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建築に関するレビュー/プレビュー

首里城、八汐荘

[沖縄県]

船で那覇港に着き、久しぶりに首里城を訪れた。世界遺産の効果、あるいは外国人観光客の増加のせいか、以前よりも来場者だけでなく、復元されたエリアも増えた。そして周囲も赤瓦の建築が目立つようになり、首里城化している。続いて、国際通り近くの八汐荘へ。アトリエ門口がコンペに勝ち、設計したものである。このプロジェクトでは、元妹島事務所の細矢仁と組んでおり、彼がフナキサチコと手がけた沖縄小児保健センターのうねる曲線スラブとガラスを拡大したような建築だった。

写真:左=上から2つ《首里城》、《八汐荘》 右=上から、《首里城》、下2つ《八汐荘》

2016/05/03(火)(五十嵐太郎)

中正公園ほか

[台湾、基隆]

台湾の基隆へ。港町を見下ろす中正公園は、日本が支配していた時代の神社跡であり、入口の大きな鳥居は中華風のデザインに改造されていた。街中には近代建築もちらほら残る。仁愛市場は、筆者が20年前に台中の市場で目撃した混沌の記憶を蘇らせたが、21世紀にまだこうした場所が残っていることに驚かされた。なお、海辺はデッキの空間を工事中、駅では「かわいい基隆」の観光キャンペーンを展開しており、村上隆+奈良美智風の現代アートによって、ファサードやインテリアが覆われていた。

写真:左=上から、《中正公園》、元鳥居、仁愛市場 右=上から、《基隆駅》《尊済宮》《基隆市史蹟館》

2016/05/02(月)(五十嵐太郎)

《ほうとう不動》

[山梨県]

竣工:2009年

保坂猛が設計した《ほうとう不動》を見学し、食事をする。観光地において富士山を背景に柔らかい曲線の形態がアイコンとして機能している。高速から旧藤野町を通ると、山に白い封筒を模した巨大な《緑のラブレター》が見えるのだが、これはひどい。景観破壊と言えるレベルの現代アートはさすがに勘弁してほしい。

写真:左、右下=《ほうとう不動》 右上=「緑のラブレター」

2016/04/23(土)(五十嵐太郎)

《山梨文化会館》《山梨県立図書館》

[山梨県]

竣工:1966年

丹下健三の《山梨文化会館》を再訪した。いま見ても力強く、かたちの意志を感じさせる建築である。D&DEPARTMENTが入っていた。その向かいに新しく登場した《山梨県立図書館》が、久米設計ぽいなあと思って、調べたらどんぴしゃりだった。明るく透明で、開かれた公共施設の現代的なテイストを凝縮した空間である。

写真:左上=《山梨文化会館》 左下、右=《山梨県立図書館》

2016/04/23(土)(五十嵐太郎)

《山梨県立美術館》《山梨県立文学館》

[山梨県]

前川國男による山梨県立美術館は、同じ頃に手がけた宮城県美術館と似て、浅いヴォールトを反復し、吹抜けでL字に階段を登る。その向かいにある山梨県立文学館は、大宇根建築設計事務所が手がけ、1989年に竣工した。師匠の前川のヴォールトや外壁のテクスチャーを意識しつつ、装飾的な要素や大空間が特徴的である。確かに、いまとは違い、公共施設にお金が使えて、ポストモダンが流行した時代の息吹が刻み込まれた建築だ。

写真:左=《山梨県立美術館》 右=《山梨県立文学館》

2016/04/23(土)(五十嵐太郎)