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建築に関するレビュー/プレビュー

ブオナロッティ邸美術館

[イタリア、フィレンツェ]

初のブオナロッティ邸美術館。ミケランジェロ所縁の建物で、彼のスケッチを数多く所蔵し、日本の巡回展でも多く出品してもらった施設だ。サン・ロレンツォ教会の未完となったファサードのミケランジェロ案の巨大な木造模型もある。それにしても、当時のコンペ模型もそうだが、こうした木の模型は500年ちゃんと残るからたいしたものだ。

2016/09/15(木)(五十嵐太郎)

サン・ロレンツォ教会、旧聖具室

[イタリア、フィレンツェ]

サン・ロレンツォ教会とその旧聖具室へ。いずれもブルネレスキの設計である。古典主義を高度に複雑化させたミケランジェロに対し、明快で幾何学的なルールによって透明な空間をつくろうとしたことがよくわかる建築だ。特に旧聖具室と新聖具室の比較は、同じ形式をもちながら、細部が大きく異なっており、ルネサンスがいかに変容したかを理解するのに絶好のサンプルである。

写真:左・右下=旧聖具室 右上=《サン・ロレンツォ教会》

2016/09/15(木)(五十嵐太郎)

ラウレンツィアーナ図書館

[イタリア、フィレンツェ]

今年日本で巡回しているミケランジェロ展の模型制作に関わったこともあり、ラウレンツィアーナ図書館へ。1.5時間滞在することで陽の変化による明るい状態にも遭遇し、初めて気づくディテールの面白さが満載だった。これも単眼鏡を使うと、肉眼ではとうていわからない、驚くべき解像度とシャープさが浮かびあがる。翌日もラウレンツィアーナ図書館を再訪したが、そのときは2時間、2日で合計3時間半いても全然飽きない。ミケランジェロはこの作品で、それまでの古典主義を卓越した知性と感性でひっくり返し、これ以降も、そして今後も世界中でつくられる古典主義とその亜流が超えられないレベルに到達した。怪物的な建築である。

写真:左・右上=《ラウレンツィアーナ図書館》 右下=閲覧室

2016/09/15(木)(五十嵐太郎)

ウフィツィ美術館

[イタリア、フィレンツェ]

20年ぶりくらいのウフィツィ美術館へ。ポンテ・ヴェッキオとシニョリーア広場をつなぐ都市のスケール感をもった建築だ。ここにもスカルパが展示空間をつくった部屋がある。ルネサンス絵画のきれいな色使いに感心する。日本の美術館とは違い、イタリアはどこでもフラッシュさえ使わなければ、何でも撮影OKなのが嬉しい。ドゥオモの周辺は入場の行列がすさまじく、以前より確実に観光客が増えている。フィレンツェの市長が数年前から自動車の進入を禁止とし、人の空間に生まれ変わったが。日本の政治家とメディアも既存のプロジェクトの不安を煽ることで支持率と視聴率を稼ぐのではなく、もっと建設的なことを考えるとよいのだが。

写真:左=《ウフィツィ美術館》 右=上から、《ポンテ・ヴェッキオ》《ドゥオモ》

2016/09/15(木)(五十嵐太郎)

フィレンツェ

[イタリア、フィレンツェ]

ヴェネツィアからフィレンツェへ。『磯崎新の建築談義』のインタビュー収録の前に訪れて以来なので、15年ぶりくらいだ。磯崎新のウフィツィ美術館のプロジェクトも止まったように、なかなか新しい建築が登場しない街なので、必然的に古典再訪となる。ミケランジェロによるサン・ロレンツォの新聖具室は、小さな空間だが、1時間以上滞在した。学部生時代の初訪問では『西洋建築史図集』の解説を確認するように見て、院生になってからはマニエリスムの構成の面白さを自分で理解するようになり、毎度新発見がある。今回は単眼鏡で観察したおかげで、細部までくっきりとわかるが、これは他の古典主義に比べて、異様に線が細く、精密なインテリア・デザインだ。

写真:新聖具室

2016/09/14(水)(五十嵐太郎)