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建築に関するレビュー/プレビュー

《南京博物院》

南京博物院[中国、南京]

学芸員に《南京博物院》を案内していただく。コンペを行なったものの、審査側の梁思成が設計に深く関与し、遼の時代様式を採用したという。なるほど、梁が両サイドで上に曲がっていく、独特のカーブだ。その後、周辺環境の変化に合わせ、建物の高さを上げている。さすがに歴史の展示が充実していた。また地下にデジタル・コーナーや中華民国ノスタルジーを演出するテーマパーク的なエリアも新設し、昔の町並みが再現されている。夕方、大砲など兵器の歴史が陳列された見晴らしのいい城壁の上を歩く。最後に東南大学を訪問し、ここで3.11以降の日本建築の動向についてレクチャーと質疑応答を行なう。

写真:左、右上=《南京博物院》 右下=《東南大学》

2016/04/10(日)(五十嵐太郎)

南京

[中国、南京]

都市をまわると、昔の城壁がよく残っており、さすがに歴史のある古都だと感じさせる。また、近代における国民政府の時代をしのばせる建築や太平天国ゆかりの場所も少なくない。昼は市内の巨大再開発によるショッピングモールにおいて、人気の美味しい地元料理を味わう。ここは地上部分に古い映画館の外装のみ保存されていた。その後、中山陵に向かい、大階段をひたすら登る。南京駅と同様、巨大なスケールに中国らしさを感じる。

写真:左上4枚=城壁、左下=《総統府》 右上=ショッピングモール、右中2枚=《中山陵》、右下2枚=《南京南駅》

2016/04/10(日)(五十嵐太郎)

《望京SOHO》

[中国、北京]

竣工:2014年

前回訪れたときは建設中だったザハ・ハディドの《望京SOHO》を見学する。同じ北京にある《銀河SOHO》と比べると、内部空間はやや弱いが、逆に外構のランドスケープはなかなかいい。4月の北京は天候もよく、ザハ的なうねる人工地形のなかで人々がくつろいでいた。今後、北京ではザハによる巨大ヒトデのような空港も建設が予定されているように、彼女を追い出した東京とは違い、この都市は完全に受け入れている。

2016/04/09(土)(五十嵐太郎)

天安門広場

[中国、北京]

北京の訪問はもう5、6回目になるが、今回はこれまでゆっくりまわっていなかった天安門広場をちゃんと歩く。昨年、建築や美術と絡めながら、刺激的な天安門広場論を展開したウー・ホンの著作『北京をつくりなおす』を読んだことも、その理由である。確かに世界でもこうした空間は意外になく、面白い政治的な場所である。そして行列をつくって見学する毛主席紀念堂や、OMAほかも参加した国際コンペを経て、増築した巨大な国家博物館も見学したが、なるほど国民に見てほしい両施設は入場無料になっている。

写真:左上から、《天安門広場》、《毛主席紀念堂》、《国家博物館》外観 右上から、《国家博物館》内観、展示空間、増築前の図面、増築後の模型(中庭部分が展示空間になっている)

2016/04/09(土)(五十嵐太郎)

EL croquis Lecture

会期:2016/04/08

フェニックス国際メディアセンター[中国、北京]

北京のフェニックス国際メディアセンターにおいて、石上純也の講演+筆者の石上論+中国の若手建築家との対話イベントが開催された。会場には400人近い観衆が集まったが、さらに全国80カ所を同時中継でつなぎ、ネットでも配信し、1万人以上が視聴したという。これは『エル・クロッキー』の石上特集の中国版の刊行に合わせたもので、サイン会で長い行列が生まれた。現地では若きイケメン天才建築家として大ブレイクの雰囲気だった。ちなみに、会場となった建築は、香港系のテレビ会社のための、巨大なガラス建築である。アニッシュ・カプーアのようなねじれた彫刻的な造形をもち、その内部にうねるスロープや地形のような大階段が続く、強烈なアイコン建築だった。2013年に竣工したもので、設計はBIAD UFo建築工作室である。

2016/04/08(金)(五十嵐太郎)