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建築に関するレビュー/プレビュー

人民大会堂

[中国、北京]

2週続けて天安門広場を訪問した。今回は人民大会堂の内部に初めて入る。ファサードの巨大なオーダーはエジプト風にも見える。ともあれ、これもデカイ。テレビでよく見る議事堂を確認し、とんでもなく広い宴会場に驚く。また、中国の各行政区域に割り当てられた部屋が随所に散りばめられ、大階段の吹抜けを挟んで、紫禁城を見下ろす北京と現代都市の絵が飾られた上海の部屋が向き合う。

写真:左上から、《人民大会堂》、万人大礼堂、中央ホール、宴会場 右上から、北京の部屋、大階段、上海の部屋

2016/04/17(日)(五十嵐太郎)

《国家大劇院》

[中国、北京]

竣工:2007年

ポール・アンドリューが設計した《国家大劇院》へ。水盤に囲まれた巨大な楕円ドームに地下から入り、その中心にオペラの大ホール、両側にコンサートと劇場を配置する。さらに小劇場も付す。特に感心したのは、ここで開催されたオペラの舞台美術と、中国劇場史の建築模型群の充実した常設展示があること。通常、ホールはイベントをやって終わりなので、意外にほかで見ないアーカイブ型のコンテンツだろう。なお、図書資料室も付いていた。

写真:左上から、《国家大劇院》外観、内観 右上から、オペラ舞台美術の展示、劇場史の建築模型群、オペラ舞台の模型

2016/04/17(日)(五十嵐太郎)

「建築と音楽」展 シンポジウム

会期:2016/04/16

清華大学[中国、北京]

「建築と音楽」のシンポジウム@北京・清華大学に登壇した。同大に拠点を置く雑誌『世界建築』の2月号の特集テーマに合わせた企画である。以前は『建築文化』『SD』『10+1』などの雑誌が特集主義で刊行されていたが、最近日本の建築メディアは単なる作品紹介ばかりで、こうした切り口が激減したなと痛感する。シンポジウムの後、編集者に案内してもらいながら、清華大学のキャンパスを散策する。三度目の訪問だが、周辺部の官舎、ゲストの宿泊施設のほか、大学名の由来となる場所、江南風の庭園、いわゆる西洋風の大学を思わせる一角、牡丹園など、実に広大である。多くの観光客や市民もキャンパスの自然を楽しんでいたのが印象的だった。
シンポジウムの後、清華大学近くの書店に立ち寄る。翻訳された筆者の本も置いてあったが、海外の翻訳書が全ジャンルにわたって、よく揃っていることに感心した。しかも値段が安い。日本だと新書や文庫は安いが、ハードカバー、専門書、翻訳書になると、結構高い。しかし、日本語訳なら2,000円以上はするローラン・ビネやミラン・クンデラの本でさえも、中国語訳だと、現地のコンビニでちょっと食べ物や飲み物を買い物するより安い。これなら学生も気兼ねなく本を購入できるだろう。

写真:左上3枚=《清華大学》、左下=宿舎 右上=マリオボッタによる美術館、右下2枚=《清華園》

2016/04/16(土)(五十嵐太郎)

「建築と音楽」展

会期:2016/03/18~2016/04/28

北京建築大学 ADA画廊[中国、北京]

街中の北京建築大学へ。キャンパスにあるADA画廊の「建築と音楽」展を鑑賞した。王昀がさまざまな図形楽譜をもとに建築化を試みる模型を展示している。いずれも屋根がなく、かつての使い方を想像させる遺跡のようだった。なお、ここでは同大学の批評家・キュレーターの方振寧が関与し、過去にル・コルビュジエ、中国とフルクサス、マレーヴィチ展などを開催しており、こういう施設が大学にあるのは羨ましい。
王昀の研究室では、最近の仕事として蘇州古典園林庭園を抽象化し、現代建築的な構成に変容させる試み、世界の集落配置図を抽象絵画のように描く絵画シリーズなどを見せてもらう。いずれも何々と建築をつなぐ精力的な活動である。

写真:左上から、《北京建築大学》、「建築と音楽」展、図形楽譜の建築化 右上から、ADAギャラリー、王氏の研究室、蘇州庭園の抽象化、図形楽譜の建築化

2016/04/15(金)(五十嵐太郎)

《北京建築大学 新キャンパス》

[中国]

2週連続の中国出張となったが、再び北京に到着し、郊外の北京建築大学の新キャンパスに直行する。王昀が実現した1/1の模型としての長さ48mのパヴィリオンを見学した。エリック・サティの楽譜の一部を切り取り、そのまま図面化したものである。現場を体験すると、音が大きく反響する興味深い空間が生まれていた。ガラスはなく、躯体だけ完成しており、これから、あるいはかつて家だったような建築の祖型になっている。

2016/04/15(金)(五十嵐太郎)