artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
吉岡徳仁 スペクトル ─ プリズムから放たれる虹の光線
会期:2017/01/13~2017/03/26
資生堂ギャラリー[東京都]
同じ天高ながら大小の部屋が斜めに接続する個性的(?)な空間の特質を活かし、スペクトルの光によるインスタレーションを展開するなど、さすがの演出だった。過去作の映像も、余計な説明なしにヴィジュアルだけでほとんどわかる鮮やかなデザインが続く。ただ、一連の作品のなかで、ガラスの茶室だけはどうしてもキッチュに思え、茶室の本質と違うのではないか。
2017/03/13(月)(五十嵐太郎)
春日大社 千年の至宝
会期:2017/01/17~2017/03/12
東京国立博物館 平成館[東京都]
ここの建物はひどいけど、さすがに国立だけあって、展示はお金もかけたよい内容である。まだ数百年の歴史の審判を経てない現代アートにはこの重みは出せないし、こんなに多くの来場者を動員できないだろう。ただ、本殿を再現した建築は微妙にラインが違うためにヘンだった。これならば、抽象的なフレームで建築のヴォリュームだけ示し、壁画を入れたら、よかったのでは。
2017/03/12(日)(五十嵐太郎)
マルセル・ブロイヤーの家具 Improvement for good
会期:2017/03/03~2017/05/07
東京国立近代美術館[東京都]
歴史的に有名になった家具を取りあげた、渋い展覧会だ。ワシリーチェアをハイライトとしつつ、ほかの家具や建築デザイン、そして、ブロイヤーの事務所で働いた芦原義信との交流や、彼の日本滞在などを紹介する。それにしても、このスチールパイプを生かしたクラブチェアを23歳で考案していたとは驚きだ。時代のめぐりあわせかもしれないが、いまの大学院生くらいの年齢である。
2017/03/11(土)(五十嵐太郎)
佐藤充/一級建築士事務所 SATO+《三本木の家》
[宮城県]
審査の最終日は、まず、佐藤充による《三本木の家》へ。震災で母屋が倒壊し、農家の敷地内に施主の父がプレハブをカスタマイズして暮らした住処や、各地で採取してきた木々や砕石、土管が散らばる風景にいきなり驚かされた。個人的には、エンジンを抜いた自動車などが庭に放置された、《川合健二邸》を想起させる。建築家が試みたのは、多世帯家族が住むためにシンプルな三角屋根の家をつくること。秩序と混沌が衝突する家だ。
2017/03/05(月)(五十嵐太郎)
脇坂圭一/ヒュッゲ・デザイン・ラボ、静岡理工科大学《不均質な家~201号室リノベーション》
[宮城県]
多賀城に移動し、脇坂圭一による《不均質な家》へ。津波が近くまで押し寄せたマンションの201号室のリノベーションである。断熱を施し、廊下をなくし、収納を増やし、可動家具ユニットやさまざまな素材の実験を試みた自邸のプロジェクトだ。もっとも、脇坂は東海地方に就職したため、現在は資産価値を上げた物件を貸すか売るかを検討中らしい。
2017/03/05(月)(五十嵐太郎)