artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

「新宿副都心の再生──超高層の足元を快適に繋ぐネットワーク(歩行トラフィックを再構築する)」コンペ審査

会期:2015/10/31

新宿野村ビル[東京都]

新宿の総合資格学院にて、第一回修士課程学生プロポーザル・デザイン・コンペの二次審査に参加する。考えてみると、修士の学生だけを対象にしたアイデア・コンペはほかにない。今回のテーマは「新宿副都心の再生」であり、10チームの発表と質疑応答を行なう。新宿の歴史をひもときながら、現在の風景に土の地形を重ねる奈良女子大の案を推し、それが最優秀になった。が、修士の学生でも、審査員が評価する部分と本人たちの意識にやはりズレを感じる。個人的には、彼女らの案は人工的な都市と土によるテクスチャの断絶が魅力的で、SF的かつアート的なインパクトも感じたのだが、どうもベタに出てきたアイデアのようだった。

2015/10/31(土)(五十嵐太郎)

五十嵐太郎×津田大介×東浩紀「慰霊から建築を考える──宗教・忘却・オリンピック」

会期:2015/10/28

ゲンロンカフェ[東京都]

ヴェネチア・ビエンナーレ建築展2016の日本館のコンペにおいて、元寇、安政の大地震、沖縄戦、東日本大震災など、日本の歴史における死者をテーマにした企画案「怨霊の国を可視化する」を東が提示したことを軸に討議が行なわれた。終了後のトークも含め、彼が抱いている日本文化論にかかわる慰霊や屍体のテーマが具体的にわかって興味深い。今後、紙媒体でまとまったものが出るらしいが、コンペで選ばれなかった展示企画もどこか他の場所で実現したらよいのではないかと思う。

2015/10/27(火)(五十嵐太郎)

BankARTスクール2015年度9月-10月期「横浜建築家列伝vol.2」五十嵐太郎+磯達雄(ゲスト:小泉雅生)

会期:2015/10/26

BankART Studio NYK[神奈川県]

小泉雅生を招き、横浜の活動と作品に限定して、レクチャーが行なわれた。2005年の北仲ブリック&ホワイトの始動を契機に拠点を横浜に移し、それ以来、横浜エリアで住宅、公共施設、展示などを展開する。コンペで勝った象の鼻パークは複雑な与件を解いたプロジェクトだが、特に思い入れがあるという。現在は寿町で将来の日本における公共性を考える契機となるような計画を進めている。

2015/10/26(月)(五十嵐太郎)

ここに棲む──地域社会へのまなざし

会期:2015/10/09~2016/01/12

アーツ前橋[群馬県]

アーツ前橋の「ここに棲む」展へ。地域をみつめるというテーマで、建築家とアーティストが混じった構成だが、自作を並べるのではなく、その態度に焦点を当てており、意外と、あまり見たことがないやり方だった。建築家のプロジェクトを列挙すると、アーツ前橋を設計した水谷俊博のスタディに始まり、藤野高志の模型キメラ、EUREKAのフィールドワーク、藤本壮介による森/建築モデルが続く。そして後半は、乾久美子による空間や家具の使われ方の観察、アトリエ・ワンと福祉のコラボレーション、ツバメアーキテクツが提唱する新しい住まいモデルである。「3.11以後の建築」展と同様、地域に寄りそう建築の新しい動向をうかがえる。また展覧会に併せて『ぐんま建築ガイド』の書籍も制作された。このような美術館を核に地元の建築を見直す動きが、日本各地で起きるとよいと思う。

写真:左上=藤野高志、左下=藤本壮介、右上=展示会場、右中=屋外企画、右下=ツバメアーキテクツ

2015/10/26(月)(五十嵐太郎)

artscapeレビュー /relation/e_00032743.json s 10116761

福井来訪──シーラカンスK&H《丸岡南中学校》ほか

[福井県]

福井へ。シーラカンスK&Hによる《丸岡南中学校》は、プログラムが重要な建築であるため、外から見学しただけでは、その特徴は完全にはわからない。黒川紀章が設計した《福井市美術館》は、お得意の円錐ガラスによるエントランスと湾曲する曲面の壁を組み合わせており、国立新美術館とよく似ている。これに対峙する遠藤秀平の《TRANSTREET 下馬》は、美術館のカーブを引き受けながら、スロープが蛇行する公園の遊具的な建築である。そして槇文彦の《福井県立図書館》は、周囲から目立つ赤いキューブのヴォリュームに蔵書を収め、その足下に広がる開架の大空間には、天光が降りそそぐ柱群が並ぶ。

写真:左=上から、丸岡南中学校、同上、福井市美術館、右=上から、福井市美術館、TRANSTREET下馬、同上、福井県立図書館

2015/10/24(土)(五十嵐太郎)