artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

JIA東北「建築家フォーラム2011」

会期:2011/05/14

山形県郷土館「文翔館」議事堂[山形県]

いつもはせんだいメディアテークが会場となるイベントだが、今年は震災とは関係なく、文翔館に決まっており、山形でJIA東北建築家フォーラムが開催された。かつては議場だった、すぐれた近代建築でのイベントは気持ちがよい。第五回JIA東北住宅大賞2010の表彰式の後、審査員をつとめた古谷誠章と筆者が作品の講評を行ない、大賞となった木曽善元によるレクチャーが続く。後半のシンポジウム「過去の復興が教えるまちづくりの未来」が予想以上に興味深い内容だった。阪神淡路大震災後の小島孜による芦屋西部地区の試み、名取の針生承一による木造仮設住宅、津波を受け入れる街論、福島の滑田らによる原発問題を受けた二地域居住のシステムなど、ぼんやりした話ではなく、地元の建築家によって、現場ならではの具体的な提案が紹介されたからである。

2011/05/14(土)(五十嵐太郎)

塩釜・松島

会期:2011/05/11

塩釜、「ふれあいエスプ塩釜」、松島、「瑞巌寺」、「五大堂」[宮城県]

塩竈と松島を歩く。あくまでも相対的な話だが、いずれも海に面してるエリアとはいえ、津波の被害は少ないほうだ。そのぶん、あちこちで地面の陥没が目立つ。やはり水からの距離があっても、流れの方向の場所だと、被害は大きくなる。長谷川逸子のエスプはもう避難所ではなくなったが、隣の公民館はまだ避難所だった。松島のある店舗の窓に、こう書かれていたのが印象深い。「奇跡の町 松島へようこそ 私達は松島の島々に守られました だから今度は私達が出来る限り がんばります」。確かに、松島湾のマリンピアから西の浜貝塚あたりまでを歩いたが、驚くほどに津波の影響が少ない。

2011/05/11(水)(五十嵐太郎)

米山勇、高橋英久、田中元子、大西正紀、チームけんちく体操『けんちく体操』

発行所:エクスナレッジ

発行日:2011年4月23日

本書は、古今東西の有名建築を身体で表現するものだ。もともとは、1998年に江戸東京博物館の学芸員、米山勇が発案し、後にmosakiの二人組(田中元子と大西正紀)が参加して、今回の出版につながった。初めて「けんちく体操」の概念を知ったのは、数年前だったと記憶しているが、筆者も90年代の後半に似たような試みをやったことがある。飲み会を盛り上げるイベントなのだが、あらかじめ紙によく知られた建築の名前を書き、それを引いた別の人が身体で表現するという建築のジェスチャーゲームだ。当時、磯達雄氏と建築家の設計した別荘に学生らと泊まったとき、あるいは太記祐一氏がドイツに留学するときのイベントにおいて実践している。もっとも、「けんちく体操」は飲み会の芸とは違う。体操着をまとい、野外で行なう、とても健康的なエクササイズだ。

2011/05/10(火)(五十嵐太郎)

川俣正・東京インプログレス《汐入タワー》

都立汐入公園 汐入タワー[東京都]

川俣正による汐入タワーは、最上階に登ると、水平の白髭団地と垂直のスカイツリーが並ぶ、都市のパノラマを提供する木造の塔である。内部は栄螺堂のようにスロープが続き、随所に子どもがワークショップで制作した手のひらの塔を展示していた。隅田川沿いの新しい場所性をアートからとらえなおす試みといえよう。

2011/05/05(木)(五十嵐太郎)

大西麻貴+百田有希《二重螺旋の家》オープンハウス

会期:2011/05/03

二重螺旋の家(東京都谷中)[東京都]

豪雨のなか、大西麻貴+百田有希による二重螺旋の家のオープンハウスを訪れた。発見的な強い空間の形式性をもちつつも、それと相反するかのような、おとぎ話を思わせる表情が共存するのが、ユニークである。旗竿敷地の奥にあるため、外観は部分的にしかあらわれず、むしろ内部空間の体験のシークエンスと周辺環境との応答がめくるめく展開していく。現代における塔の家だ。

2011/05/03(火)(五十嵐太郎)