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建築に関するレビュー/プレビュー

荻上チキ Session-22「新国立競技場問題の元凶? ここがヘンだよ、日本のコンペ!」(提案モード)

新国立競技場の件を契機に、多くの人が建築に関心をもち、TBSラジオのSession-22で「ここがヘンだよ、日本のコンペ!」のような通常は企画されない番組が生まれたのはよかった。山本理顕が出演し、日本の特殊な建築事情の問題がちゃんと語られている。しばらく前から、数分で何事も切り取るテレビのニュースや情報番組を見なくなり、Podcastでラジオを聴くようになったが、やはり十分な時間をかけた番組はちゃんとしている。なお、この番組で、槇文彦が8万人を維持するなら白紙撤回の意味なしと電話のインタビューで語ったように、結果は首相の権力誇示だけで、建築界みな敗北になりかねないのは残念過ぎる。

2015/07/21(火)(五十嵐太郎)

《横浜市仲町台地区センター》

[神奈川県]

竣工:1995年

横浜の仲町台へ。閉館後だったが、ワークステーションの手がけた仲町台地区センターを見る。BankARTの講義で高橋晶子が述べたように、湾曲するガラス面で包む、手前の樹木がかなり成長していた。この近くの横河健の事務所(横長窓、大胆構造)の下にあるレストランで食事をする。ここは緑道に面するので、昼のほうが眺めがよいかもしれない。

2015/07/20(月)(五十嵐太郎)

SEKAI NO OWARI「Twilight City」 in 日産スタジアム

[神奈川県]

巨大なツリーハウス、テーマパーク仕様の舞台装置が印象的だった。何曲か披露された最新作も攻めの姿勢である。西側スタンドは客席に使ってなかったが、アリーナを活用していたので、新国立競技場と近い、7万人級のスケール感がイメージできる。日産スタジアムは、プレキャストコンクリートで建設しているが、結局、新国立競技場もこうした早く、経済的な方法でしか建設できなくなるだろう。もっとも、東日本大震災の復興事業とオリンピックに合わせた首都圏の再開発ブームで、異常に建設費が高騰しているなか、白紙撤回によってさらに工期が圧縮されるから、高いお金を払って安普請するしかない。つまり、あまり建設費は下がらないのに、わざわざ凡庸な競技場をつくるわけだが、税金を投入する「国立」の施設が、本当にそれでよいのだろうか。

2015/07/19(日)(五十嵐太郎)

新国立競技場白紙撤回

安保が強行採決された直後、ザハ・ハディドによる新国立競技場のデザインの白紙撤回が発表された。コンペをしたプロジェクトのキャンセルはめずらしくないが、建設自体の中止でないにもかかわらず、ここまで図面を描き、着工直前まできて、つぶれた事例はまれだろう。その際、一方的に建築家とデザインが悪者にされたのは、きわめて残念である。本当は過剰なスペックとプログラムを押し込んだ発注者側の考え方を改めないと、根本的な問題解決にならない。ともあれ、数十年経って、後から日本の歴史を振り返ったとき、2015年はどう記述されるだろうか。近代的な法の概念が壊れ、「我が軍」の経費は増強する一方、大学の人文系は役立たないと切り捨てられる。建築も、90年代以降、バブル崩壊、2つの震災など、大きな事件はあったけれど、今回の決定はその後の展開によってはかなり大きなダメージを受けるかもしれない。愛知万博でも、当初、隈研吾・竹山聖・團紀彦らが共同で会場計画に関わっていたが、分断された挙句、最後は全員が外された。大阪万博と比べて、建築とアートの後退ぶりは凄まじかったが、2020年の東京オリンピックでも国家プロジェクトにおける「建築」の困難さが繰り返されている。もっとも、どれくらいのレベルで白紙撤回をするのかが実ははっきりしていない。

2015/07/17(金)(五十嵐太郎)

被災地めぐり(女川・石巻)

[宮城県]

久しぶりに女川と石巻に足を運ぶ。3.11後に仙台への新幹線が復活したときと同様、バスを使わずとも、ついに電車だけで行くことができるようになったのが感慨深い。坂茂が手がけた新しい駅舎は浴場や販売所などの施設も備え、街のスケールとしては大きめのやわらかいランドマークとして出現していた。一方、女川の主な震災遺構は、交番以外すべて消えた。そして地形も道路も激しく変わり、別の町が生まれようとしている。

写真:上=石巻の将来模型、中上=派出所のみ残る(女川)、中下=地形や道路も変わる(女川)、下=女川駅

2015/07/15(水)(五十嵐太郎)