artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
小津和紙
[東京都]
日本橋界隈でほかにも切子のお店が存在し、こちらは関東大震災後の建築らしい。また近くにカッコよく、美しい和紙のお店、小津和紙があって、3階には史料館も併設する。17世紀の創業らしく、街並みは全然変わったが、さすがにこのエリアは歴史がある。もともと伊勢松坂から江戸に来たようで、小津安二郎も松坂出身だったことを思い出す。
写真:上=江戸切子の店、下=小津和紙史料館
2017/04/19(月)(五十嵐太郎)
《GINZA SIX》
[東京都]
オープンしたばかりの《GINZA SIX》に寄る。ブランド店は複数階をもつ独立路面店舗のように組み込み、1階は街区に沿って中心軸に通りを貫通させる(駐車場引き込み兼ねる)。2階より上に吹抜け空間を設定し、草間彌生のアートを吊る。ほかに名和晃平ら。谷口吉生事務所が設計に関わり、繊細さと大胆さがある。ところで、建物の角に組み込まれたブランド店、FENDIは、店内の奥の奥のところに、さりげなくローマのEURにあるファシズム期の建築、文明宮殿の写真が展示されていた。なるほど、ローマを拠点とするブランドであり、この店舗の外観もイタリア文明宮殿の反復するアーチをイメージしたものだ。
2017/04/19(月)(五十嵐太郎)
「建築家・山田守の住宅」展─没後50周年・自邸公開─
[東京都]
本来はピロティだった場所に増設された下の喫茶店には入ったことはあるが、宙に浮きながら屈曲する2階の居住空間は初めて。通常の建築家は自邸→公共施設という仕事の展開だが、これは1959年の作品だから、大型建築→晩年の自邸という順番であり、小型の公共建築に和室を組み込んだようにも見える。
2017/04/19(月)(五十嵐太郎)
日本、家の列島 ─フランス人建築家が驚くニッポンの住宅デザイン─
会期:2017/04/08~2017/06/25
パナソニック 汐留ミュージアム[東京都]
フランス人の建築家の目から見た日本の住宅であり、すでにヨーロッパでは数カ所巡回しているもの。日本での展示用に新しくつくられた模型群、施主と建築家へのインタビュー、ジャーナリストが撮影した住人や街の人・風景が一緒に映る写真が充実している。オープニングのシンポジウムでは、前衛的なデザインの住宅でありながら、いまなお室内では靴をぬいで、床にべたっと座ったり、寝転ぶ日本人の伝統的な生活習慣が、実は西欧人にとってかなり驚きらしいことが判明した。確かに取材時に、そうした住民のポーズが多く撮影されている。
2017/04/08(土)(五十嵐太郎)
新宿区成立70周年記念協働企画展 新宿の高層ビル群ができるまで 塔の森クロニクル
会期:2017/03/05~2017/05/07
新宿歴史博物館[東京都]
文字どおり新宿高層ビル群の歴史的変遷を見せた展覧会。同館はこれまでも類似した企画展を催してきたが、今回は「視覚的・立体的に体感できる西新宿ビル群の年代記」をコンセプトに据えたうえで、中西元男らによる映像作品《西新宿定点撮影》(1969- )をはじめ、関連する地図、書籍、写真などの資料を展示した。
ただ今回の展示の中心は、なんといっても新宿駅構内の模型作品である。これは昭和女子大学環境デザイン学科田村研究室によって制作された縮尺1/100の模型。シナベニヤ板を加工した水平パーツと階段パーツを組み合わせた立体造形で、ちょうど腰のあたりまで吊り上げられて展示されているので、地上と地下を縦横無尽に入り乱れる複雑な構造が手に取るようにわかる。普段新宿駅を利用する人であっても、それがこれほど多層的に構成されていることに思いが及ぶことはなかなかない。私たちにとっての日常を相対化する装置として、この作品は大きな意味をもつ。
しかしその一方で痛感したのは、そのような複雑な構造の中を規則的に循環する私たち自身の儚さである。むろんこの模型には人間の形象が組み込まれていたわけではないし、ある種の記号として明記されていたわけでもない。だが、迷路のように複雑な構造体の中を、少なくとも1日340万人もの人間が利用しているという事実を踏まえると、そこには眼に見えない人間のイメージが立ち現われているようでならない。通勤ないしは通学のために利用している乗降客の大半は、決まりきったルートを日々移動しているはずだから、そのおびただしい人の流れはまるで臓器の中を循環する血流に近いのかもしれない。
人間が人間のためにつくり出したにもかかわらず、それが人間を支配するようになるという倒錯。「フランケンシュタイン」に典型的に描かれているような疎外論は、私たちの幸福を考えるうえで依然として有効なトピックである。その観点から現在の都市生活を根底から再考させるという点で、本展は意義深い。
2017/04/08(土)(福住廉)