artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

会田誠──天才でごめんなさい

会期:2012/11/17~2012/03/31

森美術館[東京都]

会田は自分の立ち位置を正確に把握し、その位置から期待どおりの鬼畜作品を供給し続けることができる希有なアーティストだ。そこが彼の天才たるゆえんだろう。実は「期待どおり」というのはきわめて難しいことで、つねに期待を少し上回っていなければならない。なぜなら本当に「期待どおり」であれば、それはあらかじめ想像可能な範囲に収まってしまい、つまり「予想どおり」にすぎないからだ。したがって「期待どおり」とはつねに期待を裏切っていなければならないのだ。今回の会田の個展は約20年におよぶ画業の回顧展といっていいもので、初期の《あぜ道》から《紐育空爆之図(戦争画RETURNS)》《スペース・ウンコ》《ジューサーミキサー》《滝の絵》《灰色の山》まで、出品作品の大半は見覚えのあるものばかり。その意味では(残念ながら)期待どおりによかった。初めて見る最新作《ジャンブル・オブ・100フラワーズ》も期待を裏切らない大作だし、「18禁部屋」もしつこいけど期待どおり。観客を裏切ってくれないのだ。ところで展覧会の可否はただの作品総体で決まるわけではなく、作品相互の相乗効果(ときに相殺効果)や開催時期、美術館や観客との相性などによっても左右されるはず。しかしここでも会田展は踏み外すことなく、妙な言い方だが予想以上に期待どおりだった。とくに森美術館とは相性がいいのか悪いのか、あらゆる作品が「作品然」として収まってしまっていた。かつての映画のタイトルをもじれば、この展覧会は会田以上でも以下でもない「=(イコール)会田誠」といえる。観客も会田自身も、それで満足するかしないかだ。

2012/11/19(月)(村田真)

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第2回 日本画先端表現コース展[パッケージ]

会期:2012/11/02~2012/11/25

アートベース石引[石川県]

金沢といえば保守的な街のイメージがあるから、金沢美大の日本画科なんかウルトラコンサバかと思っていたら、最近は先端表現コースもできたんだそうな。これも21世紀美術館効果かもしれない、とのたまうのは同コースで孤軍奮闘する吉田暁子センセ。昨日は吉田センセの招きでレクチャーし、今朝は彼女の教え子たちの作品をケナシたあと、彼らの展覧会を見に来たというわけ。たしかに抽象あり、マンガあり、映像あり、ボックス状インスタレーションありと、伝統的な日本画からすればずいぶん逸脱しているし、興味深い作品もないわけではないけれど、でもひとたび日本画という枠組みを取っ払ったらたんに未熟な現代美術にすぎないのでは? 日本画の枠内で嵐を起こすのか、それとも日本画を超えてアートの先端で暴れるのか?

2012/11/17(土)(村田真)

墨田まち見世2012/特別企画「どこにいるかわからない」展

会期:2012/11/10~2012/11/25

SOURCE Factory、現代美術製作所[東京都]

東向島の「どこにいるのかわからない」展をまわる。路地と屈曲した通りに沿って、空き家、空き地、旧工場などを使い、幾つものアートプロジェクトが展開し、文字通り、道に迷い、どこにいるのかわからなくなるような場所性を体験する。個別の作品もこのコンセプトを意識したものが多い。ここのまちづくりに関わってきた真野洋介のトークでわかったのは、墨東のエリアには、北川貴好、KOSUGE1-16、戸井田雄が入っており、あいちトリエンナーレの長者町の作家とかぶっていること。そして土屋公雄の薫陶を受けた武蔵野美大の建築系ネットワークが強い。ゆえに、展示も空間を使う力作がそろう。

2012/11/16(金)(五十嵐太郎)

神田コミュニティアートセンタープロジェクト「TRANS ARTS TOKYO」

会期:2012/10/21~2012/11/25

旧東京電機大学校舎11号館ほか[東京都]

神田のTRANS ARTS TOKYOを訪れた。解体予定の旧電機大学の校舎がまるごと展示空間になっており、ぶっとんだ学園祭のようである。13階は建築系だが、たぶん少ない予算のため、大量の紙を貼る+映像といった類似した展示のパターンが多い。最近はどうしても展示環境を見てしまうのだが、改めて学校空間は出入口を管理しやすいと気づく。

2012/11/16(金)(五十嵐太郎)

ソンエリュミエール、そして叡智

会期:2012/09/15~2012/03/17

金沢21世紀美術館[石川県]

金沢美術工芸大学での特別講義のため金沢へ。早めに着いたので21世紀美術館を訪れる。展覧会名の「ソンエリュミエール(Son et Lumi re)」は「音と光」の意味らしい(出品作家のピーター・フィッシュリとダヴィッド・ヴァイスにも同題の作品がある)。この春から開かれていた「ソンエリュミエール──物質・移動・時間」を第1章とし、第2章となる今回は「世の中の矛盾に正面から向き合い、立ち続けようとする人間の可能性を探る」のが趣旨。そのため「人間社会を鋭い眼差しで捉え、その膿みをあぶり出す。あるいは絶望自体も取り込み、半ば自虐的ともいえる手法で、それでも生き抜こうとする現代人の姿を映し出そうとする」アーティストを集めたという。引用すると楽だ。出品作家はフィッシュリ&ヴァイスのほか、最年長ゴヤから最年少Chim↑Pomまで14組。同館コレクションを中心とした出品なので見覚えのある作品が多い。初対面の作品では、ジェイク&ディノス・チャップマンがアドルフ・ヒトラーの水彩画に上書きしたとかいう作品に少し心を動かされた。

2012/11/16(金)(村田真)

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