artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

海上自衛隊呉史料館(てつのくじら館)

[広島県]

続いて、向かいのてつのくじら館へ。かわいい名前だが、海自の広報を兼ねた展示施設なので入場無料である。展示手法は、ややぶっきらぼう。安保で話題の機雷掃海に関する仕組みの展示が面白い。実際に使ったフロートにかわいいキャラ顔を描いているのが興味深い。また展示のハイライトは、館の手前に置かれた本物の潜水艦の内部を体験できること。たしかに、水面下を移動する究極の建築である。ちなみに、ゆめタウン、実物潜水艦、大和ミュージアム、メルヘン建築の休憩所、海の本物の船が並ぶ、脈絡がない呉の風景は、まさに日本的だ。

2015/07/27(月)(五十嵐太郎)

呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)

[広島県]

呉の大和ミュージアムへ。大勢の来場者で賑わい、改めて日本における大和の人気を痛感する。やはり、吹抜けに設置された1/10スケールの戦艦大和が最大の見世物であり、下や横、あるいは上からと、さまざまな視点から船体を楽しめる。展示は、近代の造船、大和の設計と最期、戦後のタンカー建設など、資料を通じて、呉の歴史をたどる(ただし、一ノ瀬俊也『戦艦大和講義』のように、「宇宙戦艦ヤマト」など、戦後のサブカルチャー受容は紹介しない)が、なぜ戦争が起きたかという社会背景の説明は薄い。

2015/07/27(月)(五十嵐太郎)

《世界平和記念聖堂》

[広島県]

竣工:1954年

久しぶりに村野藤吾の《世界平和記念聖堂》へ。戦後最初の話題のコンペをやったものの、結局、審査員長の村野藤吾が設計してしまったもので、その経緯は問題あるが、完成したものはいい。60年を過ぎて、さらに凄みを増す建築だ。世界各地で見学した近代以降の教会と比べても、決して遜色がない。あえて難を言えば、祭壇の壁画が微妙かもしれない。

2015/07/27(月)(五十嵐太郎)

国際交流基金巡回展「3.11──東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」展

2012年3月から3年間、世界各地を巡回した「3.11──東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」展のセットの一部が、東北大学に到着した。報告書によれば、全部で20カ国、37都市で展覧会を開催しているが、模型やパネルなど、思っていたよりも傷みが少ない。なお、片平の仮設校舎で最初の展示がスタートし、青葉山の新校舎に戻ってきたわけで感慨深い。しかも、東北大学の復興プロセスも展示に組み込まれている。

2015/07/24(金)(五十嵐太郎)

2015年第56回BCS賞

審査に関わった第56回BCS賞の結果が発表された。この建築賞は、設計以外にも、施工や事業者、発注主の企画、運営、管理を総合的に評価することが大きな特長である。ちょうど今年は新国立競技場の問題が起き、その意義が大きく注目された年と言える。表面的なデザインだけではなく、そもそも仕事の枠組を決めるよい施主とはどうあるべきか、また建築家と事業者の創造的な関係も問われているからだ。

2015/07/23(木)(五十嵐太郎)