きるには
本書は、物を作ることによって生活を立てているMakerによるエッセイおよびインタビュー集です。登場するMakerが作る物は、エレクトロニクスキット、家具、玩具、さらにハッカーのための共有スペースまで幅広く、その目的や規模もさまざまです。しかし、共通しているのは、自分に一番適したやり方を自分の頭で考え抜き、そのアイデアを実際に手を動かして実現していること。[出版社サイトより]
被爆70周年 ヒロシマを見つめる三部作 第3部 ふぞろいなハーモニー
2016年3月6日まで、広島市現代美術館で開催中の同展のカタログ。4人のキュレータの論考と作品解説を掲載。
写真の映像 写真をめぐる隠喩のアルバム
世界言語としての写真という記号をめぐる事典――黎明期からデジタルメディア時代まで、アルファベット順に55項目のキーワードで写真作品(ニエプス〜アーバス)を読み解く。数々の写真論(ベンヤミン〜クレーリー)の引証を交えつつ、〈映像=表象〉をめぐる隠喩の星座がもつ写真史的布置を浮かび上がらせる、光と影のアルバム。【芸術論叢書】第3回配本。[出版社サイトより]
薬草の博物誌―森野旧薬園と江戸の植物図譜―
本書は、この江戸時代に遡り、人々の薬草、植物に寄せる探究心や愛着を、それぞれ精緻な観察眼で描かれた様々な植物図譜と、江戸における植物相が今もそのまま残る日本最古の私設薬草園、森野旧薬園(奈良県宇陀市)とその創設者、森野賽郭が描いた1003種を収める「松山本草」をとおして色鮮やかに表現しようとするものである。[出版社サイトより]
『安楽島』、『休日映画 2009 - 2014』
2005年創設の映像レーベルSOL CHORDから発行されているDVDシリーズの第9、10弾。『安楽島』は崩壊した家族に他人が入ることで、関係を回復していく物語をシネマ・ヴェリテの手法で撮った作品。『休日映画』は2009年から2014年まで、休日に撮影した作家の家族の記録をその時々のマスメディアの報道を挿入しながら編集し、ネット上で公開してきた作品。
2016/01/14(artscape編集部)