artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

九段会館

[東京都]

九段会館の建替え検討をどう思うかについて、NHKから取材を受ける。必ずしも好きな建築ではないが、残り少ない1930年代の時代精神を表わす気合を入れた東京の近代建築であるし、屋根がキャラをもった帝冠様式の重要な事例だから、負の記憶も含めて、なるべく保存する道を探してほしい。流行りのガラス張り商業施設+外壁一部保存を九段でやっても仕方ないだろう。保守は「伝統」が大事なのではと思うのだが、どうもそう考えられてはいないらしい。

2016/05/25(水)(五十嵐太郎)

《枚方 T-SITE》

[大阪府]

大阪へ移動し、《枚方 T-SITE》を見学する。駅前の巨大なガラス建築は、宙に張り出した吹抜けデッキのヴォリュームが目立つ。ツタヤにスタバもあって、現代における鉄板のプログラムだろう。卒計とかに出てきそうというか、これに似たものが今後多く出そう。竹中工務店によるソツがない商業施設である。次に枚方駅近くの関西医科大と病院も見たが、これは町のスケール感と断絶するような巨大建築だった。

写真:上から2つ《枚方T─SITE5》、関西医科大

2016/05/23(月)(五十嵐太郎)

《高知市文化プラザかるぽーと》ほか

[高知県]

竣工:2001年

これはデカイ円筒の建築である。このサイズなら都市デザインに連動してほしいが、残念ながら、そうした文脈はない。《高知よさこい情報交流館》、魚の棚商店街など見つつ、高知城下の文学館・図書館へ。両方とも外観は石垣風であり、独特の存在感だった。その後に《寺田寅彦記念館》を訪れる。かつて彼が暮らしていた家の復元だが、清々しい。県庁舎はモダン建築である。

写真:左=上から2つ《高知市文化プラザかるぽーと》、文学館 右=上から、文学館、図書館、寺田寅彦記念、県庁舎

2016/05/22(日)(五十嵐太郎)

内藤廣《高知県立牧野富太郎記念館》

[高知県]

竣工:1999年

竹林寺の隣がちょうど植物園なので、内藤廣が設計した《牧野富太郎記念館》を再訪する。時間が経っても全然劣化を感じさせない名建築である。傾斜地と高さを変えながら曲線を描く屋根のあいだに生まれる空間。ただし、1957年没の牧野博士の作業場再現の展示は、新聞の山をみると1990年代が置いてあって、なんだかツメが甘い。

2016/05/22(日)(五十嵐太郎)

竹林寺納骨堂

[高知県]

竣工:2013年

今年、日本建築学会賞(作品)を受賞した堀部安嗣による竹林寺納骨堂へ。傾斜をのぼって、最初はびっくりするほど低い建物がまず見える。そして入口の庇にたどり着き、やっと少し高くなる。直方体のコンクリートのヴォリュームに入ると、垂直に伸びる通路の奥から水の音が誘う。古建築や樹木に囲まれた絶好の環境にぴったりとはめ込まれた幾何学と細部である。

写真:右上=竹林寺 ほか=竹林寺納骨堂

2016/05/22(日)(五十嵐太郎)