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建築に関するレビュー/プレビュー

開館10周年記念特別展「民都大阪の建築力」

会期:2011/07/23~2011/09/25

大阪歴史博物館[大阪府]

大阪歴史博物館にて、建築史の学芸員、酒井一光さんの企画した「民都大阪の建築力」展の初日へ。各建築家の提案を一同に並べた大阪市中央公会堂のコンペの展示、大阪城の新築、百貨店の底力、建築物ウクレレ化保存計画など、見所満載の入魂企画である。初日は、通天閣ロボットもやってきて、会場をにぎわせていた。

2011/07/23(土)(五十嵐太郎)

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堂島リバービエンナーレ2011「Ecosophia─アートと建築」

会期:2011/07/23~2011/08/21

堂島リバーフォーラム[大阪府]

哲学者のフェリックス・ガタリが提唱した「エコゾフィー」という概念に基づき、美術家と建築家がコラボレーションを行なった本展。まずは肝心の「エコゾフィー」を理解するのが筋だが、なまかじりでは敵わないことがわかり、早々に降参して会場へと出かけた。美術家と建築家のコラボにもさまざまなかたちがあり、巨大な構築物をつくり上げた展示も見られたが、私自身は建築家が前に出ない展示の方が相性がよかった(例えば、大庭大介さんの展示)。展示は、アニッシュ・カプーアの建築模型のような立体を中心に、地圏、水圏、空圏の3ゾーンが緩やかに連続する形態だったが、3圏の違いや役割についてはあえて明確にしておらず、私自身の「エコゾフィー」への理解不足もあって曖昧な印象がぬぐい切れなかった。ただ、大阪ではこの手の大規模な現代美術展が少なく、しかも美術家と建築家とのコラボなど皆無の状況なので、本展の開催自体は大いに歓迎である。

2011/07/22(金)(小吹隆文)

竹中工務店《ザ・千里レジデンス》《関西大学高槻ミューズキャンパス》

[大阪府]

大阪にて、竹中工務店が手がけた新しい物件を2つ見学した。千里駅周辺の再開発。プロジェクトの一部、ザ・千里レジデンスは、タワーマンションにはせず、庭やアートのある豊かな共有空間や、柱が邪魔しない眺望などを備えることで、差別化している。外壁を柱が分節しないために、透明感にあふれ、水平のラインが強く、オフィスのようにも見える。かつてのニュータウンの行方を示唆するプロジェクトといえよう。関西大学高槻ミューズキャンパスも、駅の真横の再開発だが、なんと小中高大!のハイパースクールである。少子化の時代に強気の戦略だ。それだけではない。さらに地域に開かれた児童図書館、安全ミュージアムが一体化した複合施設である。複雑なプログラムだが、外観は統一感のあるクラシックな見えで、都市に対するゲートのようだ。一方、内部は基準階がなく、ほとんど異なるプランが展開し、色彩計画でも場の多様性を演出する。

2011/07/22(金)(五十嵐太郎)

モホイ=ナジ/イン・モーション

会期:2011/07/20~2011/09/04

京都国立近代美術館[京都府]

モホイ=ナジといえば、バウハウスの教師であり、写真やコラージュの作品が有名。その程度の認識しかなかった私にとって、本展は今までの認識を一新させてくれる目の覚めるような企画だった。彼はその流浪の生涯のなかで、写真はもとより、絵画、彫刻、グラフィック・デザイン、映画、舞台美術と、まさに八面六臂の大活躍。元祖マルチアーティストというだけでなく、コミュニケーションを重視するという点で現代アートの先駆者とも呼べる人物だったのだ。もしモホイ=ナジが現代に生きていたら、デジタル機器を用いてどんな表現を見せてくれただろうか。また、モダニストだった彼には、ポストモダン以降の世界がどう映ったのだろうか。作品を見ながらそんな夢想がどんどん広がっていった。

2011/07/19(火)(小吹隆文)

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クイーンズランド大学

[オーストラリア]

船で川を移動し、ブリスベンのクイーンズランド大学を見学する。キャンパスにある建築群は、あらゆる開口部に庇、ルーバー、ブリーズ・ソレイユなど、デザイン・カタログというくらいに、さまざまなバリエーションが展開し、夏の日光を遮る影の装置が、建築におけるオーストラリア的なものではないかと気づく。実際、街の様式建築も、ベランダを追加したものだった。こうした地域的なデザインの手法は、沖縄と似ている。

2011/07/09(土)(五十嵐太郎)