artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

1900年代美術館

[イタリア、ミラノ]

ドゥオモの横にある1900年代美術館へ。未来派、アルテ・ポーヴェラ、見晴らしがいい最上階のフォンタナを展示した空間など、充実したイタリアの近現代美術のコレクションを楽しめる。ただし、狭い空間のリノベーションのために、動線はかなりややこしい。なお、ムッソリーニの演説のためのバルコニーに続く外部階段もあり、ファシズム建築の雰囲気をもつ。隣接するパラッツォINAも同時代の古典テイストの建築である。

写真:上から、《1900年代美術館》、フォンタナを展示する最上階、《パラッツォINA》

2016/09/08(木)(五十嵐太郎)

古都祝奈良─時空を超えたアートの祭典─(ならまちアートプロジェクト)

会期:2016/09/03~2016/10/23

ならまち[奈良県]

一泊して「ならまちアートプロジェクト」を見て回る。「八社寺アートプロジェクト」がエスタブリッシュされたアーティストによるものだとすれば、昔ながらの町家が残る「ならまち」を舞台にしたこちらは、おもに奈良や京都出身の7人の若手アーティストを特集した展示。前者とは場所も予算の掛け方も違うが、そんななかでも注目したのは西尾美也と宮永愛子のふたり。西尾はならまちの住人から古着を集め、矩形に裁断してつなぎ合わせ、パッチワークの家をつくって集会場にした。外したボタンは糸でつないで神社に展示。これはプロセスもさることながら、視覚的に美しい。宮永は古い木造の染物屋倉庫で、地面に染み込んだ染料を布に写し取り天井に張ってみせた。着眼点もインスタレーションも見事だが、残念なのは地面に置かれた台車や樽の跡を白く残していること。地面に置かれた物と天井に張られた布が天地対称になってわかりやすいのだが、実際に写し取ればこうはならないので、トリックに見えてしまう。惜しい。


西尾美也《人間の家》(撮影=筆者)

2016/09/04(日)(村田真)

建築学生ワークショップ明日香村2016 公開プレゼンテーション

会期:2016/09/04

キトラ古墳壁画体験館 四神の館[奈良県]

キトラ古墳壁画が公開間近の関連施設において、建築学生ワークショップ明日香村2016の最終プレゼンテーションに審査員として参加する。構造デザインや素材の批評もふんだんに織り込まれ、施工・制作のセコンド、サポーターもつく、実物をつくるこのワークショップは本当に面白い。中間講評では、抽象的であっても、学生は必ずやモノと向きあい、建築的なかたちをつくらねばならない。なお、最終結果は平均的というか妥当なラインで、ほぼ予想どおりになった。チームワークもよく、竹のしなやかで強い性質を生かした螺旋状のかたちの、もっとも美しい2班が最優秀賞である。そして中間発表の案どおりに、ひもで繋いだ木の集合を堅実に成立させた8班が優秀賞になり、提示した風のイメージを真面目に検討した7班が特別賞だった。ただし、個人的にもっとも印象に残ったのは、審査の直前に強風で倒壊してしまった1班の作品である。ほかの案がリスクをとらない方向になったのに対し、ぎりぎりの構造に挑戦し、一番高い構築物になっていた。なので、持ち点100は、あえて1班に85点、2班に10点、8班に5点と、かなり差をつけて投票した。

写真:上から、最優秀賞の2班、優秀賞の8班、1班

2016/09/04(日)(五十嵐太郎)

古都祝奈良─時空を超えたアートの祭典─(八社寺アートプロジェクト)

会期:2016/09/03~2016/10/23

東大寺+春日大社+興福寺+元興寺+大安寺+薬師寺+唐招提寺+西大寺[奈良県]

奈良市内の名だたる寺社に、アジアのアーティストがインスタレーションを展開するというので見に行った。当初これも2、3年に1度の芸術祭かと思っていたが、これは日中韓が進める東アジア文化都市の文化交流プロジェクトのひとつで、今年の開催都市・奈良市が繰り広げる1回限りの「時空を超えたアートの祭典」なのだ。アドバイザーを務めた北川フラム氏は、日中韓をはじめインド、イラン、シリア、トルコまで広くアジア圏のアーティストを集め、8つの寺社に作品を絡めている。最初に行ったのが、開会式の行なわれた大安寺。その塔跡隣地に川俣正が高さ20メートルを超す《足場の塔》を建てた。これは遠くからでも見え(そもそも奈良には高い建物が少ないので見晴らしがいい)、よく目立つ。しかしこのモニュメンタリティは川俣らしくないなあと思ったが、おおまかな骨組みはすでにつくられており、川俣はその周囲に足場を組むだけだったという。なるほど、本体のない足場だけの塔。やっぱり川俣らしい。
中国の蔡國強は先行して3月から木造船を制作、遣唐使船を思わせるこの船は、東アジア文化交流のシンボルとして東大寺の鏡池に浮かんでいる。韓国のキムスージャは元興寺の石舞台に鏡を張り、その上に漆黒に塗った楕円形のオブジェを立てた。おそらくブラックホールのような異次元への穴を想定したのだろうが、完璧な黒が得られず半端感は否めない。これを見て思い出したのがインド出身のアニッシュ・カプーア。彼はそれこそ完璧な黒い穴の作品で知られるが、光の99パーセント以上を吸収する黒い顔料のアートにおける独占使用権を買い取った、というニュースを聞いたことがあるからだ。キムスージャはこれを使いたかったに違いない。ちなみにカプーアは今回出ておらず、インドからは若手のシルパ・グプタが参加。カプーアはギャラが高いので声もかけなかったそうだ。そのグプタは薬師寺の広場に、頭部が家や雲のかたちをした輪郭だけの人間像を設置。これは記憶や思考を可視化した彫刻と捉えることもできるが、彼女の過去の作品や薬師寺の建築群の圧倒的な存在感に比べればものたりない。しかしそれを言い出せばきりがない。そもそも寺社に絡むといっても核心部に触れるものは少なく、裏の池とか境内の外とかちょっと外れた場所が多いのも事実。とはいえ20~30年前に比べれば、現代美術がよくぞここまで踏み込んだものだと感心する。


左=川俣正《足場の塔》
右=キムスージャ《演繹的なもの》
(いずれも撮影=筆者)

2016/09/03(土)(村田真)

AnS Studio ロボット研究ラボ見学

[静岡県]

浜松の機械工場にて、アンズスタジオによるロボティックスの技術開発を見学する。中国で同様のプロジェクトを以前見せてもらったとき、モノのスケールが小さく、建築未満の状態だったが、ここでは建材サイズに到達し、新しい建築の可能性を感じさせる。

2016/08/29(月)(五十嵐太郎)