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建築に関するレビュー/プレビュー

建築家 白井晟一 精神と空間

会期:2011/01/08~2011/03/27

パナソニック電工 汐留ミュージアム[東京都]

初期の住宅から、銀行、公共施設、美術館まで、彼の軌跡をたどる回顧展である。とりわけ原爆堂計画の驚愕すべき手描きの表現に驚きつつ、ドローイングに萌えることができた時代の美しい図面に感心させられた。その一方で、やはり通常の建築模型では、ほとんど白井の魅力が表現されないことがよくわかる。なるほど、模型が重要になり、CGによって図面が均質化された、現在の建築の流行とは確かに真逆といえるだろう。いわゆる構成ではなく、表面の素材や装飾など、空間のひだが重要なのだろう。冒頭に編集者だった川添登が白井から受けとった50年前の生原稿が展示されたり、展示の区切りごとに、白井のテキストが抜粋されるなど、改めて白井の神話作用についても考えさせられた。

2011/01/22(土)(五十嵐太郎)

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建築家フォーラム第98回「建築道」(前田紀貞アトリエ展)

会期:2011/01/17~2011/01/25

INAX:GINZA 7F[東京都]

予算の関係もあってか、通常、ここの展示はスカスカになりがちだが、今回はモノがぎっしりと詰まった濃密な展覧会だった。前田紀貞の建築作品、そしてスタディの様子など、前田塾における活動を紹介し、さらにはBAR典座や事務所の家具を会場に持ち込む。単なる作品の展示ではない。まさに人生そのものが建築であるという前田の建築道のメッセージが表現されている。塾生らが総出で運び、会場と事務所を数回往復したという。その心意気に敬意を表し、出張BAR典座にて、一杯飲んで、熱い建築道を味わう。また筆者が感銘を受けたのは、3コードのもっともシンプルなロックンロールが会場に流れていることだった。これまでに、さまざまな建築展を訪れたが、初めての経験である。

2011/01/21(金)(五十嵐太郎)

画像建築展

会期:2011/01/19

マキイマサルファインアーツ[東京都]

彦坂尚嘉が企画した画像建築展に、建築系ラジオのメンバーとともに出品者として参加した。たった一日の展覧会だったが、それではもったいない力作揃いだった。大西麻貴は模型とそれが実現された写真、北川啓介はライブで貼っていく新宿漫画喫茶の一週間漂流ドキュメント、南泰裕は3人の写真家による3つの住宅作品の写真、松田達は黄金神殿復元計画、そして筆者はコピー建築群による「it's a fake world」を展示した。建築家の高橋堅は自作と京都写真を展示、彦坂はサヴォア邸やファンズワース邸などのdub化され、引き伸された有名建築、糸崎公朗はフォトモ、そのほかにも中川晋介や栃原比比奈らアーティストも参加している。建築と写真をめぐって、さまざまな切り口が示され、会場ではシンポジウムも行なわれた。

2011/01/19(水)(五十嵐太郎)

ダンボールで再現した国宝茶室、如庵に入ってみよう

会期:2011/01/02~2011/01/16

ハウスクエア横浜 住まいの情報館 3Fライブラリー[神奈川県]

不慮の事故で亡くなった山田幸司の遺作というべきダンボール茶室が名古屋から移築されて、横浜で展示された。Yahoo!や各種の新聞、メディアなど、多くのマスメディアがとりあげたのは、「ダンボール」「国宝」「茶室」という3つのキーワードがキャッチーだったからだろう。ひたすらダンボールを積層させて空間をつくる手法は、3Dの立体スキャンのようなデジタル感覚だが、実際に解体の作業に立ち会い、モノに対するディテールのデザインもきわめてよく考えられていることを確認した。実はハウスクエア横浜の展示が終了後、廃棄される予定だったが、最終日に訪れたお茶関係のグループが引きとりたいと申し出て、厳しいスケジュールにもかかわらず、無事、部材は次の場所に搬出された。ポータブルな茶室ならではの生き残りだろう。次は、2月19日、20日の大場みすずが丘地区センター祭りで再び組み立てられる予定だ。

2011/01/16(日)(五十嵐太郎)

船→建築 ル・コルビュジエがめざしたもの

会期:2010/12/04~2011/04/03

日本郵船歴史博物館[神奈川県]

同館は船の博物館だが、これまでに前川国男、村野藤吾、中村順平、本野精吾らと客船デザインの関係を紹介したり、建築写真家の渡辺義雄をとりあげてきた。今回は、筆者が監修をつとめ、いよいよ本丸のル・コルビュジエから、近代における船と建築の類似性に切り込む。彼の主著『建築をめざして』の表紙も、実は建築ではなく、客船の写真だったように、建築家にとって客船は当時の最先端の機械のイメージであり、動く集合住宅だった。同展が指摘したほかにも、建築的なプロムナードの概念も、船内を散歩することから発想されたのではないか、など、さまざまな類似点が思い浮かぶ。日本の建築家では、最先端の客船ブレーメン号にのって感激した山田守とその作品への影響、岸田日出刀や板垣鷹穂らの著作も紹介している。
展示のラストは、もともとこの展覧会のきっかけになったプロジェクトだ。セーヌ川に係留された、ル・コルビュジエが船を改造した救世軍船上収容所の、遠藤秀平による仮設のシェルター計画である。ただし、現在、このプロジェクトはとまっている。同展の学芸員の海老名熱実とは建築系ラジオの収録も行った。

URL=http://architectural-radio.net/archives/110117-4599.html

2011/01/08(土)(五十嵐太郎)

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