artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

第19回〈現代日本の建築家〉展 GA JAPAN 2010

会期:2010/11/20~2011/01/23

GAギャラリー[東京都]

今回は、1930年代生まれの磯崎新から70年代生まれの藤本壮介まで、9組の日本人建築家の新作を紹介していたが、海外のプロジェクトが多いことが印象的だった。国内はわずか2つだけである。とくに韓国は3つ、中国は2つだ。狙ったわけではないだろうが、いかに日本に挑戦的な公共の仕事が減っているかを結果的に示していた。世界的に日本の建築家が高く評価されている一方、国内の仕事がないのは、なんとも皮肉である。

2011/01/04(火)(五十嵐太郎)

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「CHEFS-D’OEUVRE ?」展/博物館建築1937-2014

ポンピドゥー・センター メス[パリ]

「CHEFS-D’OEUVRE?」展 2010年5月12日~2011年1月17日
「博物館建築1937-2014」の展示があるギャラリー2は、2011年11月7日まで

坂茂が設計したメスのポンピドゥー・センターを訪問したが、ロマネスク・リバイバルの駅舎から、フランスとしては垂直性がかなり強めなゴシックの大聖堂まで、普通に街並みの建築のレベルが高いことに驚かされた。ビルバオでも、フランク・O・ゲーリーによるグッゲンハイム美術館だけではなく、普通の建物が都市の底力をもっていて、同じ経験をしたことを思いだす。ポンピドゥーは新しい街のランドマークにもなると同時に、そこから街の風景を眺めるギャラリーチューブを張りだしている。
オープニング展は、4フロアともに異なる方法によって、ホワイトキューブを崩す、意欲的な展示空間を演出していた。3階では、近代美術館(1937)以降の、フランスの美術館の特集展示を開催しており、ラストのゼロ年代はSANAAのルーヴル・ランス分館、坂茂のポンピドゥー、隈研吾のマルセイユのプロジェクトが続く(三名とも慶応大学で教鞭をとっていた)。フランスにおいて、日本人の建築家が高く評価されていることがうかがえるだろう。4階では、アンドレ・マルローが美術の写真を切り貼りしたブックコレクションや、モダニズムの関連書籍を展示していた。また、ヒッチコック『めまい』とデ・パルマ『殺しのドレス』と、そのポストモダン的引用、Brice Dellsperger「ボディ・ダブル 15」の映像を紹介しており、これらを見ながら、ジム・ジャームッシュの映画『リミッツ・オブ・コントロール』の美術館シーンと『めまい』の類似に気づく。

2011/01/03(月)(五十嵐太郎)

「CHARLES GARNIER UN ARCHITECTE POUR UN EMPIRE(シャルル・ガルニエ:帝国の建築家)」展

会期:2010/10/26~2011/01/09

エコール・デ・ボザール[パリ]

まずエントランスの脇において、シャルル・ガルニエの代表作、オペラ座が登場する映画として、『オペラ座の怪人』(1925)やオードリー・ヘップバーン主演の『パリの恋人(ファニー・フェイス)』(1957)のシーンが紹介される。続いて階段を登ると、オペラ座以前、すなわち彼がまだ20歳台のとき、エコール・デ・ボザールにおいてローマ賞を獲得したディプロマ図面、イスタンブールなどの旅行のスケッチが美しい。そしてガルニエによる戯画が意外におちゃめである。これらの漫画タッチから伊東忠太を思いだす。最後は、オペラ座を中心とした展示スペース。オペラ座では、建築の空間形式だけではなく、壁や天井をおおう装飾に関しても多くの精緻なドローイングが描かれている。

2011/01/02(日)(五十嵐太郎)

「Mondrian / De Stijl(モンドリアン/デステイル)」展

会期:2010/12/01~2011/03/21

ポンピドゥー・センター[パリ]

展覧会の前半は、モンドリアンのよく知られたスタイルの絵に到達するまでの道程を、1911年から1942年まで、年度ごとの部屋をたどりながら、詳しく紹介する。当然だが、いきなり到達したわけではなく、試行錯誤のあとがうかがえて興味深い。後半は、建築や家具を含めたデザイン運動の流れから、同時代をトレースしていく。こうして一同に並べていくと、ドゥースブルフやファン・デル・レックなど、同じようなスタイルでも、個別の差異やうまい下手が読みとれる。またモンドリアンのアトリエ、リートフェルトの展示空間、キースラーの作品などを1/1のスケールで再現展示していたのも嬉しい。

2011/01/01(土)(五十嵐太郎)

石上純也『石上純也──建築のあたらしい大きさ』

発行所:青幻舎

発行日:2010年12月27日

豊田市美術館で開催された石上純也の個展のカタログである。巻頭のテキストにおいて、建築をシェルターとしてではなく、われわれを取り巻く環境そのものとしてとらえることを唱えるように、彼は雲や雨など、自然現象のメタファーを使う。ポストモダンの時代であれば、記号的な形態として扱ったと思われるが、石上はベタに考える。筆者も同書に長文の論考を寄稿したが、完成した実物が届けられて初めて、本の全体がわかった。ル・コルビュジエは新しいモダニズムのイメージを伝えるために、『建築をめざして』に機械や自動車の写真を混入させたが、石上は自身の作品と、大気の層、積乱雲の発達の様子、シュレーディンガーの電子雲、超伝導の磁場内の環など、さまざまな自然・物理現象のイメージを等価に並べていく。彼らしいブック・デザインである。2011年に刊行予定のテムズ・アンド・ハドソンの本にも通じるテイストだろう。

2010/12/31(金)(五十嵐太郎)