artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
神奈川県庁本庁舎
[神奈川県]
ゴールデンウィークで、神奈川県庁本庁舎の建物公開がなされており、初めて内部を見学した。普段は入ることができない、本庁舎の旧議場、知事室、旧貴賓室ほかの位置やインテリアなど、時代も近く、同じく帝冠様式として括られる、名古屋市庁舎や愛知県庁舎と比較すると興味深い。旧正庁にはアクセスできなかったが、すでに機能が変わり、だいぶ空間は変わったようだ。また6階の歴史展示室は、歴代の庁舎を紹介する。そして緑化された屋上は、キングの塔を真上に見上げる視点を提供し、まわりを見渡すと、ジャックの塔、クイーンの塔、横浜大さん橋ターミナルを一望できる素晴らしい場所だった。
写真:左上から、県庁舎内観、県庁舎内装、県庁舎屋上 右上から、県庁舎外観、県庁舎内装、横浜大さん橋
2015/05/02(土)(五十嵐太郎)
済州島
[韓国]
済州島では、現地の大学、建築の金泰一先生の案内により、安藤忠雄や伊丹潤の建築を見学する。安藤に関しては、古美術もよく揃えた《ポンテ美術館》、フェニックスアイランドにおいて、魅力的なアプローチをつくって、地中に埋めた《ゲニウス・ロキ美術館》と、海の眺望を楽しめる透明なレストラン《グラスハウス》をまわった。伊丹は、いずれも素材や空間の感覚が説得力をもつ、箱船を意識した教会、ポド・ホテル、ゴルフ施設などの空間を堪能した。
写真:左上から、《空の教会》、《ポド・ホテル》、PINX GOLF CLUBのクラブハウス《ピンクス・クラブハウス》、《ポンテ博物館》。右上から、フェニックスアイランドリゾート内レストラン「ミント」内観、外観、《ゲニウス・ロキ》
2015/04/28(火)(五十嵐太郎)
福岡アイランドシティ/ネクサスワールド
[福岡県]
博多に寄港し、三度目の福岡アイランドシティへ。伊東豊雄の《ぐりんぐりん》や大西麻貴らの地層をイメージしたパヴィリオン《地層のフォリー》などがある公園のまわりは、いまも開発が進行している。そして久しぶりにネクサスワールドを訪問した。当時全盛のポストモダンではあるが、手入れが行き届いていることもあり、全体的に古びれた感じはなく、日本では希有な街並みが育まれている。特に低層のレム・コールハース棟やスティーブン・ホール棟が変わらずいい。十分にお金をかけて建築をつくることができたバブルの時代が残した重要な資産だ。
写真:左上から、ネクサスワールド《石山修武棟》、アイランドシティ中央公園 体験学習施設《ぐりんぐりん》、《太陽のフォリー》、《地層のフォリー》。右上から、ネクサスワールド《ポルザンパルク棟》、《レム・コールハース棟》、《スティーブン・ホール棟》
2015/04/27(月)(五十嵐太郎)
ボイジャー・オブ・ザ・シーズ
ボイジャー・オブ・ザ・シーズに乗船し、博多、済州島、名古屋をまわった。一週間なので、これまででもっとも長い船旅である。全長310m、全幅48m、全高63mのヴォリュームなので、高層ビルよりもデカい。巨大な客船=動く建築を体験したが、ホテル+街並みを模したショッピングモール+シアター+飲食店+テーマパークなどが合体したような複合施設である。数千人が暮らし、随時あちこちでさまざまなイベントが開催されており、もはや海に浮かぶ小さな街という方が正しいかもしれない。
2015/04/26(日)(五十嵐太郎)
六角鬼丈《クレバスの家》
[東京都]
竣工:1967年
六角美瑠の案内で、父・鬼丈の処女作となる自邸、《クレバスの家》(1967)を見学する。名称どおり、小さな家の中央を一直線の割れ目が鮮やかに切り裂く。クレバスに沿って逆遠近法的な階段が展開しているが、遠くの風景を見せるためでもなく(住宅地なので、それは望めない)、高松次郎的でもなく、むしろ壁が迫る内向的な空間である。その後に六角が手がけた塚田邸の造形にも近いのが、個人的に発見だった。六角美瑠が隣に住宅を設計しており、現在、親子の建築が並んでいる。
2015/04/19(日)(五十嵐太郎)