artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
コラボレーションプロジェクト 植田工×茂木健一郎
会期:2012/11/05~2012/11/25
RISE GALLERY[東京都]
脳科学者の茂木が次々と「指令」を出し、アーティストの植田が絵で応えていくコラボレーションプロジェクト。その指令とは、たとえば「偶有性の海を描け!」とか「相互作用同時性を描け!」といった抽象度の高いものから、「縄文人の『絵日記』を描け。『うわあ、今日も松茸かあ』」とか「脳の中にいる、小さな人(ホムンクルス)を描け!」といった具体的イメージを喚起するものまで、どっちにしろ絵にするのが難しいものばかり。それに対して植田は当初、具体性のある言葉を拾って絵にしていたが(たとえばマツタケの絵を描くとか)、どうもそんなものを期待されているのではないと悟り、徐々に植田本来の奔放なドローイングに近づいていったという。たしかに壁に貼り出された絵を見ると、指令の言葉に比較的忠実な初期の具象派から、あまり言葉にとらわれない後期の混沌派へと変化が見られる。ある意味エントロピーの法則どおり。
2012/11/22(木)(村田真)
トランスアーツトーキョー

会期:2012/10/21~2012/11/25
旧東京電機大学校舎11号館[東京都]
神田錦町にある地上17階、地下2階建ての旧東京電機大学11号館全館を使った展示。主催は東京藝術大学で、神田コミュニティアートセンター設立に向けてのプロローグだそうだ。とにかくデカイ。1フロアはそれほど広くないけど平均すれば10部屋程度あり、それが19フロアも重なってるのだから埋めるだけでも大変そう。各階10人のアーティストに任せても計190人のアーティストが必要だし(実際には約300人が参加)、見るほうも1フロア10分で見るとしても3時間以上かかる計算だ。なんて計算してる場合ではない。さっそくエレベーターで上まで昇って1階ずつ見て歩く。上階はカフェや藝大生たちのオープンスタジオに占められていたが、退屈なので足早に通過し、14階で足が止まった。どの部屋もガラクタやスプレーの落書きで埋め尽くされ、フロア全体がひとつのインスタレーションみたいな様相を呈している。Chim↑Pomの卯城竜太が講師を務める美学校の受講生たち10数人による展示だった。見てもいいけどわかんねえだろ的な藝大生と違い、来場者を驚かせ楽しませるサービス精神に富んでいて大変よろしいと思います。ひとつ飛ばして12階も見る価値があった。とりわけ、窓から見える経団連ビルのロゴ「KEIDANREN」を原寸大に再現した佐藤直樹のウォールドローイングと、女性ファッション誌を飾る「小顔革命」「ツヤぴち肌」「女を磨く�。」「今すぐGET!」といったキャッチコピーを切り抜いて部屋中にびっしり貼った渡部剛のコラージュインスタレーションが秀逸。ずっと降りていって5階、コレクター岡田聡が代表を務める「どくろ興業」所属のアーティストたち(どくろオールスターズ)によるインスタレーションも、グッチャグチャで楽しめた。3階では岩田草平が部屋のなかに土の家を建て、和田昌宏は雨を降らせていた。低層階では藝大系アーティストによるコミッションワーク、昔の神田の写真や神田っ子のポートレート写真などが展示されていたが、いいかげん疲れたので通過。やはりこういう取り壊し寸前のビルというハレの時空間ではバカやらなきゃシカトされると痛感しました。
2012/11/22(木)(村田真)
森村泰昌 展「アーカイブ、それから」
会期:2012/11/03~2013/02/11
佐賀町アーカイブス[東京都]
額縁絵画の上に石膏で型どりした足首を置いた作品がポツンと1点。まるで踏み絵じゃないか、と思ったらまさに《踏み絵》という作品だった。森村泰昌は1990年に佐賀町エキジビット・スペースで個展「美術史の娘」を開催し、人気を博す。バブルの真っただ中、佐賀町も森村も勢いがあった(森村は勢い余ってモリエンナーレだ)。《踏み絵》はそのときの出品作品。もうふた昔以上も前の話だ。
2012/11/22(木)(村田真)
福嶋さくら「ブルー・バックグラウンド」

会期:2012/11/21~2012/12/09
Bambinart Gallery[東京都]
ひとけのないシュルレアルな風景に家や柵が描かれ、主要部分だけ刺繍が施されている。刺繍を使った作品は珍しくないが、彼女のように絵画の上に刺繍する例はあまり聞いたことがない。でもこのままだと「私的」「女性的」作品に見られがちで、趣味的絵画に終わってしまう可能性がある。1点だけ、赤と緑の糸で縦線を縫った抽象的な作品が異彩を放っていた。補色なのでチラチラし、ちょうどなにも映ってないテレビの画面みたい。これは画廊の人によれば、1点の絵が完成してから次の絵に移るあいだの幕間としての意味があるらしいが、ちょっと別の可能性を感じさせた。
2012/11/22(木)(村田真)
荒木伸吾回顧展「瞳と魂」

会期:2012/11/14~2012/12/10
アーツ千代田B104[東京都]
ぜんぜん知らなかったけど、荒木伸吾(1939-2011)は「巨人の星」「あしたのジョー」「ベルサイユのばら」「ジャングル大帝」「キューティーハニー」「聖闘士星矢」などの作画やキャラクターデザインを手がけたアニメーター。これだけのアニメを手がけたんだからよっぽど器用な人だったはず。当初、貸本劇画を描いていた荒木が60年代にアニメ界に活路を見出したのは、その器用さを買われてのことだったのかも。もちろん貸本の凋落とアニメの急成長という背景もあったに違いない。しかし他人の漫画をアニメ化するだけではたして満足してたんだろうか。必ずしもそうでなかったことは、70歳を過ぎて45年ぶりに自分の漫画を描き始め、死の当日まで描き続けたことからもうかがえる。作品には興味ないけど、生き方には考えさせられるものがあるなあ。
2012/11/22(木)(村田真)


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