artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
空気展 -what is “kuuki” in Architecture? 若手建築家5名による展覧会
会期:2015/11/17~2015/11/28
東北大学の人間環境棟で、若手建築家5人の「空気」展がスタートした。2014年のU-35に参加していた伊藤友紀、植村遥、魚谷剛紀、長谷川欣則、細海拓也が、小さな模型群を並べたプリズミックギャラリーとは違う展示を行ない、巡回展というよりも、新しい展示として再構成された。当初は小さな模型だけ送ってもらい、既存の台に置いてもらうつもりだったが、実際は展示のための什器からつくり込み、想像以上に力の入った内容となった。1階のトンチクギャラリーも、ちゃんとした展示を行なうと、これまでになくよい空間に見える。初日のトークでは、翻訳不能な「空気」の概念(それがゆえに、かつての「間」展のように展開しうるのでは?)、ミックスした展示形式などを討議する。
2015/11/17(火)(五十嵐太郎)
UW-JSPS Joint Symposium:Socially Engaged Art in Japan NARRATIVE AND PANELS 日本における社会に関わるアート:現代美術と政策への問い
会期:2015/11/12~2015/11/14
ワシントン大学[アメリカ合衆国、ワシントン]
シアトルのワシントン大学でのシンポジウム「Socially Engaged Art」は、3日間朝から夜まで濃密なプログラムだった。そもそもタイトルの概念とは? 日本におけるその展開、具体的な実践例の紹介、ポスト3.11などが議論された。途中、ロサンゼルス在住の田中功起のトークや、シアトルに滞在している加藤翼の作品紹介も交える。
筆者は3.11を扱う最後のセクションで、金沢21世紀美術館から水戸芸術館に巡回した「3.11以後の建築」展と、ザハの新国立競技場問題を軸に「リレーショナル・アーキテクチャー」について発表する。Marilyn Ivyから従来の美学的な建築と新しい社会的な建築は対立するものなのかと聞かれ、両者は重層しうると回答した。
2015/11/14(土)(五十嵐太郎)
《シアトル美術館》
[アメリカ合衆国、ワシントン]
竣工:1991年
ヴェンチューリらが設計した《シアトル美術館》にて、シンポジウムのメンバーと合流し、案内をしてもらいながら、アートを取り込んだ水辺の再開発計画を見学する。市民にプロジェクトの概要を伝える情報館の存在がよい。続いて、Path with Artというホームレスらの大人を対象にしたアート教育のプログラムを運営する団体を訪問する。アートを通じて、社会に貢献しようというミッションを遂行しており、シンポジウムのテーマと関係ある運動だ。夕方、ワシントン大学のヘンリーアートギャラリーへ。基調講演をする予定の北川フラムが、砂川の米軍基地に反対する運動に参加した過去の逮捕歴を理由に、アメリカ入国が許可されず、まさかの本人不在となった。ビデオメッセージの後、企画者のジャスティンが代わって、越後妻有の芸術祭を紹介する。
写真:左=上から、シアトル美術館、同上、水辺の再開発計画、同上 右=上から、Path with Art、ヘンリーアートギャラリー、同上
2015/11/12(木)(五十嵐太郎)
《フリーウェイパーク》
[アメリカ合衆国、ワシントン]
竣工:1976年
ミノル・ヤマサキは日本人の移民の子であり、シアトルで育ったが、ダウンタウンには2つ作品があり、いずれも四角い箱型のビルをやわらげる曲線的な要素を導入する。ちなみに、彼の代表作、ニューヨークの世界貿易センタービルも、そうした要素をもつ。またローレンス・ハルプリンのコンクリートによるランドスケープ、フリーウェイパークも再訪した。
写真:左上=《レーニアタワー》、右上=《シアトルIBMビル》、下=《フリーウェイパーク》
2015/11/12(木)(五十嵐太郎)
《シアトル公立中央図書館》
[アメリカ合衆国、ワシントン]
2日目の午前が、唯一の自由時間だった。2007年にOMA(Office for Metropolitan Architecture)の《中央図書館》を見学していたが、ここを再訪する。前回は天候がよかったが、今回は雨がずっと降るシアトルらしい天候だったために、室内化された広場としての巨大な吹抜けのありがたさがよくわかる。連続するスロープに全書架を並べたプログラムといい、これはOMAの傑作だと思う。中央図書館で建築ガイドを購入し、前回は情報を得られなかった街中のその他の建築群も観察する。
2015/11/12(木)(五十嵐太郎)