artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

Tanah Teduh

[インドネシア、ジャカルタ]

昼食後にTANA TEDUHを見学する。2012年にオープンした2haに及ぶ、ゲーテッド・コミュニティ的な高級住宅地の開発であり、10名の建築家が20棟のモダン住宅を設計している。緑豊かな自然の環境において、それらと交感する空間の数々に魅了される。暖かい気候ゆえに、壁で完全に密閉せず、リテラルに外部であり内部である領域を効果的に組み込む。気密性が騒がれる日本では許されない、おおらかなディテールだろう。

2016/03/27(日)(五十嵐太郎)

海洋博物館(旧東インド会社スパイス倉庫)、インドネシア銀行博物館(旧中央銀行)ほか

[インドネシア、ジャカルタ]

2日目の朝は、再びコタ地区から街をまわる。昨日の人出が嘘のようだ。まず再開発で移動させられる予定の木造の大型船が並ぶ船着場を見学し、続いて18世紀の倉庫を転用した海洋博物館を訪れる。船の模型をただ並べた素っ気ないミュージアムだが、瓦の隙間から光が漏れる、何も置いてないないロフト空間がカッコいい。旧中央銀行のインドネシア銀行博物館は、お金があった時代の贅沢な建築を現在にまで保存している。全周にバルコニーを張りめぐらす、熱帯ならではの工夫だ。そして食材で溢れかえったチャイナタウンを歩く。

写真:左=上から、船着場、海洋博物館外観、海洋博物館ロフト、海洋博物館近くのマーケット、右=上から、銀行博物館外観、銀行博物館内観、チャイナタウン

2016/03/27(日)(五十嵐太郎)

コタ地区(旧バタビア)

[インドネシア、ジャカルタ]

ジャカルタに到着し、研究室のメンバーと合流し、留学生のハリーさん、ミルザさんの案内で街をまわる。オランダ時代の建築が群として残るコタ地区は、土曜の夜のため、ものすごい人出だった。桜と酒なしで毎週末に花見をやっているような感じと言うべきか。特にあまり照明がない暗がりの中で、ところ狭しと地べたに座って歓談している若者に占拠された、旧市庁舎前の広場の使い倒し方がすごい。おそらく、ここを最初に都市計画したオランダの人が目撃したら、びっくりするだろう。

写真:左上=ジャカルタ旧市庁舎前、左下・右上=ジャカルタ駅

2016/03/26(土)(五十嵐太郎)

Assembridge NAGOYA 五十嵐太郎×服部浩之×米澤隆「地域美学スタディ vol.1:批判的地域主義の現在形」

会期:2016/03/20

慶和幼稚園ホール[愛知県]

図像を一切使わない下道基行による言葉の地図を手に街を歩き、岡本太郎の壁画がある慶和幼稚園ホールに移動する。ここでキュレーターの服部浩之がモデレートする「地域美学スタディvol.1:批判的地域主義の現在形」に登壇する。僕からは概念の説明と現状、米澤隆は強い形態の建築ながら、今風のリレーショナルな説明を強調した自作のプレゼンテーションを行なう。話題は、地域とアートの話にも及ぶ。

2016/03/20(日)(五十嵐太郎)

Assembridge NAGOYAプロジェクト「L PACK|コーヒーのある風景」ほか

会期:2016/02/26~2016/03/27

旧潮寿司ほか[愛知県]

その後、街中を歩き、アートのミニブックを展示する渡辺英司のボタンギャラリー、L PACKが寿司屋を「コーヒーのある風景」に変容させた終わりなきリノベーション、徳重道朗による旧つむぎ店に多重フレームを出現させたインスタレーション、ヒロスムの映像、山本聖子の「オランダに山をつくる」などを鑑賞する。トリエンナーレ以外でも、こうした筋がよいアートプロジェクトが稼働しているあたりに、名古屋のアートの底力を感じる。

写真:左=上から、ボタンギャラリー、「コーヒーのある風景」、右=上から、多重フレームを出現させたインスタレーション、「オランダに山をつくる」

2016/03/20(日)(五十嵐太郎)