artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
映画『もしも建物が話せたら』先行上映イベント 第2回:建築系ラジオ公開収録! シネマアーキテクチャー番外編「建築を声で届ける意義」
会期:2016/02/15
渋谷アップリンクFACTORY[東京都]
アップリンクにおいて、映画『もしも建物が話せたら』のトークイベントを行なう。これは30分弱×6作品のオムニバスである。制作総指揮のヴェンダースによる《ベルリン・フィルハーモニー》に始まり、《ロシア国立図書館》、《ソーク研究所》、《ハルデン刑務所》、《オスロ・オペラハウス》、《ポンピドゥー・センター》を異なる監督が撮影したものだ。いずれも手法が異なり、それらを比較すると興味深い。カリム・アイノズ監督による《ポンピドゥー・センター》は、建築がわれわれを冷徹に見つめ、ボヤく感じだし、俳優のロバート・レッドフォードが監督したソークは社会派ドキュメンタリー風、そしてヴェンダースによるフィルハーモニーは人を追いかけながらカメラが動く。映画を見ながら、建物が話すような感じの建物解説の音声サービスがつくれるのではないかと思う。
2016/02/15(月)(五十嵐太郎)
建築ウォッチング「建築家と伊勢を歩こう」(建築ラリー2016「建築からまちへ──地域の中での建築家の役割」)
[三重県]
続いて「建築ウォッチング 建築家と伊勢を歩こう」に参加した。まず最初に栗生明が設計した《せんぐう館》を見学する。内部の展示では、1/1の部分的に再現された巨大な神宮があり、なるほど、これはハイライトだった。そして吉田鉄郎による《ボン・ヴィヴァン》で昼食をとり、伊勢山田の街並み散策を行なう。世古、《山田館》、《御師邸》土塀、畑医院、北御門通、神路通、《東邸》、《月夜見宮》など、地元の建築家ならではの詳細な解説で楽しめた。こうした企画が全国各地で行なわれるといいのではないか。
写真:左上=《せんぐう館》、左中=《ボン・ヴィヴァン》、左下=《山田館》、右上=《御師邸》、右中=畑医院、右下=《月夜見宮》
2016/02/07(日)(五十嵐太郎)
伊勢神宮
[三重県]
三度目の伊勢神宮だが、朝は初めて。早朝から内宮には多くの参拝者が集まっているのに驚かされた。遷宮されたばかりの新しい建築だから、もっとも瑞々しい状態である。続いて外宮へ。よく考えてみると、正宮の敷地内にいくつかの大木が生えているのは、かなり大胆なランドスケープである。そして神宮の造営を一手に引き受ける山田工作場を見学した。通常の仕事とは違い、長期的な計画を前提とした材料の管理や、大工が増えたり、減ったりする20年の工程のサイクルなどをうかがい、非常に興味深い場所だった。
写真:上から順に伊勢神宮内宮/別宮・風日祈宮、外宮/豊受大神宮、正宮敷地内
2016/02/07(日)(五十嵐太郎)
小林哲朗 NO ARCHITECTS「魅せる工場展」
会期:2016/01/20~2016/02/28
あまらぶアートラボ A-Lab[兵庫県]
日本屈指の工業地帯を有する兵庫県尼崎市で、工場写真をテーマにしたユニークな展覧会が行なわれた。写真家は、尼崎市在住で、工場、廃墟、巨大建築物などの写真で知られる小林哲朗。展示プランを担当したのは、建築家ユニットのNO ARCHITECTSだ。展示室内にはさまざまな大きさのボックス(その大半は人間の背丈を超える)がランダムに配置され、大きく引き伸ばした写真が壁一面に貼り付けられている。巨大な煙突、建物に張り巡らされたダクトや配管、吹き出す水蒸気といった工場特有の機械美・機能美が圧倒的なスケールで目前に迫り、それらがひしめき合いながら奥行のある空間に展開しているのだ。通常の写真展ではほぼ同じ大きさのプリントが壁面に整然と並んでおり、インスタレーションを意識した場合でも写真自体が立体的に扱われることはまずない。ところが本展では、3次元的な展示空間が設けられ、観客は工場の中をさまようような感覚を味わえるのである。写真表現の新たな可能性を示したという点で、このコラボレーションは大成功と言えるだろう。
2016/02/07(日)(小吹隆文)
レーモンドホール(旧三重県立大学図書館)
[三重県]
竣工:1951年、移築:1969年
JIA主催のシンポジウムで登壇するため、三重の津市に向かう。開始まで少し時間に余裕があったことから、三重大学で保存されているレーモンドホールを訪れた。あいにく閉鎖中であり、カーテンによって内部も隠されていたが、透明感あふれる木造のモダニズムなのは十分にうかがえる。おそらく、建築が小さいからこそ、キャンパスの隅に残すことができたのではないかと推測するが、地元の大学が、こうした1950年代の建築を保存しているのはよいことだ。
2016/02/06(土)(五十嵐太郎)