artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

建築系ラジオ・ツアー

会期:2011/08/15~2011/08/17

石巻市、牡鹿、石巻市雄勝、南相馬市[宮城県、福島県]

建築系ラジオのツアーで、被災地をめぐる。福島の南相馬市から岩手の大船渡まで、三日間で10カ所以上を訪れ、女川ではキャンプを行う。多くの参加者は初めてだったが、筆者にとっては3.11以降、平均して三度目、五回目の場所もあった。今回は瓦礫の山による新しい地形の出現、もはや街が破壊されたことを想像しにくいくらい片付いた場所が生まれていること、すでに廃墟に草が生い茂っていることなどが印象に残る。
なお、南相馬市では、芳賀沼整による仮設住宅群、五十嵐太郎研究室(吉川彰布、村越怜)が基本設計を担当した集会場とその四面の外壁に描かれた彦坂尚嘉による壁画を見学した。

上:陸前高田の新しい地形
中:雑草が生い茂る南三陸町
下:彦坂尚嘉による南相馬市集会場壁画

2011/08/15(月)~08/17(水)(五十嵐太郎)

民都大阪の建築力

会期:2011/07/23~2011/09/25

大阪歴史博物館[大阪府]

大阪歴史博物館の開館10周年を記念して、大阪の近代建築を図面や写真、関連什器等により紹介する展覧会。大阪の近代建築についてはこれまで多数の学術書や書籍が刊行されており、展覧会も幾度となく開催されている。それほどポピュラーであるだけに愛好者の目も厳しいテーマだが、本展では建築家ごとに作品を見せるという定番のやり方ではなく、大阪の学区制度と学校建築との関連性、ゼネコンが独自に作成した透視図、現存建築のオーナーや現代美術家によるユニークな保存活動といった新たな視座からこのテーマに取り組んでいる。これらの学際的な視座から提示される興味深い事実は、この分野がけっして研究し尽くされたものではないことを再認識させた。だが、切り口がユニークなだけに、一つひとつのコーナーがもう少し掘り下げた内容であればなお良かっただろう。一般に普及し、専門家も多いテーマだけに、誰にでもわかる展示という博物館の慣例を破ってしまっても良かったのではないか。大阪育ちではない筆者にとって多少残念だったのは、本展には作品の場所を記した地図や、現存する建物であるか否かについての情報が見当たらなかったことだ。東京と異なり、現存する近代建築が少なくない大阪の街は、外部の人間から見ればすこぶる魅力的だからである。数はけっして多くないものの、ガラスの1枚1枚に意匠が施された旧鴻池本店の豪奢なステインドグラスや生駒ビルヂングの日本版アールデコの照明器具、村野藤吾のデザインによるカフェの什器等、工芸・デザインの展示品も興味深かった。[橋本啓子]


《旧鴻池本店ステインドグラス》大正3年(1914年)株式会社鴻池組蔵

2011/08/15(月)(SYNK)

artscapeレビュー /relation/e_00014285.json s 10009283

「小さな建築のスタディ」展

会期:2011/08/06~2011/09/06

hiromiyoshii ropponngi[東京都]

チーム・ラウンド・アバウトのキュレーションによる、3.11以降を意識した15組の若手建築家のプロジェクト展である。小さな、かわいらしい模型を並べ、壁にドローイングを貼っていく。松岡聡・田村裕希による壊れた開口部からの増築や、垣内光司による基礎花壇にそえた小さな構築物など、興味深いプロジェクトが出品されている。

2011/08/08(月)(五十嵐太郎)

アラヴェナ展

会期:2011/07/27~2011/10/01

TOTOギャラリー・間[東京都]

派手なインスタレーションが多かったヴェネチアビエンナーレ国際建築展2008において、住人の希望を描いてもらったシンプルな住宅の紙模型ながら、銀獅子賞を受賞したエレメンタル、すなわちチリの建築家アラヴェナが日本で初めて本格的に紹介された展覧会である。最近の日本の傾向とは違う、力強い形が印象的だ。やたらとスペックを付加するのではなく、何かを外し、デザインの根本を再考する姿勢を打ち出している。

2011/08/08(月)(五十嵐太郎)

artscapeレビュー /relation/e_00014109.json s 10009820

青木淳「ぼよよん」展

会期:2011/07/26~2011/08/12

オカムラガーデンコートショールーム[東京都]

会場いっぱいに、輪っかが展開する。8,000個のポリプロピレン製のリングが組み合わさった「ぼよよん」の雲、という見立てのインスタレーションだ。ユーモラスな擬態語が作品名になっているのが興味深い。手で触ると、ぼよよーんと揺れるし、音もぼよよーんと鳴りだす。動きと音と名前が同じもののように思えてくる。確かに、ぼよよんというしかないモノだ。

2011/08/08(月)(五十嵐太郎)