artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
天使の森プロジェクト展

会期:2012/11/28~2012/12/08
葵丘 2Fギャラリー[愛知県]
岡崎の葵丘ギャラリーにて、天使の森プロジェクト展のオープニングにあわせてトークに出演した。NPOアースワーカーエナジーの小原淳が、アーティストの土屋公雄と取り組む里山での長期的な活動のキックオフである。土屋らしく、美術と建築と風景が融合していくプロジェクトのイメージが提示されたが、近世につくられたものすごい長さにわたって続く既存の鹿垣の存在感にも驚かされた。これは里山をテーマにしながら、美術に欠けていた2005年の愛知万博で本来行なうべきだったプロジェクトかもしれない。
写真:展示風景
2012/12/01(土)(五十嵐太郎)
あいちアートプログラム|岡崎アート&ジャズ2012

会期:2012/11/01~2012/12/02
岡崎シビコ 6階[愛知県]
岡崎のアート&ジャズ2012を訪れた。あいちトリエンナーレ2013では、岡崎も会場となるが、その予行演習というべき、街なかの施設を使った現代美術の展示である。現在空いている百貨店のシビコ6階では、今村哲+染谷亜里可による身体を圧迫する膜の中をさまよう新しい感覚の迷路のインスタレーション。岡崎城の東隅櫓の内部に設置された平田五郎による蝋燭を素材とした組積造の球体の小部屋(音響効果も独特の空間)。斉と公平太が自ら着ぐるみを行なうゆるキャラ、オカザえもんなどが印象に残った。
写真:上=平田五郎による蝋燭を素材とした組積造の球体の小部屋、下=インフォメーションのオカザえもんグッズコーナー
2012/12/01(土)(五十嵐太郎)
山野千里 展:ジャングル短編

会期:2012/12/01~2012/12/22
ARTCOURT Gallery[大阪府]
陶芸作家の山野は、動物と人間が等価の立場で戯れている情景や、動物の姿をイマジネーション豊かに変容させた作品で知られている。また、絵画でも同様の主題で作品を発表している。本展では、絵画3点を含む21点の新作を発表。「ジャングル短編」という不思議なタイトルには、既存の価値観が通じない世界で起こるさまざまな物語を意味しているが、絶妙に作品の世界観と一致したネーミングだと思う。技術的にはテラコッタや透かし彫りに挑戦しているのが新しく、歌川国芳やアルチンボルドの寄せ絵を思わせる、頓智の効いた作品があったのも新境地を感じさせた。
2012/12/01(土)(小吹隆文)
片山みやび作品展 ひかりを抱く Glass and Paint Works

会期:2012/11/27~2012/12/09
ワイアートギャラリー[大阪府]
これまで絵画や版画を発表してきた片山が、ガラス作品をメインにした個展に初挑戦した。それらは、カラフルな棒ガラスや板ガラスを組み合わせたもの。これまでの作風をそのまま移行したかたちだが、これが滅法よい。まるで彼女の頭のなかにあったイメージを、そのまま引っ張り出してきたかのようだ。また、イメージが支持体を兼ねているので、イメージが独立して出現したかのように見えるのも、絵画や版画にはない魅力である。独学のためまだ技術的に追いついていない部分があり、歩留まりが悪いらしいが、彼女が新たな鉱脈を発見したのは間違いない。
2012/12/01(土)(小吹隆文)
維新の洋画家──川村清雄

会期:2012/10/08~2012/12/02
江戸東京博物館[東京都]
川村清雄の名前は、神宮外苑の聖徳記念絵画館にある彼の作品《振天府》があまりにモダンだったため覚えた。この絵画館には明治天皇の事績を描いたのべ80人の画家による絵が常設展示されているが、ほかの画家が時代考証にのっとった歴史画を制作しているのに、川村だけが画面の上下を日本絵画独特の霞(またはマンガのフキダシ)みたいな曲線で分けて異なる時空を描き、まるで幻想画ともいうべきユニークな構成になっているのだ。その後もいくつかの作品を見るにつけ、流れるような絵具の伸びや細部をぼかして省略する画法などは、黒田清輝以前の明治美術会の世代としては例を見ず、いったいどこからこうした表現が生まれてきたのか不思議に思っていた。今回の大規模な回顧展を見て、ヴェネツィア留学時代に18世紀の画家ティエポロの影響を受けたことを知り、なんとなく納得。スピード感のある筆触や背景を白濁させてウヤムヤにする空気感がよく似ているのだ。晩年には、個々のモチーフこそ遠近感や立体感など西洋的作法が守られているものの、極端に横長(縦長)の画面に余白を大きくとったり、陰影を省略して日本絵画らしさを強調したりして、独創的といえるほど折衷様式に傾いている。川村清雄の名前が忘れられてきたのは、このように近代絵画の主流からはずれたティエポロに学んだり、みずから和洋折衷に入り込んでいったからだろう。だとするなら、その作品が再評価されるのは折衷主義が叫ばれたポストモダンの時代には当然のこと。むしろ遅すぎたくらいだ。
2012/12/01(土)(村田真)


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