artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

布野修司『建築少年たちの夢』

『建築少年たちの夢』は、筆者も寄稿する『建築ジャーナル』が初出なので(連載時のタイトルは異なる)、ときどき読んでいたが、350ページ超の分厚い本として刊行された。布野さんの同世代からその上の建築家の評伝であると同時に、著者の個人史を重ねあわせながら、ポストメタボリズムの70年代を鮮やかに、そしてリアルに描く。活字化されていない証言やエピソードが断然おもしろい。僕の名前はA-cup絡みで登場していた。

2011/06/27(月)(五十嵐太郎)

JCDインターナショナル デザインアワード2016 公開審査

JCDデザインアワードの公開審査をオブザーバーとして見学する。歴代理事が審査員という豪華な顔ぶれだった。数カ月のディスプレイだと審査の対象にならず、1年以上存在していることが条件らしい。ファイナルの3作品は建築家によるもので、ゼロ年代以降の傾向が続いている。DSAの審査と同様、最後は社会・時代か、造形力かの択一の勝負となり、ここでも前者が選ばれた。中村拓志によるか細い柱で大きな屋根を支える構造のレストランは建築的にすごかったが、谷尻誠による本棚のある宿泊施設、《BOOK AND BED》が勝利した。

2011/06/25(土)(五十嵐太郎)

シンポジウム「アート × 建築 × 震災後」(大木×彦坂尚嘉×五十嵐)

会期:2011/06/25

Art Center Ongoing[東京都]

乱れた自分の部屋をそのまま会場に持ち込んだかのような、吉祥寺の大木裕之展「うちんこ!」に連動して開催されたトークイベント。大木さんは東京大学の建築学科の先輩にして映像作家である。今回初めて、彼の街の風景を扱う卒計から初期の映像作品「松前君」シリーズに展開していたことを知った。そして卒計では、槇文彦さんと三時間議論し、君のは建築ではないと言われたらしい。なお、卒論には映像も使用したという。

2011/06/25(土)(五十嵐太郎)

TNA《キリの家》

会期:2011/06/25

[東京都]

TNAの作品としては最小のフットプリントだが、内部に入ると、立体的に空間が連続し、外の風景も、全面ガラスのファサードにペイントされたキリの濃淡によって、選択的に取り入れ、それを全然感じさせない。最初に入ったときは、平らな床がほとんどない、小さな駐車場のようにも思えた(間仕切りもない)。それが身体と応答し、ふるまいを生み、空間に彩りを与える。中心線には強い大黒壁があり、安心感をもたらす。

2011/06/25(土)(五十嵐太郎)

東日本大震災復興支援「Arts Action 3331」展

会期:2011/06/15~2011/06/27

3331アーツ千代田[東京都]

京都のradが企画した建築展「SPACE OURSELVES」が巡回していた。中村竜治や近藤哲雄など、若手によるポスト震災の好企画である。かといって、ベタな復興計画ではない。失われたささやかな日常の風景の記憶を共有し、次のまちづくりにつなげる試みを提案した白須寛規のプロジェクトが印象深い。ただ、同じ会場において、アートと並ぶと、カッコ良くても、内容の伝わらなさが気になった。展示の方法は今後の課題だろう。

2011/06/24(金)(五十嵐太郎)