artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

久村卓──あってないようなもの

会期:2012/11/14~2012/12/24

3331ギャラリー[東京都]

使いまわしの仮設壁や台座などをギャラリーに林立させ、人ひとりがようやく通れる迷路のような隙間をつくっている。仮設壁や台座はオフホワイトなので圧迫感はないが、各パーツが平行または直角に配置されておらず少し斜めに置かれてるため、実際に通り抜けようとすると予想外の動きが必要となる。床に額入り写真が置いてあったり、作品ファイルが立て掛けてあったり、なにか作業途中で放り出したような、なげやりな感じがとてもよい。

2012/11/22(木)(村田真)

3331TRANS ARTS展

会期:2012/10/21~2012/12/02

3331メインギャラリー[東京都]

領域を超えてアートの本質に迫ろうとの趣旨で、Wahプロジェクトやハジメテンやコンタクト・ゴンゾなど13チームが参加している。家族の肖像をフィギュア化するパーティとかおもしろそうなチームもあったが、展覧会としてはつまんなかったなあ。展覧会というよりプレゼンの場というべきか。いずれにせよこのあと見た旧電機大学のカオティックな空気とはかけ離れていた。

2012/11/22(木)(村田真)

混浴温泉世界2012

会期:2012/10/06~2012/12/02

別府市内各所[大分県]

大分県別府市で催されている国際展の2回目。「混浴」というフレーズに示されているように、現代アートをはじめ、ダンス、音楽、パフォーマンスなど、さまざまなジャンルをミックスした国際展で、温泉街や商店街、空き店舗、海岸の埠頭などに作品が展示された。
小沢剛が作品を展示したのは、別府のランドマークである「別府タワー」。もともと常設されている「アサヒビール」という電光掲示板の文字を任意に明滅させることで、「アサル(焼いた/スペイン語)」や「サール(公会堂の/フランス語)」など、世界各国の言語を次々と表示した。留学生をはじめ、多くの外国人が居住する別府の国際都市としての性格がよくわかる。その明滅にあわせながら単語を唄い上げた合唱団のパフォーマンスも、まるで別府タワーが擬人化されたようで、おもしろかった。
とりわけ印象に残ったのは、旧ストリップ劇場を舞台にした「永久別府劇場」。毎週末に大友良英や東野祥子など気鋭のアーティストが先鋭的なパフォーマンスを見せたが、ひときわ観客の度肝を抜いたのが、「The NOBEBO」による金粉ショー。全身に金粉を塗布した男女3人が、妖艶かつ恐ろしい身体表現を存分に見せつけた。皮膚呼吸が難しいからなのだろうか、身体からは尋常ではないほどの汗が滴り落ち、激しいアクションのたびに飛び散る汗に観客席は大きくどよめいた。ショーの斎藤さん「撮影タイム」が設けられていた点も、芸が細かい。
現代アートと大衆演芸の協演。そのような国際展がグローバルなコンテンポラリー・アートの規準から大きく逸脱していることは疑いない。けれども、逆に言えば、そのような特異な国際展だからこそ、凡庸なコンテンポラリー・アートには到底望めない魅力が生じていたこともまた事実である。日本という極東の島国で国際展を催す意義があるとすれば、それは本展や、越後妻有の「大地の芸術祭」のように、ローカリズムというより、もっと直接的にいえば「ガラパゴス化」を徹底的に追究するという方向の先にしかないのではないか。

2012/11/20(火)(福住廉)

プレビュー:フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活

会期:2013/01/10~2013/03/10

兵庫県立美術館[兵庫県]

1950年代以降、国際的に高い評価を受けているフィンランドのデザインを紹介する展覧会。トーヴェ・ヤンソンが創造し、フィンランドの風土やライフスタイルを学ぶよきバイブルと言われる「ムーミン」をガイド役に、19世紀末から20世紀前半の民族主義、『ムーミン』の原画、アルヴァ・アアルトやカイ・フランクの製品デザイン、マリメッコのテキスタイル、現在の公共デザインなど約350点を紹介する。「人間と自然の共存」や「家庭や地域コミュニティの相互扶助」を基本とし、現在のユニバーサル・デザインやエコ・デザインにも大きな影響を与えているフィンランド発のデザインの魅力を知る絶好の機会だ。

2012/11/20(火)(小吹隆文)

プレビュー:山村幸則 神戸における3つの展覧会

会期:2012/12/15~2012/12/25

CAP STUDIO Y3、ギャラリー島田、GALLERY 301[兵庫県]

神戸を拠点に、立体、パフォーマンス、参加型作品、ドローイング、映像など幅広い活動を続けてきた山村幸則。本展では、彼がアトリエを構えるCAP STUDIO Y3の403号室で、「Archives 資料室」と題した一種の回顧展を行なう一方、ギャラリー島田とギャラリー301の2会場で「神戸牛とWalk」と題した新展開を発表。さらには作品集『from hand to hand』を発行するなど、これまで以上に旺盛な活動を展開する。彼にとってマイルストーン的な意味を持つ機会となることは間違いないだろう。

2012/11/20(火)(小吹隆文)