artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

TIMESCAPE展

会期:2015/06/28~2015/07/25

プリズミックギャラリー[東京都]

TIMESCAPE展のトークイベントに顔を出す。昨年のU-35で知り合った4組の若手建築家が企画した展覧会である。想像していた以上に、展覧会のタイトルに引きつけながら、作品が選ばれていた。高栄智史は、経年変化する模型や森林の間伐によるボロノイ建築。伊藤友紀は、赤レンガの記憶を継承した家やライフログ的な空間。岩田知洋+山上弘は、春日井の住宅地に600平方メートルの家で変わらない風景をつくる試みと湖の休憩所。植村遙は、スリナムのアルツハイマー病院プロジェクトやオランダの人工島を自然に還す計画で、人々の記憶を残す提案である。ちなみに、若手の建築家を紹介してきたプリズミックギャラリーも、今年で10年を迎える。

2015/07/11(土)(五十嵐太郎)

戦後日本住宅伝説──挑発する家・内省する家

会期:2015/06/14~2015/07/20

八王子市夢美術館[東京都]

八王子市夢美術館で「戦後日本住宅伝説」展のギャラリートークを行なう。埼玉、広島、松本と巡回してきた展覧会も、これで最終の会場となる。四カ所を比較すると、同じ展示内容でも、美術館が異なると、だいぶ違って見えるのが興味深い。八王子は、学芸員がこの手法を提案し、以前坂本一成展でも試みただけあって、空間の没入感を与える大きな建築写真のタピストリーが最も効果的である。またほかに比べると、会場の面積が小さいため、各プロジェクトが独立したエリアを確保するのが難しいために、別の住宅の模型が近接し、かえって異なる住宅のスケールを比較しやすい。例えば、《原広司自邸》と《反住器》の模型が背中合わせである。

2015/07/04(土)(五十嵐太郎)

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大阪国際平和センター(ピースおおさか)リニューアル「大阪空襲を語り継ぐ平和ミュージアム」

大阪国際平和センター(ピースおおさか)[大阪府]

ピースおおさかを訪れた。以前は建築が目的で来たので、リニューアルされて、加害展示が消えた実感はあまり持てないのだが、いまはテーマを大阪空襲に絞り、垢抜けた展示になっている。が、はたしてアート的なインスタレーションでいいのか? それよりも気になったのは、なぜ戦争が起き、空襲になるまでの事態を招いたかの説明がほぼない。まるで自然災害のように、悲惨な目にあいました。これでは博物館なのに、『永遠の0』みたいな構えである。

2015/06/25(木)(五十嵐太郎)

「中村順平と建築芸術教育」展

会期:2015/06/03~2015/08/03

大阪歴史博物館 8階特集展示室[大阪府]

大阪歴史博物館にて、学芸員の酒井一光が企画した「中村順平と建築芸術教育」展を見る。同館は資料を譲り受けたことから、過去にも中村展を開催していたが、ボザール留学中の課題図面、弟子による日本建築の図面、帰国後教鞭を執った横浜高等工業学校(現・横浜国立大学理工学部建築都市・環境系学科)の学校祭に関する図面など、未見のものもいくつか紹介されていた。師匠、弟子ともに、時流とは少し違うデザインの傾向がうかがえる。それにしても、1930年代の学生の図面が美しいこと! 逆にCGでは、つくりにくいような精度である。いまの横浜国大の人は、この展示に来るのだろうか?

2015/06/25(木)(五十嵐太郎)

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HIROSHI HARA: WALLPAPERS「建築家・原広司による、2500年間の空想的思考をたどる写経」

会期:2015/06/13~2015/07/26

梅田スカイビルタワーイースト5F特設会場[大阪府]

どうしても千葉の湖畔美術館での展覧会は都合がつかず、ようやく大阪は梅田スカイビルの巡回展にて、原広司「WALLPAPERS」を見ることができた。大きな白いキューブ群を会場に並べて、それらの表面に作品写真のほか、彼が重視するテキストの写経ドローイングを貼る。鴨長明、ポアンカレ、荘子、『千夜一夜物語』など、膨大な量の原文を自ら書き写す、驚くべき企画だ。

2015/06/24(水)(五十嵐太郎)