artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
フィルハーモニーの室内楽ホール
[ドイツ、ベルリン]
ベルリンに戻り、フィルハーモニーの室内楽ホールへ。大ホールよりひとまわり小柄で、全体をワインヤード状の座席で囲い込む形式や、階段が徐々に分岐していくデザインはそっくりだが、実はシャロウンの設計ではない。ピアノ四(五)重奏だったが、主役のピアニストはなぜ漢字を刻んだ学ランみたいなヤンキー服を着ていたのか、ずっと気になった。
2015/09/22(火)(五十嵐太郎)
ドレスデンの街並み
[ドイツ、ドレスデン]
街を歩きながら駅に戻る。ドイツらしい広場や教会が堪能できる。一方で旧東を想起させる改修中の文化宮殿や大型商業施設にも遭遇した。さらにコープ・ヒンメルブラウが設計した《UFAシネマ・センター》もあって、歴史の層を重ねた街並みが生まれている。映画館はディコン系の激しい造形だが、施設の性格上、空間の体験は少ない。が、シネコンを建築家に依頼するのは、日本では考えにくい、思い切ったプロジェクトである。
写真:上=ドレスデンの広場、中=改修中の文化宮殿、下=《UFAシネマ・センター》
2015/09/22(火)(五十嵐太郎)
《ツヴィンガー宮殿》
[ドイツ、ドレスデン]
ツヴィンガー宮殿は、中心軸と左右対称をはっきりさせた建築群と造園、過剰な装飾をもち、コテコテのドイツ・バロックである。大規模な修復で閉鎖中の部分(ゼンパーの東翼など)も多いが、古典主義やオーダーの一部をグロッタ風に溶解させた意匠が興味深い。アルテ・マイスター絵画館は、フェルメールの「窓辺で手紙を読む少女」などを展示している。
2015/09/22(火)(五十嵐太郎)
ゴットフリート・ゼンパー《ゼンパー・オーパー》
[ドイツ、ドレスデン]
続いて、ゴットフリート・ゼンパーによるオペラハウスの見学ツアーに参加した。装飾やホワイエの階段などはパリのオペラ座に比べると見劣りするが、舞台/観客席の形態がそのまま外観に表出する機能主義的な円弧が印象的である。コンパクトに客席を収めた1,300人の規模だが、近代以前の生音による空間のスケール感が興味深い。
2015/09/22(火)(五十嵐太郎)
ダニエル・リベスキンド《ドイツ連邦軍事史博物館》
[ドイツ、ドレスデン]
竣工:1841年
ドレスデンへ。リベスキンドの《ドイツ連邦軍事史博物館》が、想像していたよりも素晴らしい。《ユダヤ博物館》と似ているが、古典建築と別棟とせず、現代のリノベーション空間と激しく衝突して、干渉空間を生み、対照的な特徴を相互に強化している。また、《ユダヤ博物館》のばらばらになった感じと違い、展示のデザインや什器も建築とうまく連動している。V2ロケットなど、巨大な兵器のスケールは、展示空間を引き立てる。ともあれ、ドイツは空間が戦争の記憶を抱え、必然的にダークツーリズムになってしまう。
2015/09/22(火)(五十嵐太郎)